コロナウイルスのパンデミックと失業、その後の不況回避のための大幅な財政赤字は、福祉国家の将来を大いに問うものです。それはインフレや財政緊縮、出産の減少だけではありません。

 

もし人生のますます長い時間が「老人」であるなら、その暮らし方次第で、社会は貧しくも、豊かにもなるでしょう。いや、むしろ、幸せにも、不幸せにもなる、ということです。

 

今、私たちが老いることは、貧しく、弱く、不安になることです。

 

PETER SINGER (“Extending the Right to Die,” PS Apr 6, 2021) は、高齢化する社会で、安楽死、死ぬ権利が、社会にとって重要な問題になっている、と書きます。回復の見込みがない、耐えられない苦しみが続く患者に、致死量の薬を渡した医師を、自殺ほう助の殺人罪で裁くのか? 安楽死の条件として、本人の明確な意思表示と、認知症の場合、本人による最終確認をどうするのか? 各国は新しいルールや「死ぬ権利」を模索しています。

 

視点を変えれば、私たちは、介護のコストを心配しているのです。医療や介護にかかる費用は、さまざまな財政負担となり、他の分野で、政府の行動を制約します。防災や防衛、原発事故の処理、気候変動対策、など、安全保障国家は多くの課題をかかえています。

 

増税する。公的支出やサービスを削る。民営化する。競争させて、労働者の賃金を減らす。そのために、労働組合を解体し、オフショアで生産し、出稼ぎ外国人や非正規の労働者を増やす。それらは、解決というより、コストを削るためにコミュニティを破壊することに向かいそうです。

 

老人も、できるだけ長く働きなさい。年金を減らします。医療費を自己負担しなさい。介護は家族が、特に女性たちが、黙って負担しなさい。孤独死する者や、自殺者が増えるのは、いわゆる精神疾患なのか?

 

地域や職業、一人一人の生活に、あまりにも大きな違いが生まれているとき、公平な負担を説得できるでしょうか? もっと小さな、「貧しい」社会ならできたことが、私たちにはできません。

 

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JAMES K. GALBRAITH ("The Death of Neoliberalism Is Greatly Exaggerated," FP APRIL 6, 2021) は書いています。

 

・・・今日のアメリカは、消費財の強固な製造業がなく、より先進的な分野でも競争的な地位を下げている。アメリカは概して、グローバルな金融部門、軍事部門、そして、グローバル化した経済で、職場や所得を提供するサービス部門に大きく依存した、不労所得(地主)国家a rentier stateである。基礎資源はかなり安価で、消費財を提供するのは遠く離れたアジアの増大する工業力である。

アメリカ経済がこれから直面する問題は、旧式の景気過熱ではない。伝統的な意味でのインフレは問題ではない。過剰な資本、過剰な貯蓄は、資産市場に向けられ、株価や地価、住宅価格が上昇する。それはすでに豊かな者たちをさらに豊かにするだろう。資産価格の上昇は消費者物価に反映されず、不安を生むより、称賛される。・・・

 

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MALKA OLDER ("GDP Didn’t Save Countries From COVID-19," FP APRIL 6, 2021) は書いています。

 

・・・世界は、観光やギャンブルなどの収奪的サービス産業を中心に構築される国民経済を、より多く必要としているのか?  また、製造業の競争的優位が、自国の人民と天然資源を完全に進んで搾取する意欲に基づく国民経済を、より多く必要としているのか? 金融と不動産の富を、そして、不平等を拡大する労働構造を、年々正当化する諸都市を、より多く必要としているのか?

私は誰もがきれいな水、優れた教育、現代の医療、余暇、そして可処分所得へのアクセスを持っているべきだと思う。富裕国は現在よりも貧しい国にもっと多くの援助を提供すべきであり、中所得国は貧困を減らすために資源を使うべきだと思う。・・・

 

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保育園の育児や老人ホームの介護、領海・国境線で防衛を担う人が必要なとき、お金では正しく評価できないと思います。すべての者が負担する方がよいでしょう。たとえば10年に1度、だれもが育児と介護と防衛に参加します。各世代における「21世紀の賦役・徴兵制」です。

 

私なら子ども食堂で働きたいです。若者が就労機会を得られないなら、こうした公的賦役のさまざまな場所で、異なる世代の商店主、ビジネスマン、医師、職人、農夫、エンジニア、デザイナーと、友達になることです。結婚相手も見つけます。

 

福祉国家。大きな政府。その条件は高い「成長」より、こうした社会意識と能力を再発見することに向かいそうです。充実した福祉社会の中では、もはや安楽死や介護を「恐れる」こともないでしょう。