FT October 30, 2019

How the euro helped Germany avoid becoming Japan

Martin Wolf

 

事態は加算されていく。大きな経済圏における責任を無視できない。ユーロ圏の悲劇とは、特に、その中でのドイツの役割だが、所得と支出がユーロ圏内で、またグローバルなレベルで、どのように加算されるか、思考が及ばないことにある。

 

このことが、ECBの政策に対するドイツ人の敵意を、部分的に説明する。最近のSabine Lautenschlägerで、ドイツ人の理事がECB理事会を辞任したのは3人目だ。この敵意は、UKにおけるヨーロッパ懐疑主義と似た長期的な結果を及ぼすだろう。それは破滅につながる。EUはUKが抜けても生き残るが、その中核的なドイツが抜けた場合、消滅するだろう。

 

ユーロが30年前にできたとき、私はユーロがEUを政治的に分裂させると恐れた。ドイツ人は理解しなければならない。ユーロはすでに彼らの利益になる形で機能している。ドイツ経済は膨大な貯蓄を行っているにもかかわらず、ユーロのおかげで安定している。ドイツ人はそのような過剰貯蓄に対して高い報酬を得ることはできない。なぜなら市場がそれを必要としないからだ。グローバルな「流動性の罠」である。貯蓄は、希少ではなく、過剰である。

 

ユーロがもたらすドイツにとっての利益を知りたければ、非常によく似た経済と比較することだ。それは日本である。両国は、第2次世界大戦の敗戦後、アメリカの同盟国として再生した。ダイナミックな工業製品の輸出国で、世界第3と第4の経済規模がある。高齢化が進み、出生率の世界ランキングは、ドイツが204位、日本は209位だ。

 

急速に高齢化し、製造業の輸出部門を持つ大国として、両国の民間部門は投資を超える過剰貯蓄を持つ。ただし、ドイツは民間部門の家計が、日本は民間部門の企業が、過剰貯蓄の多くを占める。超低金利でも、国内の民間投資はそれを吸収できない。算数の問題だが、その結果は財政赤字と資本流出になる。

 

ここで違いが生じる。日本では、資本流出(それは経常収支黒字でもある)が過剰貯蓄の3分の1であり、残りは財政赤字になる。ドイツでは、資本流出が全てを吸収する。なぜなら、政府は赤字を出さないからだ。

 

それは、ドイツ人が財政規律を尊重する美徳を示し、日本人が悪徳にふけるからではない。日本人にはGDPの8%も経常黒字を出し続けることはできないからだ。そんなことをすれば実質為替レートが不安定化し(激しい円高を招く)、また貿易相手国の怒りを買うだろう。

 

しかし、ドイツ人は安定した、競争的な為替レートを持っている。輸出のほぼ40%がユーロ圏内の他国に向かう。ユーロ成立後の初期に、ドイツの競争的な優位が確立されたままだ。その為替レートは加盟諸国によって平均される(ユーロ高は起きない)。ユーロのおかげで、ドイツの望む組み合わせが可能になる。民間貯蓄、財政、貿易収支、すべてが黒字になることだ。

 

もしユーロ圏がなければ、ドイツ・マルクは大幅に増価するだろう。低インフレの世界で、ドイツのインフレ率はマイナスになり、輸出部門の利潤と貿易黒字を損ない、多くの外国資産を持つ金融機関に損害を与える。名目金利がプラスであることも、財政黒字も、維持できないだろう。要するに、ユーロ圏がドイツを日本化から守っているのだ。

 

ユーロ圏の中でも、外でも、金利は低い。ドイツ人の貯蓄に高い収益を求めるなら、もっとリスクの高い投資をすることになる。しかし、国家としてドイツは、貯蓄と海外投資のバランスを変えることができる。世界経済もドイツ経済も悪化の兆候を示すとき、ドイツが民間と政府の支出、特に投資を増やすのだ。その機会は豊富に存在する。

 

長期金利が非常に低水準であることは、呪いではなく、祝福である。