PS Dec 28, 2018

Trump vs. the Economy

NOURIEL ROUBINI

 

金融市場は、とうとう、ドナルド・トランプがアメリカ大統領である、という事実に目覚めた。なぜ、これほど時間がかかったのか?

 

投資家たちは、これまで、トランプは吠えるだけで、噛みつかない、という主張を買っていた。彼が自分たちに有利な政策を取ってくれるうちは、疑わしきは罰せず、であった。減税、規制緩和、その他、企業や株主に有利な政策のことだ。また、政権内の「大人たち」が、トランプによる政策の逸脱を止める、と考えた。

 

こうした考えは1年目を支配したが、今や、事態が変化した。特に、この数か月だ。

 

金融市場が懸念するのは、中国、イタリア、ユーロ圏、新興市場の主要国であるが、なによりもトランプだ。無謀な減税によって長期金利が上昇し、経済はほぼ完全雇用の下で高揚する景気を伸ばした。インフレ目標2%を懸念する投資家たちは、最初のリスク・オフ行動を取った。

 

さらに、トランプは中国や、他のアメリカの主要貿易相手国と貿易戦争を強め、市場は保護主義を懸念していた。最近のアメリカは、中国に対する新冷戦にも及ぶ広範な対立を唱えている。

 

しかも、トランプの他の政策はスタグフレーションを導くものだ。アメリカ企業への直接投資を制限し、アメリカへの移民流入を広く規制する。他方で、政府はインフラ投資計画を示さない。トランプは、企業の雇用や投資、価格を非難し続け、ハイテク企業に行動を促す。彼らはすでに中国企業との競争で逆風に直面しているのだ。

 

新興市場は、アメリカの財政・金融政策がもたらした長期・短期金利の上昇と、ドル高に苦しんでいる。資本逃避やドル建債務の負担増を味わっている。一次産品価格の下落、米中貿易戦争も、彼らを苦しめる。

 

また、アメリカがイラン制裁を再現したことで石油価格は上昇した。政府は免除を与え、またサウジアラビアに増産を強いて、石油価格が急落した。それは消費者の利益ではあっても、アメリカのエネルギー関連企業の株価にとって有害であった。石油価格の乱高下は正しい投資や消費の決定を妨げる。

 

しかし何よりも、最近のアメリカと世界市場における株価の下落は、トランプの言動に反応したものだ。トランプは米中貿易戦争をフル拡大するリスクを高め、公然と連銀の金融政策を攻撃した。連銀は、トランプの脅迫に対して相対的にタカ派の姿勢を取り、中央銀行の政治的独立性を示す必要を感じたのだ。

 

それに続けてトランプは、メキシコ国境に無益な壁を建設する予算を拒む議会に対して、連邦政府の主要部分を閉鎖すると決定した。市場はほとんどパニックに達した。それに加えて、トランプがパウエルを解任したがっている、と報道された。クリスマス休暇の直前、ムニューシン財務長官は、やむなく、パウエル解任はない、アメリカの銀行は健全だ、と発表した。

 

ジョン・ケリー主席補佐官、ジェイムズ・マティス国防長官が辞任したことも、市場の不安につながった。ホワイトハウスに残った経済ナショナリストとタカ派の外交顧問だけが、トランプの思い付きに助言するのだ。中国との全面的な地政学的対立、グローバリゼーションの逆転、いたるところでサプライチェーンが切断される。ZTEやファーウェイの事件もそうだ。ヨーロッパが経済的、政治的に動揺するときに、トランプはEUやNATOの団結を損なう。国内では、ロシア疑惑のモラー特別検察官が、ダモクレスの剣となってトランプを脅かす。

 

トランプは金融市場にとってのDr. Strangeloveである。スタンリー・キューブリックの古典的映画に登場した狂人と同様、トランプも経済的な相互確証破壊を愛している。市場は、今や、金融危機と世界不況が迫ってくることを知った。