FT May 22, 2018

Italy’s new rulers could shake the euro

MARTIN WOLF

 

イタリアはギリシャではない。その経済規模は10倍、その公的債務は2.3兆ユーロであり、ギリシャの7倍である。ユーロ圏で最大、世界で4番目に大きい。潰すにも、救済するにも、イタリアは大きすぎる。問題は新政権がその引き金を引くのか、そうなった場合に何が起きるか、である。

 

これは単なる経済危機ではない。ユーロ圏ができた1997年から2017年の間に、イタリアの1人当たり実質GDPは3%増加した。それはギリシャより悪い。イタリア人は移民危機についても、勝手にやれ、と見放されているように感じている。イタリア人の多くはEUに半分しか入っていないと感じる。また、自国のエスタブリシュメントを嫌っている。だから右派と左派のポピュリストが権力を得たのだ。

 

この混乱にはイタリアにもEUにも責任がある。EUはインフレを達成せず、十分な需要を生んでいない。それは危機後の調整を難しくしている。ドイツはこうした問題を認めない。イタリア人も、イタリアが繁栄し、特に、ドイツと同じ通貨同盟にとどまるには、根本的な経済改革、制度改革が必要であることを認めない。

 

イタリアの新政権がECBの支持を失ってデフォルトになれば、その損失は甚大である。さらに広範な経済的、政治的衝撃を考慮するなら、イタリアをギリシャのように脅すことはむつかしい。ItalexitはGrexitよりはるかに危険な展開である。

 

この怪物じみた危機を恐れて、イタリア政府は服従するだろうか? そうかもしれない。しかし、イタリア経済が前進する力はすでにない。その債務の返済に対するダメージが、資本や人、企業のイタリアからの逃避として生じるだろう。その場合、再び選挙が行われ、一層の過激な政権が成立するか、国民統合が失われるかもしれない。

 

長期に及ぶイタリアの危機がこの国に封じ込められるのか? 他国も影響を受けるだろう。たとえば、スペインはECB内の債務を増大させている。ユーロ圏は改革するか、さもなければ消滅する。

 

イタリアが繁栄を取り戻すまで、その政治も、ヨーロッパにおける位置も安定化しない。どのようなことも起きうるのだ。