FP APRIL 27, 2018
The Unbearable Complacency of Angela Merkel
BY PHILIPPE LEGRAIN
今、ドイツはうまくいっているように見える。経済は好調で、失業率は記録的な低さだ。インフレもほとんどない。財政も健全だ。ユーロ圏の危機と難民危機は去った。メルケル首相はようやく連立政権を組んで、ワシントンを訪問した。
しかし、ドイツは思った以上に、はるかに脆弱である。ヨーロッパの輸出大国であるが、それは開放された市場と核の傘の両方で、長い間、アメリカにただ乗りしてきた。どちらも、ワシントンの醜い相手、ドナルド・トランプ大統領によって脅されている。リベラルな国際秩序が崩壊すれば、ドイツはますます将来の繁栄と安全保障をEUに依存しなければならない。
しかしメルケルは、ユーロ圏とEUを長期的に強化するため、短期的な譲歩をする気がない。これは危険な自己満足である。ヨーロッパにとって潜在的な悲劇をもたらす。
ドイツの成長モデルは2つの要素に大きく頼っている。1つは、工業製品、特に、自動車の追加的な改善である。もう1つは、ドイツが自動車生産に特化し、その黒字を、他国が赤字を出して吸収してくれることだ。その両方が危なくなっている。デジタル化が製造業を混乱させているが、ドイツに自動車産業は、電気自動車や自動運転で中国やアメリカに遅れている。「クリーン」なディーゼル自動車は、今や、データ改ざんの恥辱に汚れている。
アメリカはますますドイツの黒字を吸収しなくなるだろう。トランプは、ドイツやEUの対米貿易黒字を許さない。メルケルは、ヨーロッパの他の指導者たちに、経済改革の「宿題をやってくるよう」説くのが好きだ。しかし、彼女自身がドイツの成長を高める改革を10年以上も実行しなかった。投資不足で、橋や港湾が崩れ、大学は資金不足で、インターネットのスピードも驚くほど遅い。
輸出に過度に依存していた中国などの諸国は、金融危機後、黒字を減らしてきた。しかしドイツの経常収支黒字は、3100億ドルで世界最大、GDPの8%に達する。危険なまでに外国の需要に頼っているのだ。
ドイツは、経済面だけでなく、安全保障面でも、ますます脆弱になっている。プーチン大統領の威信回復運動はドイツの戸口にまで迫っている。重武装した飛び地、カリーニングラードは、ベルリンから、たった373マイルだ。他方、トランプは、アメリカによる核抑止の安全保障を見直すかもしれない。ドイツは何十年も軍備に十分な投資をしなかった。その防衛予算はGDPの1.2%でしかなく、NATOの掲げる2%の負担を大きく割り込んでいる。たとえドイツの歴史的な躊躇を考慮しても、防衛費を惜しむ姿勢は独善的で、ドイツの、そしてヨーロッパの核抑止の考えを拒むことも間違いだ。
ドイツにとって、その繁栄と政治的アイデンティティー、世界に占める地位を決めるEUとユーロ圏とを強化するために、あらゆることをすべきである。Brexitや、イタリアにおけるポピュリストの勝利は、ユーロの欠陥から政治が混乱し、崩壊に至る危険があることを再認識させた。プーチンに近い、極左や極右の政党が、ヨーロッパ各地で支持を広げている。
幸い、フランスの有権者たちはエマニュエル・マクロンを選んだ。彼はこれまでで最も親ドイツ、親EUの大統領だ。彼は、その公約である(ドイツの要求に合致する)、労働法の緩和を含む、経済改革を実施する決意だ。しかし、ユーロ改革についてのマクロンの提案に、メルケルが示すものは、否定 “Nein” だけだ。
ドイツはこの例外的な好機を逃さず、事態を改善するべきだ。ヨーロッパ経済は回復を続け、来年のEU選挙を前に、政治的な推進力を得られる。嵐が来てからより、太陽が輝く間に、改革するべきだ。嵐は地平線の向こうに迫っているのだから。