グローバリゼーションがもたらす階級の分断化、所得の不平等化に、積極的な左派リベラルの改革案を示す必要がある。社会の分解と右派による内戦や国際的衝突が始まる前に、市民たちの支持を得られるか、が問題です。

日本の野党に欠けているものも、これです。

Project Syndicate JUL 11, 2016
The Abdication of the Left
DANI RODRIK

エコノミストと政策担当者は、現在のグローバリゼーションがもつ政治的な脆弱さを著しく過小評価していた。各地に起きている大衆的な反抗には共通した面がある。ローカルな、ナショナルなアイデンティティを求め、民主的な支配と説明責任を求め、中道の主要政党を拒み、エリートや専門家を信用しない。

市場の規制、安定化、正当化を行う制度を超えて経済グローバリゼーションを進める結果についての警告はなされていた。継ぎ目のない世界市場統合を目指すハイパー・グローバリゼーションは国内社会を破壊していた。

問題は、なぜ右派が政治的に支配するようになるか、だ。

グローバリゼーションの新しいコンセンサスが現れた。グローバル市場の機会を利用できる資源とスキルを持つ者と、持たざる者との間で、階級分化が進む、というものだ。階級の分断は、アイデンティティによる分断よりも、伝統的に、政治的な左派を強くした。

左派がグローバリゼーションに対して無力であるのは、移民問題への注目というより、左派が資本主義やグローバリゼーションを改造する明確なプログラムを示さない、示す能力を欠いていたことが原因である。実際、貿易や外国投資の衝撃を受けたラテンアメリカは、左派のポピュリズムが政治的に強化された。EUやIMFによって財政緊縮を強いられた、同じような政治文化を持つギリシャ、スペインでも、右派ではなく、新しい左派勢力が登場した。

左派のエコノミストやテクノクラートは、安易な形で、市場原理主義の批判に熱中した。それどころか、1980年代後半から1990年代初め、特に、短期も含めて、国際資本移動の自由化を推進したのは、フランス社会党やアメリカの民主党のケインズ主義エコノミストやテクノクラートであった。彼らは、金融グローバリゼーションに対して1980年代初めのミッテランによる社会主義的実験が失敗した結果、ヨーロッパ規模、そしてグローバル規模でルールを決めることを目指したのだ。

しかし、今は違う。グローバル資本主義に対する代案が示されつつあるからだ。Anat Admati and Simon Johnsonのラディカルな金融改革、Thomas Piketty and Tony Atkinsonの不平等に対する改革メニュー、Mariana Mazzucato and Ha-Joon Changの公共部門と包括的な革新、Joseph Stiglitz and José Antonio Ocampoのグローバル改革案、Brad DeLong, Jeffrey Sachs, and Lawrence Summersの長期的な公共投資とグリーン・エコノミーへの移行、など。

右派は、「我ら」と「彼ら」を分断し、左派は、改革によって亀裂を埋める。それは矛盾した意味で、資本主義をそれ自身の問題から解放するのだ。