国際政治経済学の想像力
  • 24Feb
    • IPEの果樹園 2/22/2021

      21世紀の国際秩序に、十分なダイナミズムと安定した基礎を見出す条件として、2つのエクソダスを考えます。コリアーPaul CollierとコーエンBenjamin J. Cohenの研究がそのヒントになります。コリアーは、移民政策と難民の国際レジームを提案しています。国境を超える人の移動は、かつて「入植」(植民地開拓への集団移住)として注目されました。移民は、国境を超える経済発展の波及メカニズムとして重要であったと思います。植民地への鉄道投資や人口増加と住宅・都市建設に向けた国際投資が、グローバルな貿易・投資・移民の循環を形成していたわけです。2度の世界大戦とケインズ主義的な成長管理体制は、国境管理を厳しくしたように思います。経済移民と難民が、別々に、この国民国家型秩序に結び付けられました。経済学が移民を観ると、労働供給や賃金格差、教育や人口変動によって、その利益や制限が評価されます。人道的な視点で難民を観ると、戦争や政治的・社会的な迫害と避難所の提供が問題になります。しかし、これらの視点は、EUの難民危機(そして移動の自由)が顕著に示したように、国際システムとして破綻しています。コリアーは、「エクソダス」という、異なる視点を出します。そして、移民政策に必要な流入制限の規模と方法に関して、移民の利益、受け入れ社会の利益、取り残された社会の利益を、バランスさせる国際基準をめざします。その点では、難民の国際レジームもつながっているように思います。難民が生まれる構造的な要因に国際社会が対処すると同時に、難民キャンプという、間違った避難所の在り方を根本的な転換するように求めています。通貨危機の政治経済学を描くために、コーエンは通貨代替やドル化、国民通貨間の競争と通貨発行の寡占市場を観てきました。1969年のBalance-of-payments policyから、2019年のCurrency Statecraftまで、半世紀を経て、国際収支の不均衡と調整をめぐる国際経済・金融論の中核的思想と、怪しい「通貨ピラミッド」と「通貨の地理学」という視点を、明確に統合しています。人と資本、2つのエクソダスだ、と思いました。それは英語では、ともに “migration” と表現されるのではないですか。国境を知らない、鳥獣の季節による移動を意味することもあります。私たちは、それを政治と経済によって歪めました。戦争において、過激に示されるように。あるいは、金融恐慌でも、人と資本は逃げまどいます。コーエンは、ドルから人民元への国際通貨システムの転換を考察し、通貨発行国とグローバルな通貨・金融市場に、政治経済的な構造的圧力が生まれる過程を解剖していきます。読みかけていた冲方丁の小説、『天地明察』の「明察」という言葉を想いました。****長浜の盆梅展を見に行きました。曳山博物館にも行きました。長浜曳山祭は、驚異の歴史・民俗・文化遺産でした。「安土桃山時代、長浜城主であった豊臣秀吉に男子が生まれました。喜んだ秀吉は、城下の人びとに砂金を振る舞い、町民がこれをもとに曳山をつくり長浜八幡宮の祭礼に曳き回したのが始まりといわれています。江戸時代曳山を所蔵する各山組は競って曳山を改造し、豪華な装飾品を用いるなど贅をつくしました。現存する曳山はその頃につくられました。最大の呼び物は、5~12歳の男の子によって豪華絢爛な曳山の舞台で演じられる子ども歌舞伎。大人顔負けの熱演は、見物客の拍手喝采を浴びます。」子どもたちが能舞台を演じ、大人たちがそれを支える。長浜市は人口11万人余り。しかし、祭りの映像が示す熱気と市民的な文化・秩序の継承は、あたかもルネッサンスの都市国家を想像させる、文化のパワーを実感します。秀吉の産業振興・奨励策が成功した、と紹介していますが、盆梅展の会場となっている慶雲館の建設も、魯山人を食客として住ませたのも、長浜の豪商というのだから驚きです。養蚕、絹織物などの富、琵琶湖や近江商人の交易ルートにかかわります。****もし、今、自分が20歳で、学び始めるとしたら、なるほど、こんなに多くの面白い飛び石が研究者たちの宇宙には散らばっているのだな、と夢中で、グローバルな政治経済秩序の構想を練り、論争に参加したでしょう。グローバル・ガバナンスの「天地明察」を見つけたい。

  • 22Feb
    • US、アジア:通貨市場管理の解体を呼びかける

      FT February 17, 2021Yellen needs to tell Asian nations to stop currency manipulationDavid Waddill20年以上の間、中国と日本の中央銀行を含むおよそ12のアジアの中央銀行が、通貨の価値を抑制するために介入してきた。現在、アジアの12か国が保有する外貨準備高は合計6.5兆ドルを超えている。2020年だけでも、これらの国々がパンデミックの経済的影響を緩和しようとしたため、約5000億ドル増加した。アメリカ(および西側世界全体)での持続的な刺激の必要性を考えると、新しい財務長官のジャネット・イエレンは、通貨操作がもはや許容されないことを明確にする必要がある。グループとして、彼らの過剰な貯蓄がGDPの2%削減された場合、それは世界の他の地域に年間5000億ドルの追加需要を提供する。アジア以外の世界のGDPに占めるアメリカのシェアを考えると、これはアメリカへの3000億ドル、GDPの約1.5%、の需要追加を意味する。プラスの影響は1回限りではない。通貨の動きは、特に持続すると思われる場合、事業の投資決定に影響を与え、したがって将来の雇用の成長に影響を与える。日本は介入していないと主張するだろう。アベノミクスでの海外投資プログラム全体とそのタイミングは、一部は円安を促すために設計された。当初、アベノミクスのこの側面は世界にとって有益だったが、8年後、日本は他国を犠牲にして物価引き上げを試みるようになった。貿易加重による実質円は、プラザ合意直前と同じくらい弱く、日本の経常黒字は同じくらい大きい。イエレン財務長官はおそらく私的な会話でそのような政策変更を始める。すべての国は、通貨が上昇し、超過貯蓄率が低下することを可能にする知恵を絞る。そうでない場合、制裁措置が政府と民間部門の行動を変える。新財務長官が宣誓した多くの歴史的な瞬間とは異なり、アメリカは債券市場にリサイクルされる追加の介入資金を必要としない。イエレンはアジア各国に、通貨介入をやめ、市場に自国通貨の価格を決定させるよう呼びかけるべきだ。

    • 中国:デジタル人民元

      FT February 17, 2021Virtual control: the agenda behind China’s new digital currencyJames Kynge in Hong Kong and Sun Yu in Beijingいくつかの都市の当局は、スマートフォンにダウンロードできる新年の「赤い包み」として数千万人民元を配っている。北京と蘇州だけでも、公の宝くじでそれぞれ200人民元(31ドル)相当の200,000個の赤い包みを配った。そのような慈善活動はより強烈な目的を隠している。中国当局は、従来の赤い包みを「デジタル人民元」の形で配布することで、世界のデジタル通貨の採用をリードし、世界的な技術基準を設定できる重要な新技術の試験を実施している。中国はデジタル通貨を導入する最初の大規模経済になることを目指しており、来年の冬季オリンピックで、決済技術の世界的リーダーの地位を示そうとしている。中国のデジタル計画は、人民元の国際化を促進し、米ドルの優位性を弱めることを北京が望んでいるため、通貨に対する幅広い野心と一致する。アメリカでは暗号通貨はリバタリアニズムの言葉に染み込んでいるが、中国ではデジタル通貨は社会と経済の管理を維持するための共産党の意欲を示すものだ。この技術は、監視状態を強化するように設計されている。中央銀行はすべての取引を個人レベルでリアルタイムに追跡できる。北京は、共産党の監視力を強化し、マネーロンダリング、汚職、および国内での「テロ」の資金調達と戦うためにこの機能を使用する。アナリストによると、北京はデジタル人民元を、フィンテック業界と、AntGroup、Tencentの2つの巨大な民間企業が支配する広大な電子決済市場に対する、国家の統制を再確認する手段として使用することを望んでいる。社会統制は北京の優先事項である。AntGroupとTencentが運営する最も人気のある民間所有の2つのプラットフォーム、AlipayとWeChatPayが、市場での地位を損なう恐れのある新しい決済システムの構築を予感させる。中国が紙幣を発明してから1500年後、お金の性質が根本的に変化するまでに至った。当時、唐王朝(618年から907年)では、紙幣はIOUに過ぎず、金属製のお金とは異なり、吹き飛ばされる傾向があったため、「飛銭」として知られた。デジタル人民元は、変化の段階、単なる交換の媒体以上のものである。北京は、これをFacebook主導のDiemなどの外国のデジタル通貨の潜在的な侵入に対する防波堤として、また中国の人口に対する大量監視を容易にするためのツールとして見ている。中央銀行が市民の経済活動に関する膨大な量のデータを採掘できるようになる。これは、「全国的に統合されたビッグデータセンター」の建設を促進するための財務データの融合を予見した2019年後半に発行された政府のフィンテック計画と一致する。中国の金融市場へのアクセスが複雑で、専門投資家を除くすべての人にとって不透明である限り、外国人は人民元を保有するインセンティブをほとんど持たない。

  • 21Feb
    • インド:自由化と、農民たちの抗議デモ

      PS Feb 17, 2021India’s Farm Laws Are a Global ProblemKAUSHIK BASU農業は複雑な問題であり、インドだけでなく、市場と国家のバランスを取るのに苦労しているすべての経済にとって重要な問題を提起します。農業市場には大企業が必要だと思います。そして、インド政府の新しい法律は、政策立案者が、少数の大企業と戦う何百万もの農民の競争の場を平準化するための独占禁止法の執行の必要性に敏感であったならば、より受け入れられたと思います。今日、中国などの国は労働者に基本的労働者の権利と引き換えに輸出加工区で働くオプションを与えています。確かに、輸出加工区での仕事と引き換えに基本的権利を放棄するという個々の決定は、その人の福祉を向上させる可能性があります。しかし、多くの人がそれを行うと、すべての労働者が悪化する可能性があります。要するに、私たちに必要なのは市場原理主義ではなく、巧みな法律によって設定された幅広いパラメーターの範囲内で自由に機能する市場です。インド政府は、新しい農業法を廃止し、慎重な審議プロセスを通じて、理性の試練に耐え、何よりも貧しい農民と消費者に利益をもたらすことができる法律を制定する必要があります。

    • US:大規模財政刺激策に向けた論争

      FT February 16, 2021Joe Biden’s huge bet: the economic consequences of ‘acting big’Chris Gilesアメリカ経済に対するジョー・バイデンの戦略は、40年前のロナルド・レーガンの自由市場改革以来、支配的な政策から最もラディカルに逸脱するものだ。計画が実現すれば、ここ数十年、不必要な、政策の臆病さが、何百万人もの人々に失業をもたらし、生活水準の向上と、多くの分野で機会を枯渇させ、不平等を拡大したことを示すだろう。しかし、戦略が失敗し、過熱、高インフレ、金融不安と、1970年代のような経済に終われば、この実験は、フランソワ・ミッテランが1981年にフランスでリフレに失敗して以来、経済政策立案の最大の自殺点(オウン・ゴール)になるだろう。新政権は、この景気刺激策を支持するため、2016年に金融危機後の虚弱な回復に対応した、当時の連邦準備制度理事会議長であったジャネット・イエレンが提唱した「高圧経済」論の延長であると主張している。バイデン政権は、これが、長引く傷跡をともなわない、Covid-19危機から完全に回復する最善策である、と信じている。反対派の1人は、これまで公的借入と支出の最も声高な支持者であったエコノミストたちだ。金融危機後、バラク・オバマの主要な経済顧問であった元財務長官のラリー・サマーズは、過去10年間の多くを「長期停滞」論、つまり先進国経済が半永久的に停滞しており、より多くの刺激が必要であるという視点で警告してきた。しかし刺激策が準備されている今、それが行き過ぎであり、「見たこともないようなインフレ圧力」を引き起こす、また「非常に重要な公共投資のための余地」を制限する、と彼は警告した。ユニバーシティカレッジロンドンの経済学教授Mariana Mazzucatoは、バイデンの支出計画が、より高く、より環境に優しい将来の成長率のために多くの能力を生み出すと実証できれば、それは政府介入の偉大な成果になるだろう、と言う。「システムを流動性で溢れさせるだけでなく、それが実体経済に到達し、より強力な産業基盤を構築することだ」と彼女は言う。 われわれが求めるのは、「供給側の容量を拡大して、インフレを防ぐ」ことだ。多くのエコノミストが挙げている危険の1つは、インフレが経済に根付いた場合、中央銀行が金利を引き上げ、景気後退と失業を引き起こしても根絶するのがむつかしく、大きな苦痛になることだ。アメリカから来る膨大な刺激の桁数に注目が集まっている。新政府は借り入れと支出を計画し、イエレンは残りのG7にも追随するよう求めた。Rogoffが言うように、この実験はグローバルなものになる。 「それがアメリカにとってうまくいかなければ、それはすべての人が苦しむ。」

    • US:床のコインを求めて殺到する(2)

      NYT Feb. 13, 2021Can Biden Save Americans Like My Old Pal Mike?By Nicholas Kristofこうしたことを知ると、私たちは自己責任について話す。しかし、私たちの共同責任についても話してほしい。1968年の連邦最低賃金がインフレと生産性に追いついていたら、今では1時間あたり7.25ドルではなく22ドル以上になる。人的資本への投資も不足しており、高校の卒業率は1970年代からブルーカラー収入とともに停滞してきた。1つの結果は、アメリカ人が2分半ごとに「絶望死」(麻薬、アルコール、または自殺)することだ。納税者は、逮捕記録が14ページに及ぶマイクの投獄に多額の費用を費やした(主に麻薬犯罪)。そのお金は、幼児期のプログラムと生活支援、彼が高校を卒業して就職するのを助ける心理療法で、問題が起きる前に、よりよい用途で使えただろう。「労働者階級」という言葉は、中産階級の人々にアピールすることを好む政治家によってめったに使われない。そして、住宅ローンの利子控除、大学貯蓄プラン、州および地方の税控除、「中産階級の減税」など、中産階級の利益のため、という名目で、多くの政府プログラムは主に金持ちに利益をもたらす。私はマイクが好きだった。私は彼を尊敬した。彼はホームレスの男性で、何も求めず、都市公園で寝ることの利点について冗談を言った。彼のような複雑なアメリカ人はたくさんいて、依存症、絶望、精神病のミアズマに苦しんでいて、耐え難い痛みに苦しみ、それを彼らの愛する人に負わせている。私たちはともに、苦しんでいるアメリカ人に、彼らが死ぬまで国の床でコインを奪い合うよりも、もっと良い選択肢を提供することができる。ブレグジット×トランプの時代 小野塚佳光(著/文) - 萌書房EU離脱の先にあるものは? 人びとはなぜポピュリストに熱狂したのか? ブレグジット、このモンスターが地上に現れた意味を考え、異なるアイデンティティーによって分断された社会における民主主… - 引用:版元ドットコムwww.hanmoto.com

    • US:床のコインを求めて殺到する(1)

      NYT Feb. 13, 2021Can Biden Save Americans Like My Old Pal Mike?By Nicholas Kristofジョー・バイデンの父親は経済的に苦労した。ある時はボイラーの掃除夫として長距離通勤し、その後、中古車のセールスマンとして働いた。中古車販売店のオーナーは、クリスマスパーティーで銀のドルコインを投げて、それを求める従業員が床に殺到するのを見て楽しんだ。バイデンシニアと彼の妻はパーティーから出て、その仕事をやめた。バイデン大統領は、仕事の尊厳を重視する彼の姿勢を、その話によって強調している。私の旧友Mike Steppマイクも、コインを求めてアメリカの床をさまよう人生だった。マイクは、取り残されたアメリカの、善良な人物であった。バイデン大統領の、そしてアメリカの回復力の1つの尺度は、マイクのような何百万人もの苦労しているアメリカ人に、ルーズベルトのニューディールに似た何かを提供できるかどうか、である。米国の最大の課題は、アメリカの底辺にいる3分の1の国民に機会と尊厳を回復することだ。白人も、黒人も、ブラウンも、労働者階級は中産階級のような機会と尊厳をもてないのだから。マイクのように、私が一緒に育った人々の苦痛を目の当たりにして、私は自分が多くの点で間違っていたと結論付けた。大学教育と信頼できる給料をもらえる多くのリベラル派がそうであるように、私は労働組合をあまりにも軽蔑し、国際貿易にあまりにも熱心で、「創造的破壊」をあまりにも吹聴し、その犠牲者についてあまりにも情を欠いていた。マイクの父は、木材産業が高給の仕事を提供していたころ、製材所で組合の仕事をしていた。マイクは、製材所で仕事を得て中流階級の生活に入れる、と期待していただろう。しかし、これらの仕事は失われたのだ。一部には、絶滅危惧種のフクロウを擁護するため原生林の伐採を終わらせた環境運動のせいであった。私は環境保護主義者であり、原生林が大好きで、私たちがフクロウを救ったことに感謝する。しかし、私たちは人の価格を十分に注意せず、その破壊を軽減するために十分な努力をしなかった。フクロウより、もっとマイクのような人たちのことを心配したらよかった、と思う。マイクと彼の弟、ボビーは、1970年代に私の最も近い隣人であった。彼らは私たちの家族の農場からすぐの家に住んでいた。それは資本主義が多くのブルーカラーのアメリカ人のために働いた時代だった。私の父は、東ヨーロッパからの難民としてアメリカに到着した後、1950年代に伐採者として森で働いた。彼は大学を卒業するのに十分な稼ぎを伐採で得た。今日それは不可能だ。彼らの家はしばしば暴力に苦しんだ。マイクの父親が飲みすぎて虐待したからだ。「お父さんは彼を殴りました」とボビーは思い出す。 「手、ベルト、スイッチなど、お父さんが泥酔して、手に取れるものなら何でも。」家族は教育を受けず、彼らの家には一冊の本もなかったと思う。マイクとボビーはどちらも高校を中退した。機械化、労働組合の衰退、その他の傾向により、ブルーカラーの仕事が損なわれた。歴代のアメリカの政権も、あまり役に立たなかった。私たちの多くは、良い仕事の喪失が社会構造にどれほど壊滅的な影響を与えるかを理解していなかった。それが家族の崩壊やアルコール依存症、薬物依存症、早期死亡の流れにつながるとは、まったく知らなかった。David Autor, David Dorn and Gordon Hansonによれば、貿易のせいで男性に製造業の良い職場がなくなると、より多くの未婚の母親、より多くの子供たちが貧困で暮らし、より多くの人々が早く死に、より多くの男が「怠惰」になる。「ここが好きだ」と、彼が寝ている公園でおしゃべりをしたとき、彼は笑いながら言った。しかし、それはただのうわ言だ。彼は孤独で、寒く、雨に濡れていた。以前、彼は郡の駐車場に隠れて住んでいた、追い出されたとき、彼は打ちのめされて、通りで泣いた。

  • 16Feb
    • IPEの果樹園 2/15/2021

      中国の台頭を恐れるより、中国の衰退を恐れるべきだ。ときおり、そう警告する論説を読むときも、中国のイメージは台頭する(むしろ復活する)世界帝国であり、新しい国際秩序の先頭を歩むアジア強国でした。しかし特集記事(The EconomistJanuary 23th2020)を読んで、そうではないな、と思いました。これまでに読んださまざまな論説が、星雲状に集まる核があるとしたら、中国の若者たちを考察する特集記事がそうでした。”Jiulinghou”(post-90s)という、1990-1999年に生まれた若者たちのことです。「90年代生まれ」の若者たちは、1億8800万人いる、ということです。当然、日本の人口と比べてしまうので、多いなあ、と思います。彼・彼女たちは、1989年の天安門事件以後に生まれています。「70年代生まれ」は、1976年の毛沢東の死後、子供時代を過ごしました。「80年代生まれ」は、鄧小平の下で、改革開放が進む時代に育ちました。しかし、「90年代生まれ」が生きたのは、習近平が権力の頂点に立った時代です。それ以前の中国を知りません。すなわち内戦や貧困、飢餓はもちろん、改革の時代も、独自の急成長も、直接、知らない世代です。記事の冒頭に、毛沢東の肖像がかかる天安門広場で、毎朝、日の出とともに行われる国旗掲揚のセレモニーを、多くの人々が見つめる情景があります。肌を刺す厳しい北京の冬でも、セレモニーに参加する市民の列は絶えない、と。なぜ中国共産党が支持されるのか? その答えは世代によって異なるようです。帝国主義的支配、特に、日本の侵略を打ち負かした。朝鮮戦争を含む、大戦争の勝利という記憶。毛沢東という指導者のカリスマと秩序の混乱を恐れる。文化大革命、権威、文化、支配エリートの剥奪。毛沢東の死後、権力闘争に鄧小平が勝ったのは何が理由であったのか。国民生活の疲弊や、カンボジア内戦とベトナムとの戦争・・・?90年代に生まれた若者たちは、共産党の権威に逆らったりしない。中国が豊かになったこと、国際的な地位が高まっていくことを誇りに思っている。権威主義的な国家や共産党の支配を肯定的に観ている。マルクス主義、ナショナリズム、西側の基本的諸価値を否定するイデオロギーを、愛国主義に求める。そして、子供のときから、学校では「習近平思想」を学習する。しかし、中国の高成長(その条件)は、パンデミック前にも消滅していたが、いよいよ、それが明白になった。若者として、猛烈に働いて、より高い地位や所得を求めるより、「生きがい」を求めるようになった。大学を出て、都市の大企業に就職するとか、ハイテク分野で起業するとか、そういった夢は、嘘ではないが、非常に限られた成功例でしかない。それがわかったら、都会生活の極端な競争、環境破壊、所得や地位の格差、不平等に、もっと異なる生き方を模索し始める。そんな若者が増えているという。一人っ子政策は子供を甘やかした。しかし、その弊害で男子の人口は女子より多く、4000万人も結婚できない。都市より田舎暮らしを理想化し、環境保護、気候変動対策を支持する。さらにフェミニズム、ゲイ、LGBTの権利を訴え、農村の貧困や都市下層の不当な扱いを憤る、そんな若者たちが中国の政治を変え、次の国際秩序に最も重要な発言力を得るだろう。共産党はそれを十分に意識している。ドナルド・トランプの暴言とアメリカ政府が示した中国への攻撃、侮辱、アメリカ国民に広まったアジア人への差別は、中国の若者たちに、アメリカや西側のリベラルな価値も民主主義も、偽善である、と教えた。コロナウイルス対策の競争で、欧米は敗北し、アジアが、特に中国が勝利した。そういう政府の宣伝は、国際秩序の将来にも影響するだろう。****奈良の平城宮跡を散歩しました。だだっ広いだけだと思っていたら、とても中身のある展示と解説に感銘を受けました。奈良時代の生活水準や身分の違い、食生活まで、やたらに勉強になります。・・・そうか、貴族は蛸の干物まで食べていたのか。****中国の若者たちだけでなく、激しい競争によりグローバルな産業構造の変化が絶え間なく進んでいる。しかも半導体生産の2つの巨大企業は、台湾と韓国、2つの地政学的危険地帯から発したTSMCとサムソンだ。地政学を呑み込みながら、それでもグローバルな産業の再編、工業化とハイテク化の波は続きます。中国の台頭はもちろん重要ですが、中国やアジアを含めて、世界経済は、半導体、電気自動車、鉄鋼業、再生可能エネルギー、農業・食糧生産、ワクチンなど医薬品生産・・・そして、情報経済とプラットフォーマー規制をめぐり、数年ごとに、すっかり変貌するでしょう。日本が停滞しているとしたら、老人ばかりが密室で協議するからです。若者たちは中国の「90年代生まれ」に共感し、新興産業は激変する世界の一部を生きているはずです。

    • パンデミック後の世界:自然を含む長期の経済管理

      PS Feb 10, 2021Restoring Nature to EconomicsDIANE COYLEスミスやリカードのような、農業が今日よりもはるかに大きな経済的シェアを占めていた時代の古典派経済学者は、人間活動が自然界で起こり、自然の恵みに依存していることをよく知っていた。彼らは常に土地を分析に含めた。しかし現代の経済学は、経済の定義と測定から自然を大部分除外している。農民が作物を売って得たお金はGDPにカウントされるが、作物に受粉するミツバチのサービスや土壌の質は、ミツバチが死ぬか土壌が失われるまで考慮されない。また、従来の経済統計には、きれいな空気によって提供されるサービスや汚染の悪影響が組み込まれていない。しかし、COVID-19の死亡率と呼吸器疾患との関係は、人的資本と将来の収入の減少という狭いレンズを通してだけでも、そのコストを明らかに示している。経済政策立案者の仕事は、社会にプラスの利益をもたらすよう、国の資産ポートフォリオを全体として管理することである。これは、重要な生物種や生態系を含む個々の資産の減価償却、およびそれらの間の補完性を考慮に入れることを意味する。そのような枠組みで、長期ポートフォリオ・アプローチを採用する政府は、費用がかかり、エネルギー集約的な、見苦しいコンクリートにより洪水を防ごうとせず、上流の植林と下流の湿地保全に低コストの投資を行うと決定するだろう。同様に、農民は生物多様性の喪失とミツバチの個体数の減少をよく知っているが、化学肥料への依存度が高くなり、死んだミツバチが増える悪影響についてはあまり知らない。自然地域への人間活動の侵入は、エボラやCOVID-19のような感染症の蔓延をもたらし、社会、経済、政府に莫大な費用を強いている。パンデミックは、お金は価値の尺度として不十分だ、という古い重要な教訓を含め、多くの教訓をもたらす。病院のポーターから配達ドライバーまで、「エッセンシャルワーカー」は最低賃金で働く者が多い。現在、自宅で学校の授業を監督する人、またはレストランが封鎖中に追加の料理をしている人は、家庭内での無給労働の価値を新たに理解するだろう。2020年3月以降、人々が公園へのアクセスに置く価値は飛躍的に高まった。経常的に自然から得ている価値の多くは測定されず、あまりにも少ししか支払われず、エコノミストたちはそれを無視する。それらはもはや持続可能ではない。

  • 15Feb
    • US:議事堂襲撃からテロリズムへの対応

      NYT Feb. 10, 2021I’ve Studied Terrorism for Over 40 Years. Let’s Talk About What Comes Next.By Martha Crenshaw強力なタブーの崩壊に酔いしれた、大義への新参者たちは、急進化のダイナミクスの中で暴力的な極右グループを生むかもしれない。この極右の白人至上主義者、ネオナチの環境の中で権力を争うことは、脅威の不安定さと予測不可能性を強めるだろう。グループが治安部隊からの圧力の下で地下に移動するとき、彼らは必然的にもっと秘密の組織になる。外部との接触を断ち切り、彼らは世界の終わりのカルトのように主観的な現実に入る。テクノロジーは、極右の陰謀論者の世界が遠隔で通信することを可能にし、運動を結びつけるが、同時に、不信と侵入を恐れさせる。その結果、民主主義はプロパガンダや偽情報と戦う方法を模索し、資金の募集や調達を困難にした。政府や、Facebook、Twitterなどの民間企業は、過激派のコミュニケーション能力を制限することで、オンラインでの暴力の訴えに対応している。しかし、政策立案者は、迅速かつ包括的な解決に向けた要求に、抵抗するべきだ。必要なのは、目の前にある証拠に照らして、対応するオプションを慎重に検討することだ。大惨事の直後にとられる行動は、合理的な計算よりも感情によって引き起こされる。そして、一度取られると、それらの措置を元に戻すのは難しい。最大の危険は、暴力に惹かれ、武装しており、イデオロギー的信念、共有されたアイデンティティーを守ることへのコミットメント、および無関係の恐れから行動する意欲のある小グループまたは個人である。民主的な正統性を回復するための重要なステップは、彼らが代表していると主張するコミュニティが、彼らを拒否するときである。

    • US、EU:独裁者ではなく、ポピュリストを生む社会

      PS Feb 8, 2021Demagogues vs. DictatorsMICHAEL LINDドナルド・トランプの米国大統領としての1期を通じて、民主党と共和党の両方の反対派は、彼をファシスト独裁者になると頻繁に批判した。しかし、トランプがホワイトハウスから追放されたことで、このアナロジーは受け入れられなくなった。イタリアの指導者でトランプが最も似ているのは、ファシスト独裁者のベニート・ムッソリーニBenito Mussoliniではなく、スキャンダルを頻発した元首相シルヴィオ・ベルルスコーニSilvio Berlusconiである。社会の主要なグループが、労働組合、宗教団体、コミュニティグループなどの選挙政治や機関を通じて適切な代表を務めている場合、ポピュリストのデマゴーグが大衆の支持を受けることはめったにない。都市や州、地方、または国家の中の大きな集団が、従来のリーダーによって権利を剥奪され、無視されていると感じたときだけ、彼らを代表していると主張する、自分の利益しか気にしない派手なアウトサイダーたちに注目する傾向がある。残念ながら、富と地位が現代の西洋社会ではますます集中する一方で、中間組織と地域社会は衰退し、伝統的な政党は、億万長者やメディアの有名人が簡単に採用する単なるラベルになるまで衰退している。より多くのベルルスコーニス、より多くのトランプが生まれる条件は熟したままである。

  • 14Feb
    • US:株式投機と民主的な「所有社会」

      FT February 8, 2021The biggest lesson of GameStopRana Foroohar操作された金融システムを攪乱し、正義の小規模投資家たちがヘッジファンドを倒す、GameStop株取引の熱狂はダヴィデとゴリアテにもたとえられた。しかし、その考えは間違いだ。市場は「民主化」されていないし、スマホで株取引する人々は「包括的な資本主義」を代表するわけではない。しかし1980年代、民主党も共和党も、政治家たちは市場と民主主義を同一視して行動した。市場の規制緩和を進め、ブレトンウッズの為替レート制度が崩壊した後、金融政策で景気変動を緩和する市場介入が増え、株式保有者の資本主義が登場した。アメリカ経済は、安定した雇用と所得の上昇に基づく繁栄から、企業も消費者も資産価格の上昇にますます注目するものに変わった。まさに今、COVID-19による経済的苦痛を緩和するために短期の財政刺激策が採用されている。しかし、アメリカ経済の水準は、個人がキャピタルゲインや退職後に備える口座からの分配を消費することに依存している。もし資産価格が大きく下落すれば、成長は持続できない。ジョージ・W・ブッシュ大統領が「所有社会」への移行に言及した40年前も、企業の本質、ビジネスと社会との契約は、変化しつつあった。2つの現象は、当然、無関係ではない。市場の変革は企業に短期的な圧力をかけ、アウトソーシング、自動化、労働組合の削減、401kプランの確定給付年金の削除によって、コストを減らしたが、選択した投資の責任、その悪い結果のリスクを、労働者個人に負わせる。1989年、アメリカの家族の31%が株式を保有していたが、今はほぼ半分だ。私たちは皆、デイトレーダーのように見える。アプリやソーシャルメディアで株取引をする人が増えても、市場が主導する資本主義システムを実現することはない。われわれの経済は消費支出に頼っており、それは資産価格のインフレの上に立つ。そのうえで、10代の若者たちはベッドルームから投資する。しかし、現在のような雇用が続くなら、若者たちは、ポートフォリオの価値が急落してもセーフティーネットの無い、ギグワーカーに終わるだろう。それはリベラルな民主主義にとって、持続可能ではなく、支持されるものでもない。だから私は、「富(資産)」を優先する経済から、労働に報いる経済に変える、というジョー・バイデンの公約を称えるのだ。株式投機は、いくら共有されても、民主主義ではない。

    • US:GameStop株投機のポピュリズム

      NYT Feb. 4, 2021Pumps and Dumps and ChumpsBy Paul Krugman理性的な世界なら、小さなゲーム機販売企業GameStopの株価が上下するのを誰も気にしない。Redditが煽ったGameStop株はUS株市場全体の0.06%でしかない。そもそも株式市場は実物経済の余興でしかない。しかし、われわれは理性的でない世界に暮らしている。GameStopの話は、経済や市場よりも、心理と政治の問題だ。ドナルド・トランプの4年間を経ても、われわれの社会はまだ騙されやすいままである。非常に多くの影響力ある人々がフェイクのポピュリズムに殺到する。ソーシャルメディアによって加速されたGameStop株に起きたことは、ソーシャルメディアで加速されたa pump and dump(虚偽の推奨によって株価を吊り上げ、人びとを巻き込んで自分だけ売り抜ける投機)である。付録として略奪的な取引が加わった。原則的に、これは違法である。しかし、GameStop株では誰も起訴されないだろう。その意図を証明することは可能だ。明言しておくが、これはポピュリスト的な蜂起ではない。われわれの経済は多くの家族を取り残してきたが、アメリカの労働者たちが必要とするのは賃金の停滞を終わらせることであり、株式投機ではない。騒動が終われば、熱狂する取引で金を失うのが小規模の投資家たちであり、儲けるのはウォール街であると分かるだろう。進歩的な人びとには同調する者もいる。しかし彼らは知るべきだ。株価上昇に対するQAnon的な雰囲気は常にあった。株価が沈めばなおさらだ。Redditやソーシャルメディアには、ユダヤ人銀行家を非難する声が多くある。ポピュリズムを支持するなら、そのポピュリズムが本物であることを確かめるべきだ。すなわち、アメリカ人の生活を改善する政策を要求し、陰謀論や、「エリート」に対する見せかけの文化戦争ではない。

  • 13Feb
    • EU:US、中国に並ぶ、21世紀の大国

      SPIEGEL International 04.02.2021From Brussels to the Rest of the WorldHow Europe Became a Model for the 21st CenturyAn Essay by Ullrich Fichtner政治風刺漫画の世界では、ヨーロッパはカタツムリやヒドラ、蛇の穴や豚舎として描かれる。欧州連合は、病人であり、車椅子の老婆、悲しむ女性に無視された子供。ヨーロッパは、空気の抜けた気球、エンジンのないレースカー、脱線した列車、沈没船、大きすぎて滑走路が見つからないジャンボジェット機。大陸は、EU首脳たちが集まる不毛の山頂、ファイルのゴミの山、牛乳とワインの海がたくさんある汚された土地。ヨーロッパは、不安定なカードの家、ぼろ家、燃えている小屋、崩れかけた寺。それはいつも破滅状態だ。こうしたすべての風刺にもかかわらず、EUは世界の最強国家の1つである。EUは、この10年ほどの間にも、深淵にあまりにも近づきすぎて、崩壊が避けられないように見えた。2007-2008年の金融危機ではギリシャからヨーロッパ政府債務危機が起きた。大陸中の右派ポピュリストだけでなく、諸国の連合という基本構造に問題がある、といわれた。金融危機からアイデンティティー危機になり、難民危機はEUの生死を問う危機になった。2016年、イギリスがEU離脱を決めたことは、ヨーロッパの人々が愛することのないEUという歴史的実験を、埋葬する棺に最後の釘を打ったように見えた。ブレグジットの前は、ブリュッセルの権力構造について、ヨーロッパの人びとは何も知らなかった。しかし、ある意味で、政治教育が進み、現在ブリュッセルの政治情勢をより厳密に追跡している。それでも、世界における欧州連合の重みについて、広範な理解はない。ユーロ導入とEUの東方拡大後にあった自信過剰から、今日の顕著な劣等感へと、EUの印象は大きく変化した。ヨーロッパの衰退という間違った物語を信じて、多くの人びとが未来を悲観している。EUの重要性を示す指標は多い。どの指標にも論争があるが、GDPや1人当たりGDP、どの指標でもEUは世界のトップ3に入る。多くの分野で目理科を超え、中国にも優位を保つだろう。EUは、アメリカ、インド、南アフリカ、ロシアにとって最も重要な輸出市場であり、中国とブラジルの2番目に大きな市場で、日本と韓国では3番目に大きな市場である。中国ではなくヨーロッパが、台頭するアフリカ大陸の最大のパートナーである。アフリカの全輸出の3分の1はEUに向けられており、アフリカへの外国投資の40%はEUからのものだ。1800年頃からヨーロッパの工業化は始まったが、その当時、世界の人口の半分はアジアに住んでいた。世界生産でもアジアが半分を占めた。しかし、1900年には、アジアの世界シェアは20%に減少した。それはヨーロッパが技術進歩をリードしたからだ。その意味では、今、アジアや中国の台頭と言うのは正しくない。それは「復帰」であり、長い正常化の過程、とみなすべきだ。中国の台頭はマイナス面だけでなく、ヨーロッパにとってプラスのことがある。もし中国が支配を求めず、世界経済と国際社会に占める公平な位置を、公正な競争を通じて求めるのであれば、ヨーロッパはそれを歓迎するだろう。労働者の保護や人権について、中国との貿易交渉では、中国がヨーロッパの多くの規制に従うようになる。カリフォルニアのハイテク企業はEUの規制に従って製品を作る。ガーナやエクアドルのコーヒー生産者も、McDonald, Subway and Wendyのようなファーストフードのチェーン店も、Adidas, Nike, and Zaraも、EUの規制に従っている。Microsoft, Google, Apple, Intelは互いに訴訟を起こしているが、サンフランシスコやニューヨークだけでなく、欧州委員会の仲裁を求める。一般データ保護規則(GDPR)が示す、ヨーロッパのデータ保護は、急速に世界標準になり、どの企業もどの国も無視することはできない。EUの炭素排出規制もそうだ。現代のグローバリゼーションとは、「ヨーロッパ化」である。近代史においては、指導的な大国がその能力と原則を示し、他の諸国が従った。18・19世紀のイギリスとフランス、20世紀、両大戦後のアメリカがそうだ。しかし、1980年代から、アメリカは規制緩和を推進し、新しい金本位制を示す役割を放棄した。EUは、その真空を埋めたのだ。ドイツ政府は現在、欧州の規範と基準を揺るがし、連合を弱体化しようとする中国の試みを特に懸念している。中国を批判するとか、人権侵害で攻撃するとき、EU諸国の中から共通の戦線を離脱する国が出てくる。ハンガリー、ギリシャ、クロアチア、スロベニア、チェコ共和国は、北京の権力に、危険なほど接近している。新しい断層線がここに開くかもしれない。複雑な同盟が機能するには、時間が重要だ。27の加盟国が首尾一貫した外交・安全保障政策を策定できないことに不満を言うのは、EUが歴史的に非常に若い組織であることを忘れているからだ。27の加盟国のうち16国は1995年から参加しており、13国が2004年に加盟した。ほぼ2世紀にわたって深く根付いたナショナリストの考えを変えるのは容易でない。ユーロをめぐる崩壊論は間違いだった。EUはすでに多くのことを実現した。平和の維持、気候の保護、自然破壊の終焉、住民の保護、繁栄、生活向上、幸福の追求。ほとんどのヨーロッパ人は、これらが自明であると信じている。もはやそれらをほとんど聞かず、麗々しく称賛することもない。しかしEUは、何世紀にもわたって人々が互いに引き裂かれた大陸全体を、21世紀のモデルに変えた。それはこれ以上にない21世紀の大国そのものだ。

  • 09Feb
    • IPEの果樹園 2/8/2021

      森元首相が、発言を撤回し、辞任しないというのであれば、それも「不可能」ではないと思います。何が問題だったかを良く学んで、日本のさまざまな分野で続く支配的な男性社会の価値観、政治的コネによる密室の調整、権力や富の老人による既得権化・・・など、すべて徹底的に改革する、と約束すること、そして、オリンピックに至る発言と行動でそれを示すことでしょう。The Economist (January 16th2020) の記事は、アフリカのウガンダ、USとUKの政治、そして民主主義に関する悲観論を示しています。****記事によれば、ゲットー育ちの大統領候補Robert Kyagulanyi Ssentamu、通称ボビー・ワインを厳しく弾圧した現職大統領Yoweri Kaguta Museveniムセベニは、独裁者イディ・アミンを打倒する政治指導者で、マルクス主義者であった。ウガンダは、他のアフリカ諸国と同様、1980年代に国際的な債権者からの圧力を受けて市場改革に向かった。債務免除と、一次産品価格の上昇により成長を実現した。しかし今なお、多くの国が農業と鉱業に依存したまま、若者たちは都市のインフォーマル部門で、貧しい、不安定な生活に苦しむ。ムセベニは、冷戦終結とともに、貿易や外国投資を受け入れ、インフレが2桁にならなかった。しかし工業部門の雇用は減った。仕事の無い若者たちは産油諸国へ出稼ぎに行き、都市の不平等、不正義は顕著になった。ボビー・ワインの歌は、若者たちの不満を代表して強く支持された。ワインの選挙キャンペーンは都市の若者が中心で、地方に浸透するのはむつかしい。老人たちはかつての無秩序と暴力の再現を恐れている。独裁者と闘った若きムセベニは、今、スラムの制圧にその力を注ぐ。****MAGAの帽子を脱いで、ごみ箱に捨てた。イギリス政府は、議事堂襲撃に驚き、トランプを国賓として議会に招いて演説してもらう、という考えを消し去った。しかし、ブレグジット推進派とトランプ勢力とをつなぐパイプは太い。イギリスの右派とトランプの世界観は、広く、深く、結びついている。シンクタンクも、保守派の知識人も、新興メディアの手法も共有した。ブレグジットとトランプは大西洋を越えて英米保守派の共通する問題に対する解答だった。保守政党が、教育を受けた若者たち、労働者階級から支持を得るには、経済的な利益ではなく、保守的価値による文化戦争で政治を分断するしかない。経済政策ではなく、ナショナリストの政治的宣伝に終始した。****The Economistの記事「民主主義:マディソンの悪夢」は、民主主義に関する楽観論と悲観論を紹介しています。数千年におよぶ民主主義の歴史において、「群衆の狂気」について悲観論が常にありました。プラトンは、民主制を必ず独裁や無政府状態に至る「群衆の支配」とみなして拒否し、むしろ、文明を維持する支配的エリートを求めました。子供のときから衝動を抑える訓練を受けた、本能よりも叡智を優先する哲人王です。自由を求める民衆のパワーが称賛されるようになったのは、フランス革命とアメリカ独立革命が起きたからです。しかし、革命は暴力の支配で終わります。バークがフランス革命に対する保守派の反対論を書いたのは、テロが支配する前でした。群衆が広める集団心理は、おとなしい人々にも狂気を広めて怪物に変える。革命は、集団殺戮に至り、その後、独裁者が現れて法と秩序を再建する。アメリカ革命でも、指導者たちは群衆を恐れました。民主主義は、憲法、上院、最高裁、権力の分割とチェック・アンド・バランスで、何重にも制限を受けたのです。トクヴィルは、それに加えて、市民文化を重視しました。富や権利において平等な社会で、自律し、教育を受けた市民たちが、民主制においても、常に、責任あるエリートを生むように。アラブの春も、アメリカの議事堂襲撃も、私たちは観ました。今や、民主主義に対する楽観論は後退し、悲観論が優勢になっています。より洗練された楽観論を求めます。****森元首相が変心して組織委員会委員長を続けるのは、ムセベニが秘密警察を廃止し、ボビー・ワインを称えて、軍や与党の幹部を覚醒した若者たちに入れ替え、民間部門の成長と雇用を促すための選挙と位置付けて、すべての国民に投票を促すことに等しい、困難なものかもしれません。ブレグジット×トランプの時代 小野塚佳光(著/文) - 萌書房EU離脱の先にあるものは? 人びとはなぜポピュリストに熱狂したのか? ブレグジット、このモンスターが地上に現れた意味を考え、異なるアイデンティティーによって分断された社会における民主主… - 引用:版元ドットコムwww.hanmoto.com

  • 08Feb
    • US、ミャンマー:軍事クーデタとアメリカの民主化外交

      FP FEBRUARY 4, 2021What America Should—and Shouldn’t—Do About Myanmar’s CoupBY STEPHEN M. WALTミャンマーのクーデタに対するバイデン政権の対応が、民主化に対する最初の試金石だ、という主張は間違っている。リアリストから観て、アメリカ政府がミャンマーの軍政に対して行動することはほとんど何もない。こうした状況について、アメリカ外交には基本的なガイドブックがある。ミャンマーに侵攻することも、経済封鎖することもない。インフラを攻撃したり、重要なサービスの提供を拒否したりする案もあるが、採用されない。口頭での非難といくつかの援助計画の見直し、的を絞った数名の個人に対する制裁であろう。明白な事実として、アメリカはミャンマーに対するレバレッジを持たない。貿易額は14億ドルあるが、中国はその10倍以上も貿易している。投資額も中国の方が多い。ミャンマーは、中国の一帯一路における重要な目標国だ。クーデタについて、中国は驚いていない。しかし、より長期的には、アメリカの影響力が明らかに重要である。中国はミャンマーを自国の戦略に必要な経済回廊として、鉄道や港に大規模に投資してきた。マラッカ海峡を通らずにインド洋に出るためだ。しかし中国とミャンマーの関係は諸刃の剣である。強力な隣国に支配されるのを恐れるミャンマーの支配者たちは、そのヘッジとして、西側との関係強化を望んできた。バイデン政権は、ミャンマー政府が民主化や人権を重視する改革から後退し、軍事体制に戻ろうとするなら、アメリカや西側との関係が悪化することを明確に伝えるべきである。また、ミャンマーの実験は民主化を支持する外交への警鐘だ。独裁者を追放し、リベラルな価値を広めることに熱心なあまり、新しい政治秩序を築くことがどれほど困難なものか、新しい体制になっても、旧来のネットワークや縁故、制度、価値が続き、あるいは、復活することを忘れることがある。それは予想外の結果を不可避に生じ、めったに期待されたことをもたらさない。Aung San Suu Kyiスーチー女史の変遷について失望が生じた。民主的な選挙によって決まった指導者が、すべてネルソン・マンデラになるわけではない。アフガニスタンのカルザイ、イラクのマーリキ―首相、オーストリアのオルバンになるかもしれない。ミャンマーは、リベラルな価値を広めるのが、遅い、不安定で不確実なプロセスである、と教えている。加速させるための情熱的な努力が、不道徳な無関心と同様に、その過程を損なう可能性がある。バイデンの真のテストは、ミャンマーを始まったばかりの政権にとって重大な瞬間とみなすのではなく、忍耐と抑制を示せるか、ということだ。

  • 07Feb
    • US:空売りには正当な役割がある、が。

      PS Feb 3, 2021What’s Different About the GameStop Bubble?JEFFREY FRANKEL1月の最後の週に、GameStopの株価が週323%、月1700%も上昇した。企業には何も変化がなかった。ファンダメンタルズは変わらずに、投機的なバブルが起きた。しかし、これは少し違う。バブルでは、時機をつかんで参加し、ぬけ出した投資家が、大金をつかむ。遅れて参加し、長く持ち過ぎた者は大きな損失を出す。カジノでルーレットをしているようなものだ。Charles Schwabや Robinhoodは胴元だ。GameStopバブルが異なっているのは、金融市場に関する2つの解釈を試すものだからだ。第1の解釈は、金融市場は効率的に資本を、ファンダメンタルズの弱い企業から強い企業に、配分する、というものだ。第2の解釈は、ウォール街のトレーダーたちは市場を不安定化し、小さな投資家を犠牲にして巨額の利益を得ている、という。GameStopの株を買ったのは、しばしば、若い、アマチュアの投資家であった。彼らはRedditのWallStreetBetsなど、メッセージボードで協力し、第2の解釈を採用した。小さな投資家たちがウォール街を打ち倒す、という話だ。しかし、ダヴィデとゴリアテの物語には深刻な欠点がある。GameStopバブルに明確な悪者は存在しないことだ。どちらも同じ技術、オプションを売買した。ヘッジファンドはプットオプション(先に打って安値を待つ)、小規模投資家はコールオプション(高値を期待して保有する)を買った。ショート・セラーは敵意を持たれやすいが、どちらのアプローチも本来的に非道なものではない。ショート・セラーは、過大評価された株を売って、企業のファンダメンタルズに従わせる。それは、金融危機になるまでバブルが膨張するのを防ぎ、また、怪しい経営内容の企業に関心が集まることにつながる。小規模の投資家も悪者ではない。カジノで儲けるのも、楽しむのも、あるいは、ポピュリスト的な政治的主張に従ってヘッジファンドを懲らしめるのも、彼らの権利である。明らかに、巨大なヘッジファンドがいくつか集まって、同じような投機を組織すれば、違法な市場操作である。しかし、自発的に集まってGameStop株を買った小規模投資家には当てはまらない。極端な不平等の時代に、GameStop投資は多くの共感を得る。ヘッジファンドは損失を出したにもかかわらず、なお非常に裕福だ。しかし、トレーダーたちは苦しむだろう。遅れて購入した高値の株を保有しているからだ。ソーシャルメディアが投機を煽るキャンペーンを広めなければ、彼らは投資しなかっただろう。しかも、Robinhoodは投機的に売買した銘柄を制限し、その株価は暴落した。金融規制の正当な任務の1つは、何もかも失うようなことになると知らない投資家を守ることだ。証券取引委員会SECは、ルーレットに参加する投資家ではなく、カジノの胴元を規制し、小規模投資家の保護を求めている。RobinhoodがSECの調査対象になったのは、これが最初ではない。Robinhoodは金融エスタブリシュメントの一部である。しかし、投資家たちはまだWallStreetBetsを信用している。ポンチ金融(ねずみ講)の犠牲者を思い出す。彼らは自分たちの損失を詐欺師のせいだと思わず、閉鎖させた規制当局を憎むのだ。

    • US:トレーディングというブルシット・ジョブ

      The Guardian, Sat 30 Jan 2021The real lesson of the GameStop story is the power of the swarmBrett Scott金融ビジネスを牛耳る大企業から見れば、小口の株式取引は、フンコロガシのようなものだった。金融大企業が市場を動かす中で、その糞を動かしているだけだ、と。GameStopの神話は、その巨人たちを倒した点で際立っている。株式トレーダーには2つのタイプがある。1つは、実際の企業を調査する「ファンダメンタル分析」。もう1つは、投資家の行動を分析する「テクニカル分析」である。デイ・トレーダーはテクニカル分析に偏ることが顕著である。他のトレーダーが行動したことを示すグラフを多用して議論する。ここで、市場のシュールリアリズムが誕生する。テクニカル・トレーダーは、株価が代表する企業の利益ではなく、他のテクニカル・トレーダーを監視しているからだ。GameStopの株価は現実と完全に切り離されて動いた。かつては、こうした行動が男性的マッチョを象徴していた。しかし、Robinhoodはミレニアム世代のための最初に「覚醒した」トレーディング・アプリである。それは「ブルシット・ジョブ(どうでもよい糞のような仕事)」の代わりになる。男のために働くのではなく、企業の一部を取引することで人間になる。GameStopは、デイ・トレーダーのゼロサム的な空虚さに対する反動であっただろう。しかし、ブルシット・ジョブからの救済になるどころか、トレーディングはブルシット・ジョブそのものだ。一時的に勝利できるとしたら、それはあなたが市場との闘いにのめりこまないことだ。

    • US:株式市場の投機を規制する

      The Guardian, Fri 29 Jan 2021The GameStop affair is like tulip mania on steroidsDan Davies1636年の終わりにかけて、オランダでは腺ペストが広まった。当時はロックダウンの考えが確立していなかったが、商取引は減少した。暇になった若者たちが酒場に集まって、まだ取引されている少数の市場で球根の取引を楽しんだ。それは最初の金融市場におけるバブルとして記録されることになった。「チューリップ・バブル」である。ほぼ400年後に、アメリカの株式市場で同じことが起きた。今週、GameStop社の株式が、金融ビジネスの大企業と、ディスカッションサイトであるRedditの一部、the WallStreetBetsにおいて意見交換していた暇な数百人との主戦場になった。ニューヨークのヘッジファンドが、GameStopのビジネスモデルは時代遅れだと考えて、価格の下落に賭けた。他方、Redditの群衆は、この売却を不公平なものと決め、ゲーマーたちのために買いで対抗した。それはデリバティブやレバレッジを使って、大規模に行われた。驚いたことに、群衆が勝利した。ヘッジファンドのリスク管理システムにより、彼らは高い価格で買い戻しを強いられた。しかし、証券取引所は、こうした協調行動とレバレッジを利用した価格操作を強く嫌ってきた。取引量は、行動に参加した群衆が好むような小規模の仲介業者にとってキャパシティーを超えたため、クレジットが利用できなくなり、口座が閉鎖されて、群衆が売却を強いられた。こうした売りに対抗する攻撃の例は、株式市場で多く知られている。GameStopの事件が特徴的なことは、それがSNSを通じた自発的な組織による攻撃であったことだ。市場を操作するための資金をプールする操作は、最も熟練したプロの仕事であった。WallStreetBetsに集まった群衆の主張には説得的でないものもあり、その売買は、証券市場が前提する、単純に利益を得る、ということではない、怒りなどの感情による。それは市場規制の問題を複雑にするだろう。株式市場には投機が必要だが、その悪影響は制限されねばならない。

    • US:株式市場と権力への挑戦か?

      The Guardian, Sun 31 Jan 2021An uprising against Wall Street? Hardly. GameStop was about the absurdity of the stock marketKenan MalikGameStopに起きたことは、オンライン・フォーラムに集まったRedditのオタクたちが、600万人もの利用者をGameStop株への投資に向かわせた、ということだろう。それを投資と考えたのか、退屈だったのか、ウォール街を罰してやりたかったのだ。理由が何であれ、GameStopの株価は上昇した。数日で、40ドルほどから400ドルになった。巨大投資家が損失を被った。しかし、この話の中身は、トレーダーたちの成功ではなく、むしろ株式市場の異常さだ。株式の売買は生産的な投資と関係ない。自社株買いも、以前は違法であった。投機が株式市場を高揚させている。だから巨大な投資機関は空売りなどで利益を得ている。ウォール街の狼たちが犠牲になるのを観るのは楽しいかもしれない。しかし、Redditの変人たちの行動を美化してはいけない。これは「蜂起」ではないし、「金融におけるフランス革命」でもない。プロの投資家たちがしているゲームである。プレーヤーの多くは間違いなく、反動的な政治に与する、不快な人物たちだ。彼らの行動は、市場の狂気に挑戦するものではないし、市場が多くの人々に強いる悲惨さを軽減するのでもない。それは権力に対する現代の挑戦の脆さと示している。