フロリダ州の銃乱射事件でもAR-15クローンが使用された | ジャック天野のガンダイジェスト

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スモールアームズ(小火器)に関するエッセイです。同じアメブロで書いていたブログを継続して、不定期で更新して行きます。

アメリカのフロリダ州オーランドのナイトクラブで、ひとりの男が自動小銃を乱射し、50人が死亡、53人が負傷というアメリカの銃乱射史上最悪の事件になりました。この男性はアフガニスタン系のアメリカ人でニューヨーク在住ということです。両親がアフガニスタン出身で、もともとイスラム教徒ですが、どうやら過激テロ組織のIS(イスラミック・ステート)に共感していたようです。そのため、アメリカでテロを起こすという計画を持ち、実行に移したのでした。現場はゲイ専門のナイトクラブということですが、人が密集しているところで自動小銃を連続発射したため、こんなに大勢の犠牲者が出ることになったと思われます。

というのは、使われた自動小銃はAR-15クローンと呼ばれる、アーマライトAR-15(のちのコルトM16)を単射式にした殺傷力の高い(貫通力の高い)銃だったからです。AR-15は1957年にアーマライト社の設計技師ユージン・ストーナーによって、AR-10の7.62mm口径を5.56mm口径にしたアサルトライフルです。1960年からコルト社でもM16として製造されるようになり、ベトナム戦争でアメリカ軍の主力小銃となりました。この5.56mm弾は現在では5.56mmNATOと呼ばれる5.56mmX45の小口径高速弾で、貫通力が高いのと同時に、弾丸が体内で回転することでダメージを高くします。このM16は軍用としては銃身を短くし、ストックそのほかを改良したM4カービンとなり、現在でもアメリカ軍の主力小銃です。と同時に、いろいろな銃器メーカーがこのAR-15を軍用の連射・単射切り替え式から、単射専用として民間に売り出しています。これらの銃がいわゆる「AR-15クローン」で、下の写真はその代表的なものです。

AR-15クローンはアメリカでは軍用のM16やM4に近いことで非常に人気が高く、一説によると、拳銃よりも売れていると言われます。単射専用になっていますが、テロリストはこれを連射式に改造している場合もあります(2015年12月のカリフォルニア州乱射事件で使われました)。フロリダ州の犯人がAR-15クローンを連射式に改造していたかどうか、まだ確認はとれていません。単射でも、連射でも、交換弾倉(20発または30発装填)を替えれば、連続して乱射ができ、近距離で密集している人間を撃つと、1発が数人を貫通することもあり得ます。そのため、このように多数の犠牲者が出たものと考えられます。