独創的なメカニズムながら、グロックやベレッタに敗れたステアーGB | ジャック天野のガンダイジェスト

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スモールアームズ(小火器)に関するエッセイです。同じアメブロで書いていたブログを継続して、不定期で更新して行きます。

ステアーGBは独創的なガス圧作動方式と弾倉内に9mmパラベラム弾18発を装填可能という軍用拳銃です。この作動方式は第二次世界大戦末期にドイツの「フォルクス・シュトルム・ゲヴェアー(国民突撃銃)」というアサルトライフルで初めて採用され、のちにH&KのP7も採用した独特のディレード・ブローバックです。また、この銃はH&KのP9Sと同じようなポリゴナル(多角形)銃身を採用していて、銃身内部にライフリングは刻まれていませんでした。このポリゴナルバレルはガスが銃身内部で弾頭の周囲から逃げないために、腔圧が高くなり、初速が早くなって威力を増す、という特長がありました。また、多数の銃弾を発射しても摩耗が少ないという利点もあったのです。

もともとGBはステアー社が1970年代にオーストリア軍の軍用拳銃を更新する目的でPi-18という拳銃を計画し、アメリカのステアー代理店をしていたRogak兄弟に試作させたもので、実際にRigak-P18として販売されました。しかし、あまりに独創的な機構だったことと、故障が続出したために、商業的には成功しませんでした。ステアー社は再設計をしてGBとして、故障を減らし、オーストリア陸軍のト次期制式拳銃のトライアルに提出しましたが、Glock 17に敗れてしまいます。つぎに、ステアーGBはアメリカ軍の次期制式拳銃のトライアルにも参戦しましたが早い段階で脱落してしまい、最終的にはベレッタ92Fが選ばれたのは周知のとおりです。

このように数々の独創的機構、とくに発射時の反動が少ないガス圧利用の独特のディレード・ブローバックは高く評価されたのですが、どこの国の軍用制式になることはありませんでした。おそらく、初期の作動不良が大きな原因だったのではないでしょうか。わずかにレバノンとパキスタンの警察で採用されたにとどまりました。

映画では意外と人気があり、クリント・イーストウッド監督主演の「ルーキー」ではベテラン刑事ニック(イーストウッド)のほかに、新米刑事のデビッド(チャーリー・シーン)もステアーGBを使います。


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