サブマシンガン後進国のフランスを象徴するMAS-38 | ジャック天野のガンダイジェスト

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スモールアームズ(小火器)に関するエッセイです。同じアメブロで書いていたブログを継続して、不定期で更新して行きます。

MAS-38、正確にはPistolet Mitralleur de 7.65mm MAS model 38(MAS7.65mmモデル38機関拳銃)ですが、1938年に開発され、1939年から配備されました。いちおうフランス軍に配備されましたが、それほど活躍したという記録はありません。フランスは「サブマシンガン」というカテゴリーの小火器をあまり重要視していなかったのではないかと思われます。第一次世界大戦で、ドイツのベルグマンMP18にあれほど悩まされたのに、この分野には関心がなかったようです。使用する弾薬も7.65mmロング(7.65mm×20)あういは7.65mm×17ブローニングSR、つまり.32口径と威力の低い弾薬を使っています。これではドイツの9mmパラベラム弾を使うマシンピストルに敵うわけがありませんね。だいいち、その頃にはドイツにはエルマMP38という優秀なマシンピストルがあったわけですし、アメリカでさえトンプソンM1サブマシンガンの装備を始めていました。

MAS-38はフランス有数の兵器メーカーであるManufacture d!Armes de Saint-Etienne(サン・テティエンヌ兵器廠)で設計製造されたサブマシンガンで、もっとも単純なブローバック方式を採用していました。弾倉は32発を装填でき、トリガーの直前にありました。ストックは木製で、この時代としてはもう古めかしい感じですね。フランス軍歩兵はボルトアクションのMAS-36小銃とこのMAS-38で第二次世界大戦を戦うことになったわけです。ドイツ軍は1940年にMASの工場を接収し、MAS-38はフランス占領ドイツ軍によって、MP722(f)の名称を付けられて、補助火器として使用したようです。戦後になると、さすがに時代遅れと考えたのか、MAS-38は9mmパラベラムのMAT-49に代替されています。また、小銃もセミオートのMAS-49に更新されています。しかし、戦後になっても、MAS-38は国家憲兵隊や警察によって使い続けられたようです。さすがに陸軍などにはMAT-49が配備され、インドシナ戦争などにも使われたようです。

このように優秀とは言えないMAS-38ですが、フランス映画にはときどき「出演」しているようです。その中でもこのサブマシンガンがふんだんに見られるのが、アラン・ドロン製作、主演の「友よ静かに死ね」原題は「ギャング」、1977年)でしょう。主演のアラン・ドロン(ロベール)のほか、国家憲兵隊(ジャンダルムリ)の隊員たちが全員このMAS-38でロベールと撃ち合います。フランス人は愛着を持っているのかも知れませんね。


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