.357リボルバーの「ロールスロイス」、コルト・パイソン | ジャック天野のガンダイジェスト

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スモールアームズ(小火器)に関するエッセイです。同じアメブロで書いていたブログを継続して、不定期で更新して行きます。

1934年にそれまでの.38Spl(スペシャル)弾よりも強力な.357Magnum(マグナム)弾がエルマー・キースとS&W社によって開発されると、それを使うリボルバーの開発競争が始まりました。S&Wは1955年にS&W コンバット・マグナム(のちにM19となる)を開発しました。.38Splのリボルバーと同じKフレームに.357マグナム用の長いシリンダー(弾倉)を装着したコンバット・マグナムは小型軽量、しかも価格の比較的安い.357マグナムリボルバーとして人気が出ました。これに対して、コルト社は.357マグナムという強力な弾薬にふさわしい強固なフレームと仕上げのいいリボルバーを同じ1955年に発売しました。これがコルト・パイソンであり、銃身上部には「ベンチレーテッドリブ」(放熱用)を備え、また銃身下部にはエジェクターロッド(シリンダーを振り出すための軸)を延長してあり、全体として実用本位のS&Wコンバット・マグナムに対して、優美なデザインで対抗しました。価格もかなり高かったのですが、そのデザインが好きなコルトファンたちは、.357リボルバーの「ロールスロイス」と呼んで、愛用しました。

 

しかし、ベンチレーテッドリブは実際にはただの飾りであり、連射をするわけではないリボルバーには放熱効果は不要だったのです。また、トリガーはコルト独自のクセがあり、トリガープルが重く、ダブルアクションでトリガーを引くと、命中精度が下がりました。このため、パイソンを使うには、シングルアクションリボルバーのように、ハンマーを起こしてトリガーを引く、という方法が命中精度を高めるやり方でした。一部のファンはこのパイソンのトリガーに嫌気をさして、パイソンの銃身をS&Wコンバット・マグナムと組み合わせる、というカスタムメイドを好みました。これはスミス&ウェッソンとパイソンの合体であることから、「スマイソン」などというニックネームを付けられました。ただ、飾りとはいえ、ベンチレーテッドリブの付いたパイソンはたしかに格好が良く、コルトの.357マグナムとしては、高価にもかかわらずにベストセラーになったのでした。

 

この優美なスタイルのためか、コルト・パイソンの「映画出演」はかなりあります。とくに、そのままの原題「Police Python 357」(邦題は「真夜中の刑事」)はイブ・モンタンの刑事がコルト・パイソンをぞんぶんに使います。また、「ダーティーハリー2」(原題はMagnum Force)では、ハリー・キャラハン刑事(クリント・イーストウッド)に対抗する白バイ警官たち(デビッド・ソウルほか)は、ハリーのS&W M29に対抗するように、全員コルト・パイソンを持っていました。実際には白バイ警官はS&Wの.357マグナムリボルバーを持つことが多かったのですが、これは映画制作者のジョークでしょう。また、「マックQ」ではジョン・ウエインがコルト・パイソンを使うシーンがあります。

 

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