9mmパラベラムと.380ACPの中間の威力を持つマカロフ | ジャック天野のガンダイジェスト

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スモールアームズ(小火器)に関するエッセイです。同じアメブロで書いていたブログを継続して、不定期で更新して行きます。

マカロフ自動拳銃(Pistolet Makarova、略称PM)はソ連軍用および警察用として、ニコライ・マカロフ技師によって設計され、1951年にソ連軍制式拳銃に採用されました。全体の構造およびデザインはワルサーPPを参考にしていますが、手袋をしていてもトリガーを操作しやすいようにトリガーガードが大きくなっています。そして、弾薬にはワルサーPPで試験的に採用された9mmウルトラまたは9mmスーパーをアレンジした9mmマカロフ(9mm×18)になっています。この9mmマカロフは9mmパラベラム(9mm×19)ほど強力でなく、.380ACP(9mm×17、9mmショート、9mmクルツ)よりも威力があり、ちょうど両者の中間になっています。そして、それまでのソ連軍制式だったトカレフ(TT-33)よりも小型で、安全装置があり、また貫通力がトカレフほど高くない、ということで使いやすい拳銃としてソ連軍将校に好まれました。

しかし、ロシアになってから、やはり威力のある9mmパラベラム使用で、しかもダブルコラムの多弾数の拳銃が必要だという判断から、マカロフのかわりにMP-443グラッチ(Pistolet Yarygina、略称PYa)が採用されました。このため、マカロフは第一線を退いたわけですが、使いやすい拳銃として、現在でもロシア警察では使われているようです。また、中国では59式拳銃として国産化しています。

日本ではマカロフは悪名高い拳銃になりました。トカレフよりも押収量が多くなったからです。これは軍で不要になったマカロフをロシアンマフィアなどが日本に密輸入しているからだと思われます。町田市のたてこもり事件などでも使われ、最近の暴力団抗争でもマカロフを使う事件が多くなっているようです。暴力団幹部はもっと高価な最新式の拳銃で武装しているようですが、中堅以下はマカロフを持っていることが多いので、抗争に使われるのでしょう。

さて、この9mmマカロフ弾ですが、同じようにワルサーPPの9mmウルトラを参考にしたのが、9mmポリスという弾薬で、やはり9mm×18と表記されます。それまで.32ACPや.380ACPを使っていた西ドイツ警察が、凶悪化するテロリストに対してより強力な銃を採用するためのトライアルを1976年に行い、9mmポリスを使用するSIGザウアーP230も提出されました。しかし、トライアルの結果、9mmパラベラムを使うH&K PSP(P7)、ワルサーP5、SIGザウアーP6(P225)が採用され、9mmポリスのP230は不採用になりました。その後、口径を.32ACP、.380ACPとしたP230が作られ、日本の制服警官の一部では.32ACPのP230JPを使っています。

こうして、9mmマカロフまたは9mmポリスは現在では市販拳銃には使われていません。映画ではソ連軍将校が持っているシーンはいくつかありますが、主人公がPMを使う映画としては、ピアース・ブロスナン主演の007「トゥモロー・ネバー・ダイ」、「ワールド・イズ・ノット・イナフ」があります。


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