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☆まけうまブログ★

徒然なるままに日暮らしスマホに向かひて心に浮かぶよしなしごとを競べ馬の有様とともに書きつらねる自己満ブログ。
前半はよしなしごと、後半はレース回顧。
競馬道は一にも二にも検証の積み重ね。怠ればハズレ馬券が山と成す。

ブログネタ:あなたにとって春は… 参加中

毎年、去る調教師がいて、新人騎手がデビューするこの週。

今年は土日で月を跨いでしまったために大混乱。
土曜は調教師の引退日、日曜は新人騎手デビュー。
土曜まで見習い騎手⇒日曜は減量なし、とか。

通年免許が下りたM・デムーロも日曜から騎乗開始して、マスコミはダービージョッキーすら新人騎手扱い。
同じく通年免許を取得して出馬表に名を連ねていたC・ルメールは調整ルームでツイッターやっていきなり30日の騎乗停止⇒全鞍乗り替わり。

大井では御神本がまたか!の理由で騎乗停止。
天才すぎると一種の奇形となり得る典型なのか。

春嵐のごとき競馬の世界に、馬場をぬかるませる大粒の雨が降り注ぐ日曜日。
あくまでも静かに…


新人騎手なんてデビューしてみなきゃどんな玉かさえ普通はわからないが…
時々とんでもない器がいる。

[大好きな渡辺美奈代ちゃんに喜んで貰える騎乗をしたいです!]

なんだこいつは?とデビューする前から思った騎手はこの男だけだ。

夕ニャンのエンディングで自分のソロ曲を歌っている最中に謎の大号泣したのが忘れ難い、おニャン子クラブ会員番号29番・渡辺美奈代。
美奈代の{み}の字は{みんな}の{み}

デビューの抱負を、臆面もなく渡辺美奈代に捧げてしまうこの新人、ただのアホなのか、それとも得体の知れない大物なのか…

小野次郎騎手で福島記念に登録していた大和田厩舎のシルクグレイッシュ。
ハンデ50㎏だけに乗れる騎手は限られている馬。
それが次郎さん落馬負傷で当日の乗り替わり。
あいつが乗るのかよ、と苦笑いしていたら…
重賞初騎乗で勝っちまいやがった!

その後は自厩舎のオープン馬ツルマイナスで時々いい競馬を見せながら、肝心な所は柴田政人騎手に乗り換えられ、結局お手馬にならず終い。

師匠とも喧嘩して、厩舎を飛び出し、泣かず飛ばずの日々が続く。

そんなある年、彼はアメリカに腰を据えて修業すること決意する。
[まだ時期が早い!もう少しこっちで足元を固めてからにしろ]とノリさんに嗜められ、[行きたきゃ勝手に行け]とエビちゃんに突っぱねられながらも、B型の一途な決意と集中力で渡米を強行する。

中央競馬の騎手だから金持ってんだろ、と思いきや…
アメリカでは毎食ハムを挟んだだけのパンを食ってしのいでいたほどの貧乏暮らし。
調教を手伝いながら、ようやく少しずつ競馬に乗せて貰えるようになり、彼は自身のスタイルの中にアメリカ流の競馬を身につけてゆく。

ごく簡単に言えば、好スタートからいい位置に付け、腕っぷしでギチギチに馬を抑え込み、最後に追っ放す競馬。

誰もがそういうスタイルの競馬をする。
だからどんな少頭数でも隙がない。

長手綱で折り合って、なだめて終いを生かすスタイルの競馬が王道の日本の中央競馬ならばロスを覚悟で動いていけるが、アメリカではペースそのものよりも意志がレースの流れを支配してしまうからだ。

そこで揉まれたことで、彼はアメリカの競馬スタイルそのものを武器として身につけ、帰国する。

それからまもなく彼の覚醒が訪れる。
重賞を勝ちまくり、インタビューに登場するたびに、奇行を繰り返す。

日の丸に[神風]の鉢巻きを締めてテレビの前に現れ、[昔、特攻隊でつらい想いをした戦争世代がいるんだからやめろ]と関係者に窘められると、翌週も重賞を勝って、今度は[そよ風]と書いた鉢巻きを締めてテレビの前に立っていた。

見せかけは茶化しだけど、今にして思えば凄まじい反骨精神という他ない。

ただ、そのインタビューはもはや見るたびにげんなりするレベルで…
中京の馬券野郎は[またやってるよ、バカ後藤が]と毒づいていたし、自分は自分で[あんなことやってるうちはGⅠなんて勝てそうにないな]と半ば呆れていた部分もあった。

確かに当時の彼は何かしらの不安定要素を持っていた気がする。
シンコウノビーでは初GⅠのチャンスを見事に飛ばしてしまうし、リーディングを脅かす地位まで来て、あの難しいステイゴールドを難無く乗りこなして圧勝させておきながら、ナリタトップロードを転ばして失格になってみたり。

一流と呼ぶには何かが決定的に欠けているのだ。

だが真剣なインタビューの時の後藤浩輝は、これほど競馬に対して真摯でストイックな男は他にいない。
プロ中のプロとも呼ぶべき姿しか見えて来ない。
納得いかなければ厩舎関係者も怒鳴り散らすし、自分をもひたすら突き詰めてゆく。

しかしテレビの前に出て来るチャラい後藤浩輝は一体何者なのか?
今にして思えば、それが同じくらいのレベルまで突き詰められた彼一流のファンサービスだったのだと想いを馳せられるけれど…

要はそういう正反対の要素が、騎乗と人格の中で統一され切っていなかった姿が、時折やらかす大ポカに片鱗として覗いていた気がする。

彼の初GⅠ勝ちはゴールドティアラの南部杯、相当地味だ。
それでも後藤もついにGⅠジョッキーになっちまったか、という感慨はあった。
評価の定めにくい騎手だけど…
目に見える部分も、見えない部分も、着実に進化して、きっちりと[勝たせることが出来るジョッキー]になったのは間違いなかった。

その時期、後藤だからこそ復活させたのだ、と確信を持って思えたのが東京新聞杯のアドマイヤコジーン。
それ以降のこの馬の安定感、騎手とのマッチングは比類のないものだった。
微妙に守備範囲外の1200でもあれだけの競馬をさせたのだから、東京1800で重賞勝ちのあるGⅠ馬にとって、安田記念以外に完全復活の舞台はない。

中央GⅠ初制覇となった安田記念での後藤浩輝の騎乗は、彼自身のハートの強さと安定感をこの大舞台で不動のものにした瞬間だったと思う。

[後藤くんが中央でGⅠ勝ってないなんて知らなかった。知ってたら乗せなかった]

とか言いつつ、愛馬の復活に号泣しながら騎手と抱き合う近藤利一オーナーにしても、他に乗せるべき騎手など思いつかなかったに違いない。
後藤浩輝とアドマイヤコジーンのコンビは、武豊に変えてすら役者不足に思えるほど盤石不動の安定感を示していた。

喧嘩別れした師匠の管理馬ローエングリンの背中にもいつしか後藤がいた。

自分が後藤浩輝という騎手を本当の一流として認識するようになるのはその頃からだ。


度重なる不運な落馬事故は、確かに彼の人生を変えてしまった。

そのたびに不死鳥の如く蘇る姿に、ファンも喝采を送り、関係者も騎乗を応援し続けた。

哲三さんの負傷で回って来たエスポワールシチーの騎乗を見れば、騎乗技術は円熟味すら増していた。
昨秋の復活以降も、目立つ舞台でこそ活躍していないけれど、それは単に巡り合わせにすぎず、衰えは微塵もない。
騎乗だけを見れば…

ただ一つだけ気に掛かっていたことがあった。
それはあくまで感覚的なものであり、他人に説明することは極めて難しいのだが…
復帰後の後藤浩輝の不思議なまでの影の薄さだった。
勝っているし、乗れてなくもない。

なのにこと競馬の中で時々影すら見えないほど透明になってしまっている。
その異様な違和感だけは、どこかで常に感じ続けていた。

誰にも触れようがない心の中身。
ただ想像力を働かせれば、自分のことに置き換えて感じ取れる所までは行き着ける。

不死鳥の如く蘇るための不撓不屈の努力は、復帰という目的を達するまでは、張り詰めた気持ちを維持できる。
まず1勝、それから順調に騎乗数も増え、勝ち星も積み重ねてゆく。

おそらく体も以前のようには動かない。
そのもどかしさと戦いながらも、技術でカバーできるだけのものを後藤は身につけている。
だから誰も異変に気付かないくらい活躍できていた。

けれど、それを支えるのは精神力だ。
どん底を味わって、なお張り詰めた精神状態を維持し続けるのは、並大抵のことではない。

パニック障害の影響で自分は一度も復帰後の後藤の生の騎乗を見ていない。
競馬場に行ってないからだ。
思うように自分の体が動かない…精神力だけではどうにもならない。
そう思うたびにどれだけ心が折れそうになるか。
それだけはわかる…自分にも。

後藤が復帰した頃に、ディック・フランシスの[敗者ばかりの日]という短編を読んでいた。
競馬が怖くなった騎手の心理を描き出した、フランシスでなければ書き得ない作品だった。
読みながら、ふと何度も後藤騎手のことを思い出していた。

本当に大した男だな、と感嘆しながら。


前週のダイヤモンドSの事故は、自分の負傷も、馬が予後不良になったことも含めて、単なる衝撃ではなかったはすだ。

後藤浩輝がプロ中のプロであるが故に、自分が被害者(馬)だから良しとは絶対にしない。

なぜ自分は毎回被害を受ける位置に[いてしまうのか]…
以前のように思うように体が動けば回避できたかもしれない…

南関東のようにほぼ毎日競馬せざるを得ない騎手と違って、中央の騎手には何かを考える時間の余裕がありすぎる。

自分の復帰を支えてくれた無数の人達がいる。
その証がこの土日の15鞍の騎乗依頼。

プロであるが故にその期待に弱音は吐けない…絶対に。

目前の15鞍を自分は本当に無事に乗りこなせるのだろうか?

15鞍も…あと15回も…

[敗者ばかりの日]の騎手は自分につぶやく。

[俺にはやれない、と思った。とうていやれない]

この騎手はそんな状態でグランド・ナショナルに出て、あろうことか完走し、1着になってしまう。
そしてうっかりミスの斤量不足で失格になるのだが…

客観的に見ればコミカルにすら見える出来事が、フランシスの描く騎手にしかわからない恐怖心理を通して、異様なリアリティを持って迫ってくる。


この街と、美浦や阿見は同じエリアのほぼ隣町。
あの木曜日は冷たい雨が一日中降り続いていた。
すぐそこまで来ている春を感じられないもどかしさの降り注ぐ憂鬱な一日。

こんな天気が弱った心には意外に陰を落とす…
明るくはしゃいだり楽しんでいても、陰は余計に濃さを増してゆくこともある。
岡部さんが突如引退を決意したのも、こんな憂鬱な雨の続く2月だった。

その雨が21時頃に突然止んだ。
雨に濡れた街路が静かに街明かりを反射して、忘れ難いまでにまぶしく光っていた。


正しいとか間違ってるじゃなく…
自分は心のどこかで思っているんだよ。

君は自分の命を投げ打つことで、15頭の馬とそれに関わる人達を大事故の悲劇から守ろうとしたんじゃないかと。

最後まで名騎手だった後藤浩輝。
リワードニンファとアドマイヤコジーンの単勝、ありがとう☆


この土日、誰よりも気にかかったのはもちろん岩田康誠。
今の岩田なら大丈夫だと思ってはいるけれど…

思った通りの理想的な位置を取ったロゴタイプを軸にレースは流れる。
イスラボニータは掛かっているが許容範囲で御し切れてはいる。
その証拠に外目からロゴタイプを徹底マークの位置だけは絶対に崩さない蛯名さん。
形の上では、いつでもマッチレースに持ち込む態勢に見えるのだが…

何か違う…と気配で感じる。レースを支配している気が全然違う場所にあるのだ。
それを発しているのは、その後ろのインにビタ付けしているヌーヴォレコルト。
その2頭すら丸呑みにする異様な気迫を漂わせた岩田の姿だった。

直前に向いて王道の競馬で先頭に踊り出るC・デムーロとロゴタイプ。
射程圏に入れながら、掛かった分だけジリなイスラボニータ。

だが、そんなもん全部お構いなしに炸裂寸前の気を放って、ひたすらインに食らいつく岩田。
ロゴタイプの内しか見ていない。
オークスでも馬群を全く苦にしなかった根性の塊の如き馬。
外に出す気など一切ない。
絶対に勝つ…こじ開けてでも最短距離を食い破って出る。

ゾクッ…鳥肌が疾った。

勝つことでしか天国の後藤に届けようのない岩田の心の叫び。
迷わず突撃する魂がヌーヴォレコルトを奮わせ、狭い進路を切り裂き、土砂降りの中山に炸裂する。

背中が震えて…涙があふれた。