11鞍 (中山グランドジャンプ) | ☆まけうまブログ★

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徒然なるままに日暮らしスマホに向かひて心に浮かぶよしなしごとを競べ馬の有様とともに書きつらねる自己満ブログ。
前半はよしなしごと、後半はレース回顧。
競馬道は一にも二にも検証の積み重ね。怠ればハズレ馬券が山と成す。

暮れの大障害では山本に乗り代わっていたマジェスティバイオが、柴田大知に手綱が戻ってグランドジャンプを勝ち、これで騎手はマイネルネオスに続いて連覇ということになるのか。

年間0勝も経験した柴田大の確変が話題になっているが…
少し前から、すげぇなと折に触れて思っていた。
阪神のオープンとかでひっそりマイネルの関西馬に乗っていて、しかも何だか混戦を制して頭まで突っ込んで来たり。
[こんな馬でも勝たせてしまうのか]
ちょうど電話して来た馬券野郎が絶句していた。

とはいえ、天才福永の息子、中央初の女性騎手、そして双子騎手と話題満載の新人の中でも、デビュー当時の柴田大知は結構乗れてた…上手いとかじゃなく、騎乗に恐いもの知らずな勢いがあったよね。
弟の未崎が、下り坂だった高木厩舎所属だったのと対象的に、兄の大知は全盛期の栗田厩舎でデビューした。
師匠のバックアップもあって、横山典弘や田中勝春、柴田善臣、四位洋文といった栗田厩舎の並み居る主戦騎手に割って入り、早くもエアガッツで重賞勝ちを果たしている訳だが…
そこに[弾けすぎてしまった]当時の大知の印象が今も残っている。

[勢いはあるけど、うまくないだろ]

関東新人賞を取った池田鉄平という騎手がいたけど、全然上手くないのになぜかいい馬が回って来て、なんだか勝ち星だけ積み重なってる不思議な存在だった。
むしろ、春先の中山でデビュー組のレースを見て、[あのアンチャン乗れるな]と横にいた馬券おやぢと一緒に絶賛の声を上げた相手は、同期の村田一誠の方だった。
未だに地味ながらも、村田は西田とともに新潟千直のスペシャリストという地位を築き上げた。

おそらく乗れる新人にありがちな勘違いからフリーになり、騎乗馬大激減。
それが柴田大、池田の共通項だったのだろう。
池田は、後に小島茂厩舎のバックアップで奮起して、畠山重厩舎のオープン馬ヤマタケゴールデンの主戦になった。真っ先に馬券から外してた下手くそだったけど、そんな頃の池田をさりげなく応援していた。
JDDの日に[大井の馬場状態を返し馬で見るような工夫がない]と競馬研究の竹内が批判していたように、頑張っていても、何か詰めが足りなかったのだろう…結局突き抜け切れずに池田は引退した。

未崎は地味ながら、少しずつ騎乗を増やしていた。
900万下にいた頃のファストフレンドの主戦を務めていたのも覚えている。
言わずもがなの後のG1馬である。
しかし、大知の方は、デビュー当時の弾けっぷりが消えて、全く存在感のない騎手になっていた。
あまり関係ないが、シンコウシングラー斤量事件を境目に、オープン馬の宝庫だった栗田厩舎も同じく斜陽の時代に入る。

この頃になると、外国人騎手の参戦や地方騎手の移籍で、若手や中堅に乗り馬が回らず廃業する騎手が一気に増えていた。
そんな中、早くから障害に乗っていた未崎に続いて、大知も障害に乗りはじめたのには驚いた。
平地での騎乗を見ることも滅多になくなり、障害の経験を積むことに専念していたように思う。
しかし、関係者の評価は手厳しく、[柴田大じゃ乗りこなせない]と新人に毛の生えたような騎手に乗り代えられてしまう始末。
まもなく引退する騎手に、いつ柴田大知が入ってもおかしくないな、と思っていた…本当に失礼な話だけど。

いつのまにか弟の未崎は引退してしまったが…
この前の土曜日、自分の眼で見て明らかに[乗れてる]今の柴田大知が中山で何鞍乗ってるのか、ふと気になって数えてみた。

11鞍…

普通一日11鞍乗るような売れっ子の場合、大抵は障害以外の全レース。
しかし柴田大が乗っていなかったのは、平場の7レースか何か、その1鞍だけだった。
で、この日の障害戦はメイン11レースの中山グランドジャンプ。
もちろん勝ったのは柴田大知騎乗のマジェスティバイオ。
全く危なげない圧勝。
平地でも1つ勝ち、翌日も勝って、皐月賞は4着まで持って来た。

年間0勝だった騎手に、しかも中央場所の中山で一日11鞍も乗る日が訪れたことなど今までにあっただろうか?
ただ乗るだけでなく、勝ち負けになる馬も頼まれている。
結果も出している。

それはそうだ、今まで辞めずに乗り続けている、福永や和田と同期の大ベテランなのだ。

勢いで勝ちまくる若手や、同じマイネルの馬で丹内辺りが見せるドタバタした騎乗とまるで次元が違う。
本当に落ち着いて乗っている。安心して買える。
今の柴田大知の騎乗を間近で見ている現場の人間が依頼を出さないはずがない。
ある意味、熊沢や田中剛、小島貞といった障害平地を問わぬ名人にもなし得ない、今までの通例を破壊した存在として、今の柴田大は屹立している気がする。

[下位でくすぶっている騎手が這い上がる方法はありますか?]
ライター鶴木遵の質問に、我が敬愛する伊藤雄二調教師は即答している。
[ありますよ]

しかし、これほど見事にそれを実践し、這い上がった騎手が現れるとは。
しかも、このジョッキー受難の時代に。

それは紛れもなく、すごい事実だ。