今日の読書記録は、薬丸岳さんの『天使のナイフ』です。
少年犯罪の加害者と被害者、その周りの人々の視点で語られる社会派ミステリーです。
生後五ヵ月の娘の目の前で妻は殺された。だが、犯行に及んだ三人は、十三歳の少年だったため、罪に問われることはなかった。四年後、犯人の一人が殺され、檜山貴志は疑惑の人となる。「殺してやりたかった。でも俺は殺していない」。裁かれなかった真実と必死に向き合う男を描いた、第51回江戸川乱歩賞受賞作。
少年法は誰のためにあるのか。
自分を疑惑の的にさせた殺人者は誰なのか。
そういった問題提起を繰り広げるのが前半です。
人物どうしのつながりをしっかりと把握するために人物相関図を書きながら読むのがおすすめです。
後半からはジェットコースターのように物語が展開していきます。速さに驚いて読んでいくとあっという間に物語に引き込まれ、どんどん読み進めてしまいました。
現実性は薄いです。
運命と偶然が重なって人々が交錯することは現実ではあまりないのですが、あくまで小説なので、現実味がなくても気にならなかったです。物語のテーマが『少年法』なので、現実味が薄い方が安心して読めるのではないでしょうか(?)。
この物語を一度読んだあと、「もう一つの物語」に注目して読み直してみるのもおすすめです。
メインテーマは非常に重いものですが、ミステリーとして完璧で、物語の構成や人物描写に引き込まれてしまう作品なので、一気読みする時間がある時におすすめの一冊です。