今日の読書記録は、アガサ・クリスティーの『鏡は横にひび割れて』です。
『どうして事件が起こされたのか?』を推理する傑作です。
〈あらすじ〉
新興住宅地が作られ、セント・メアリ・ミードの風景もどんどん変わってゆく。だがミス・マープルの好奇心だけはいつも変わらない。有名女優が村に引っ越してきて、いわくつきの家に住み始めた。その引っ越しパーティの席上、招待客が死亡してしまう。永遠の名老婦人探偵マープルが謎に挑む。
この作品は、「どうして事件が起こされたのか?」にスポットを当てています。誰が事件を起こしたのかは見破りやすいのですが、この事件の真相は全く推理できませんでした。
一読してから読み直してみると、作品のあちこちに伏線が張ってありました。(人々のちょっとした会話や変わりゆく村の様子にも伏線が張ってあります。)
『トリック重視』のミステリーだと、取ってつけたような納得のいかない動機のものが多く見られます。
この作品のトリックは平凡ですが、事件の動機はとても共感できるものです。
登場人物と事件が当てはまり、それまでの疑問が解けていく様子が鮮やかで、登場人物ひとりひとりの性格や出来事が把握しやすいのもいいところです。
また、「時代の変化」「幸せの定義」「老い」など、とても身近なテーマが盛り込まれており、読み終わってから色々と深く考えさせられた作品でした。