俺はハルさんと葵さんと・・・
あの楽しかった頃に戻りたかった・・・
ある夜・・・
ハルさんを捜しに出かけた。
目的はハルさんに楽しかった頃を思い出させること。
ネオンが輝く繁華街でハルさんを見つける。
知らない女性と腕を組んで歩いている・・・
かなり酔っている様子だ。
俺はハルさんに駆け寄り、おもいきりブン殴った!
なぜか腹が立ったんだ・・・
ハルさんが怒って叫ぶ!
「いきなり、何しやがんだ!」
俺はハルさんに思いをぶつける。
「あんたこそ、何やってんだよ!」
「誰だ、その女!」
ハルさんと一緒にいた女性は「じゃあね」と言い、早々とその場を去っていった。
しばらく睨み合っていると、パトカーのサイレンが聞こえてきた。
ハルさんは「おい!逃げるぞ!」と言って起き上がり、俺はハルさんについていった。
走り疲れた頃、とある居酒屋で話すことになった。
俺は自分の思ってること言った。
「葵さん、毎日さ・・・寂しさに耐えてひとりでいるよ?」
「なんで葵さんを支えてあげないんだ?なんで一緒に居てあげないんだ?」
「葵さんを守るって誓ったんじゃないの?」
思いを全部ハルさんに、ぶちまけた。
しばらく黙ったままのハルさんが、静かに口を開いた・・・
「必死に支えたさ・・・」
「でもな・・・葵の姿、見てらんねぇんだよ」
「拙者だってな・・・辛いんだよ・・・」
「自分でも、どうしようもねぇんだ」
俺は反論した。
「あんた、そんなに弱かったのかよ?」
「俺の憧れた男はそんなもんだったのか?」
俺は心がボロボロになったハルさんに、追い打ちをかけていた。
ハルさんが怒りを露わにして強く言う!
「おめぇに何が分かんだよ?分かってたまるか!」
「帰れ!クソガキ!」
俺は、もう何言っても無駄だと悟った・・・
そして、その場から離れ帰ることにした。
辛くて、悲しくて、苦しくて・・・怒りで震えていたんだ・・・
それから、ハルさんとは少しギグシャクしてけど、仕事中はいつも通り接してくれた。
そして今度は・・・
俺は葵さんの所へ行ったんだ。
仕事が終わりハルさんの住むアパートに行くと、ハルさんがスーツに着替えていた。
着替え終わるとハルさんは
「ちと飲みに行ってくる・・・」
と言う。
葵さんは「うん」とだけ言う・・・
もう夫婦の楽しい会話などなかった・・・
部屋には葵さんと俺の二人きりなった・・・
俺は葵さんに話しかけた・・・
「ねぇ葵さん・・・辛いのは分かるけどさ・・・元気だそうよ!」
「よければ俺付き合うから、一緒に食事に出かけない?」
葵さんは俯いたまま答える。
「ありがとう・・・でも、ごめんね。そんな気分じゃないの」
俺は黙ることしかできなかった・・・
俺はどうしたらいいか分からなくなっていた。
葵さんは、このとき24歳の誕生日を迎えていた。
相変わらずキレイで・・・昔とぜんぜん変わらない容姿をしていた・・・
俺は何がなんだか分からなくなっていた。
そして・・・
うなだれて座る葵さんを後ろから抱きしめ、ソファーに押し倒していたんだ。
「いやだ!やめてよ!T.Sちゃん、やめてよ!」
と葵さんが必死で抵抗する・・・
でも、俺は葵さんを好きな気持ちが抑えきれなくなって・・・
暴走していたんだ。
葵さんのシャツのボタンは外し下着をはぎ取り、力任せに服を脱がして行く。
そして全裸にしてしまう。
俺は頭で考える前に言葉を発していた。
「俺、葵さんを初めて見たときから好きだったんだ!」
「今でも好きだ!」
葵さんは
「えっ?」
と驚く顔を見せる。
そして、俺に馬乗りになられたままの葵さんは、予想を超えた言葉を発する・・・
「いいよ・・・好きすればいいよ・・・」
「それで気が済むのなら、わたしのことを好きにすればいいよ」
「その代わり・・・事が済んだら出てって!」
「そして、わたしの前に二度と姿を見せないで!」
「その条件が飲めるのなら・・・気が済むようにすればいい・・・」
そして葵さんの目からひとすじの涙が頬をつたう。
俺は、その葵さんの言葉にハッと我に返った。
葵さんの裸は、とてもキレイで輝いて見えた・・・
スベスベの肌で柔らかかった・・・
体毛が少なく・・・少女のようにキレイだった・・・
葵さんは、俺の良心に問いかけ、賭けに出たのだった。
そして見事に、その賭に勝ち、俺の暴走を止めてくれたんだ・・・
俺は傷ついてボロボロな心の葵さんを、更に傷つけようとしていたことに気づいた。
そして、この美しい体に俺の手で汚してダメなような気にさせられるほど、神々しく見えた。
俺は葵さんの上からどいて、後ろ向きに座り俯いたまま、
葵さんの顔を見ることができなかった・・・
俺は「葵さん、ごめん。俺どうかしてた・・・」と謝罪した。
そうすると全裸の葵さんが、俺の前に来た・・・なぜか葵さんは笑顔だった・・・
そして、そっと俺を抱きしめてくれた。
そして葵さんの抱きしめる力が強まってゆく・・・
そして静かに葵さんが話始めた。
「ごめんね・・・」
「いつも心配してくれてたんだね」
「今日のことは誰にも言わないわ・・・半分はわたしにも責任あるしね・・・」
「心配かけて、ごめんね。わたし前に進むよ・・・」
「叶がゆっくり安心して眠れないもんね・・・」
「明日から前に進む。約束する・・・」
「T.Sちゃんを、おかしくしてしまったのはハルとわたしのせいよ」
「だから・・・気にしないで」
俺は裸の葵さんの胸に顔を埋めて声を上げて泣いた・・・
その感触は忘れもしない。
まるで母親の腕に抱かれているようだった・・・
そして俺は子供のように泣きじゃくった・・・
葵さんは服を着て、俺を見送り、そして俺は家に帰った。
次の日、葵さんに「ハルさん連れてきて」って頼まれた。
そして葵さんの前にハルさんを連れて行った。
そして葵さんが衝撃の言葉を放つ。
「ねぇハルちゃん。子供作ろう!もう一度やり直そう!」
「もう一度、わたしを支えて!わたしもハルちゃん支えるから!」
「だから、ねっ?・・・」
「今まで、ごめんね・・・」
ハルさんは黙って葵さんを泣きながら抱きしめた・・・
「そうだな・・・やり直そう」
と何度も呟いていた。
俺は葵さんの言葉に赤面していたのを覚えてる。
あの美しい裸体を想像してしまったから・・・
ハルさんが羨ましかった・・・
そして誰が何を言ってもハルさんを救うことができなかった。
でも葵さんの、たった一言でハルさんの心は復活してしまった・・・
二人の絆の深さのすごさに、誰もこの二人の間には入れないと悟った。
そして俺の暴走を、受け入れようとすることで止めてくれた葵さんに、感謝した。
俺もにも、いつか・・・そんな女性が現れるんだろうか?と漠然に考えていた・・・
修復不可能と思われた二人は、こうして修復された。
俺の暴走が、良い方向へと偶然にも導いた形になった。
とても威張れることをしたわけではないが、葵さんが心を取り戻してくれたからの賜だと思う。