宗二さんが亡くなり、しばらく経ったある日・・・

 

ハルさんに事故が起こった・・・

 

仕事中に起こった事故です。

 

地上より3m下、土を掘削した穴の中での作業中のことでした。

 

その穴の中で、ハルさんと俺が作業をしていた。

 

作業を終えた、その時・・・

 

土の壁が崩落する兆しがあった・・・

 

ハルさんは俺の安全帯というベルトのフックに、

 

ユンボ(ショベル建設機械)のフックに繋げたワイヤーを掛ける・・・

 

俺は即座に地上に引き上げられた。

 

その時!

 

土の壁が崩落・・・ハルさんが生き埋めになった!

 

地中では地下水が沸き、水中ポンプという機械で水を汲み上げてはいるが、

 

下には水もある・・・崩落した壁の2tもの土が、ハルさんを押し潰すのが見えた・・・

 

俺は叫んでいた・・・「ハルさああああああああああん!」って・・・

 

 

 

 

 

 

俺を含めた作業員全員が、周りの制止を振り切り、

 

崩れた穴にスコップを手に飛び込んでいた。

 

二次災害の恐れがある・・・全員にワイヤーが結われた。

 

そして、土を掘り出す中、ハルさんの安全帯ベルトのフックが見えた。

 

その安全帯ベルトのフックにワイヤーを掛けて吊り上げ、ハルさんの体を地上に上げた。

 

すでに別の人間が救急車を要請していた。

 

すでに事故から15分が経っている・・・

 

呼吸もしていない・・・

 

慌てて救急車に乗せられ搬送される。

 

 

 

 

俺は残った作業員に指示を出し、搬送先の病院に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハルさんは心肺停止の状態だった・・・

 

俺は、この状況を信じたくなかった・・・

 

「誰か嘘だと言ってくれ・・・」「夢なら覚めてほしい・・・」

 

こんなことを思っていた。

 

 

 

 

しばらくして、会社から連絡が行ったようで、トクさんと真美さんが息子と娘を連れ、

 

病院に飛び込んできた。

 

真美さんが即座に、俺に言う。

 

「何があったの?ねぇ?説明してよ!」

 

俺は「ごめん・・・真美ちゃん・・・」

 

こう言って状況の説明と過程を説明した。

 

すると真美さんは、その場に座り込んだ・・・そして泣き出す・・・

 

「こんなことが・・・ねぇ嘘って言ってよ・・・この子達どうすんの?・・・ねぇ?ねぇ?」

 

俺は黙ることしかできなかった・・・

 

ハルさんが命を取り止める可能性は・・・・ほとんど・・・

 

いかに強靱な肉体を持つハルさんでも、自然の力には適わない・・・

 

そんなことは分かっていた・・・だけど心のどこかで奇跡を信じていたんだ・・・

 

トクさんが、息子Tと娘Kの肩を抱き、こう言った。

 

「ハルは並みの男じゃねえ!みんなが信じてれば、必ず息を吹き返す!」

 

「信じよう!ハルを・・・」

 

子供達も真美さんも俺も頷いた。

 

そして、この後トクさんは「ちょっと連絡してくる。おまえらは、ここにいろ!」と言って、

 

どこかに行ってしまった。

 

 

 

後々知ったことだが、ハルさんには双子の兄がいた。

 

生まれてすぐ養子に出されたそうだ。

 

その双子の兄は北関東に在住で、その双子の兄に連絡を入れに行ったようです。

 

結局、そのハルさんの双子の兄には連絡が取れなかったそうです。

 

このとき、あちらさんも取り込んでて大変だったみたいです。

 

ハルさん自身も、自分が双子で兄がいるなんて知らなかったみたいです。

 

 

 

 

俺たちは手術室の前を動かなかった。

 

トクさんは会社に連絡し、作業員たちは事故の事情聴取を終えたら

 

「会社で待機しろ!」と指示してくれたみたいだ。

 

なにかあったら、すぐ連絡すると条件を付けて・・・

 

トクさんが連絡を済まし、俺たちの所へ戻ってきた。

 

そして・・・息子Tが妹のKを抱きしめ、妹を励ましていた。

 

真美さんは手を組んで祈っている・・・何も言葉を発しない。

 

俺も現状を受け入れられないでいた・・・信じられないって想いで支配されていた。

 

トクさんも黙ったまま長椅子に座る。

 

 

 

そこに美香さんが飛び込んできた。

 

美香さんは真美ちゃんと息子Tと娘Kを抱き寄せ・・・

 

そして励まし続けた。とても気丈に・・・

 

 

 

 

そして、俺たちの前に病院関係者が現れ、こう告げた。

 

「心臓は動き出し呼吸も始めました!もう峠は越えたようです」

 

と言って深くお辞儀をして微笑んで、その場を去った。

 

 

 

俺は、その言葉を聞いたとき・・・涙が溢れた。

 

その場にいた全員が涙していた。

 

そして、抱き合って喜んだ・・・

 

さすがハルさん!・・・

 

トクさんが言ったように、並みの男ではなかった!

 

奇跡を起こしてくれた。

 

必死に処置してくれた病院関係者に、心から感謝した。

 

 

 

処置をした医師の話も聞けた。

 

「患者さん大した人です!並みの生命力じゃないですよ!よく、がんばってくれました!」

 

「ですが、全身ありとあやゆる箇所を骨折しています!筋肉の損傷も激しいです」

 

「せっかく、こんな状況から生還したのですから、まだまだ安静です」

 

「今は骨折などの処置をしていますので、もう少し手術に時間がかかります」

 

「ほんとに奇跡ですよ!」

 

と話してくれた。

 

トクさんは会社に連絡をしに行ってくれた。

 

電話口では、全員が歓喜していたそうです。

 

 

 

 

そして手術を終え病室にハルさんが運ばれた・・・でも、意識はまだ戻らない。

 

このとき、真美さんと美香さんに聞いたのだが、

 

葵さんと亡くなった息子の「叶」、そして宗二さんに、「ハルさんの命を救って!」っと

 

祈っていたと聞かされた。

 

もしかしたら肉体は失ったけどその三人の魂が、

 

ハルさんをこの世に留まらせたのかもしれない・・・・

 

・・・ハルさんは見えざる者に守られている・・・そう思った。

 

 

 

その後、俺たちは・・・葵さんと叶、そして宗二さんのお墓に出向き、

 

御礼を言いにお参りしに行った。

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日、ハルさんが目を覚ます。

 

そして「生きてたんだ・・・」と一言。

 

俺たちは溢れ出る涙を止めることができなかった。

 

嬉しくて・・・

 

心からホッとした瞬間だった。

 

真美さんが目を覚ましたハルさんに、「心配させんなよ」と泣きながら言い、

 

ハルさんの顔を抱きしめたのが印象的だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く