年末のブッククラブでは映画にもなった「ある男」(平野啓一郎)を読んだ。

 

主人公の若い男は、ある村にやってきて林業の職に就く。同時に文房具店を営み、この村に出戻りのシングルマザーと出会い、結婚する。

 

この男は家業を継ぐか実家で揉めて以来、両親や兄とは疎遠だと言う。そして、仕事中に木が倒れ、下敷きになり戻らぬ人に。

妻は彼の実家に連絡しようにも連絡先が分からず弁護士に依頼。そこで分かったのが、(実在した)別人の名前とエピソードを語っていたこと。そのアイデンティティは犯罪やID売買のステップを経て、手に入れたものだと言われる。

 

困惑する妻。中学に上がる年齢の長男に話すか悩んだが話してしまう。

この長男は読書好き。その時に読んでいたのが、芥川龍之介の「浅草公園」。

妻がこの本を手に取るが、意味不明な内容だった。それが、ぼんやりとした不安、となる。

 

「ある男」を読んだ後、皆で次の本を迷っていたが「それなら「浅草公園」を」となり、読んでみた。

たった20ページの本なのに奇怪難解。浅草ですれ違う人々を見たまま書いた、としか言いようがない。

「浅草公園」の主人公、ぼんやりとした不安があり、通りがかりの人々を片っ端から想像で批判する。
ただ、それだけの話。これ、芥川ではなかったら、出版されていないかも。。。
 
私の感想は「芥川の末期だったことが垣間見れて興味深い。年上の友人が「昔は猿や障害者を見世物にして、東京のストリートにいたのよ」と言っていたことを思い出す。平野啓一郎がこの本に目をつけたのはピンポイント過ぎて、彼の引出しの多さに驚いた。」

メンバーの感想は「白黒の幻灯映画をみているようで場面がぱっぱっと変わるのが何とも面白いというのか奇妙というのか」「芥川の自殺の三ヶ月前に書いたものというのがわかる気がしました。話の辻褄が合わないのも、そのせい?」「今日の私のキーワードは「ぼんやりとした不安」でした」