相変わらず、お味噌汁を1日おきにホスピスに持参する日々。今回の同僚の入院は、考えさせられることが多い。彼女はひとり暮らしで持ち家2軒と犬2匹。


彼女の親しい友人が「癌が再発していること、家族に言ってないらしい」「え、なぜ?」「でも、もう…(先が長くないと言えず、言葉に詰まる)」。


最悪の状態になった時、友人や私や上司が決断する法的効力はない。家族と彼女が前もって話合っておくのが理想的。多分、そういう事はしていないし、私達も言いずらい。上司は再発さえ気づかず、少し憤慨していた。

 

彼女は台湾出身だけど、いとこがLAにいる。幸い、親しい友人の一人が連絡先を持っていた。そのいとこはびっくりして、台湾の弟さんに電話し、二人が急遽やって来てくれた。

 

頚椎に転移しているため、手足は動かない同僚だが頭は冴えているので、「なぜ、こんな場所に来たのか!誰が家族に連絡したのか!」と大喧嘩になること間違いなし、と救急に連れて行った友達が仲裁に入る覚悟。私は丁度帰る準備をしていたので、心配ながら退室する。

 

不幸中の幸いか抗うつ剤を飲んでいる同僚は、嫌な顔をあらわにしたそうだが、喧嘩にはならなかった、と。

私は12年前に彼女と一緒に働いて以来、お互いその会社を辞めた後も同じ業界なので、時々ディナーやホリデーパーティに言っていた友人でもある。それが縁で、今の会社にも誘ってくれた。意地悪もされたけれど、この状態では助けになりたいと思う。

 

ただ、友人として出来ることは限りがある。LAから車を飛ばしてきた彼女の従姉妹は、頭の回転も早くバイリンガルなので、弁護士や家族との連絡など切り盛りし始めた。

 

私だったら、家族の顔を見ずに最期を迎えるのは嫌だと思う。しかし、彼女は「友人も家族も医者ではない。何が出来るの?」という考え方。難しい問題。外国で一人暮らしする人は私の周りでは多い。健康なうちは、バリバリ働いて友達もいる。どの程度の近さの人に伝えるか。そして、どこまで話すか?

 

元々、必要なことを話さない同僚だった。それが職場では私のフラストレーションだった。

ここはアメリカ。色んな法手続きや医療の手続きがある。当然と思っている薬の保険が効かなかったり本当に複雑。今、指も動かない彼女はプロを探そうにも検索もできない。幸い、上司は保険が無くなるようなことはしないと言うが、医療の個人破産の可能性もある。持ち家が二軒、犬二匹、お墓や葬儀などの指示を書面で弁護士に書いてもらわないと、後々、家族が困る。

今、彼女の従姉妹が懸命にやっている。

ホスピス近くに咲いていた花。水不足でも立派に凛と咲いていた。