ブッククラブで12月の課題図書だった「1945年のクリスマス」。数年前に新聞で話題になったが、同時に父からも送られて読んでいた。

 

<あらすじ>

ベアテ・ゴードン(旧姓シロタ)さん。現在の日本国憲法の草案を書いた一人。当時、彼女は大学卒業したばかりの22歳。オーストリア生まれのベアテさんは、音楽家の父親が日本で教えることになり、幼少時に戦前の日本へ移住。海外の有名な音楽家が集い、豊かな暮らしをするも、戦争が始まる直前に単身でアメリカへ留学。1945年のクリスマスイブに日本に戻った彼女は、戦時中、長野へ疎開していた両親と再会する。

 

ベアテさんの眼から見た当時の東京は、皇居以外は焼け野原。日英両語ができる人が少ないため、GHQに知り合いがいた彼女は日本国憲法を新しく作るにあたって、約2ヶ月で民主主義となる草案を出す、という大役を任命される(肩書は民生局員なのだが)。高校卒業まで過ごした日本は、男女平等とは程遠く、女性は不平等を我慢するのが必然、という慣習や法律を変えることにフォーカスした。与えられた期間は2か月。日夜、法律専門のベテラン男性たちと肩を並べて仕事に励む。

 

ここまではスムーズだが、ベテラン男性達は彼女の草案を読んで、ほとんど削除してしまう。1945年のアメリカにも「完璧で本質的な平等」はなく、彼女の案はプログレッシブすぎたのかも。悔し涙にくれる日も続くが、一気に老いて栄養不足の両親にGHQで働いたお金や物を支給できるのは、好都合だったよう。そして、いよいよ1946年に発布される。

 

写真は私の父の本への書き込み。ノートは2冊にもなった。

 

 

 

<ブッククラブでの感想>

新年会をしながら、話合いは2時間半にもおよび盛り上がったブッククラブ。感想の抜粋は以下。

  • 意外と法案づくりのページは少なかったけれど、彼女の日本と女性への想いは、その後のジャパンソサエティ等での活動に映し出されていますね。却下された自分の法案を説得できなかった後悔など、人間として錯誤しながらも前向きに生きた彼女は立派です。批判もある様ですが、憲法づくりに女性を採用していなければ、どうなっていたかと怖くもあります。
  • 敗戦直後に志の高い若い女性が男性の中に1人入って日本のために憲法を書いたなんてこと自体、知らないことでした。原題はそういうことなんだなと。
  • あまりにも興味深く2日間で読み終えてしまいました。思ったのはベアテさんはなんと「豊かな」人生を送られたのだろう、ということ。もちろん金銭的な意味ではなく。それにしてもロシア系ユダヤ人がこの時代翻弄された運命の中で大きな犠牲を払いながら強く生き抜いた人もいたのだなあと思いました。日本国憲法に「男女平等」を書く、のところでGHQ案が最終的にはどのように日本国憲法となったのだろうと思いました。それで実は他の理由で手に入れた添付資料と見比べながら読みました。これは「憲法カフェ」という9条を守る会のセミナーに行ったときに教えていただいた資料です。私はまだ勉強不足で改憲派でも護憲派でもありませんが正直この自民党案を見たときなんでこんなに全部変えてしまうんだろうとは思いました。アメリカの憲法は徐々に改訂をして変わって行きましたから。恥ずかしながら今の日本国憲法が生まれた背景がこのようなことだったとは知りませんでした。この本は改憲派にも護憲派にも読んでほしい本だと思いました。昔憲法学者から聞いた言葉があります。それは「憲法は理想の理念なんです。」という言葉。だとしたら私達はこれからどのような理念を築いていくのだろう、と深く思います。
  • 国立女性教育会館という所で去年シロタ・ベアテさんの展示会があったそうです。これを見ると、当時の感覚が少しでも伝わるのではないでしょうか。https://www.nwec.jp/event/archivecenter/Beate_online.html