手榴弾の爆発に巻き込まれた未来の福園が消滅する。同時に福園が持っていた未来の武器も消失するも、そんなことよりも福園は未来の福園が消えたことに申し訳なさそうな表情を見せる。
悟詩「……巻き込んですまなかったな。」
雷汰「別れは済んだか?次はお前がそっちに行く番だ。」
全身に風雷鎧武・骸を纏った五十嵐が悠然とこちらに迫ってくる。一挙一動ごとに風が強く吹きつける音と雷の轟音が轟く。
悟詩「別に未来の俺が死んだワケじゃねーよ。勝手に殺すな。」
裕次郎(全身にグラムを纏ってから明らかに雰囲気が変わった…… ヤツの本気は、ここからか……)
今の五十嵐の出で立ちはまさに、生きた嵐そのものだ。そして先に仕掛けてきたのは、五十嵐だった。通電し、青白く光る金棒を振り上げて襲いかかってくる。
雷汰「これ以上妙な助っ人を呼ばれないようにする。」
悟詩「別次元の俺のこと妙とか言わねぇでくれるかぁ!?」
五十嵐が金棒を地面に叩きつけるように振り下ろす。地面にめり込むと同時、空を包む黒雲から一筋の雷が落ちる。
悟詩「うおっ!?」
雷汰「ツバメ返しだ。」
なんと振り下ろし、地面にめり込んだばかりの金棒を無理やり持ち上げ、福園を下から狙ってきた。この攻撃に福園は反応できない。そのまま五十嵐の振り上げた金棒が福園の体を打った。
悟詩「ぐあっ!?」
雷汰「チッ、振り下ろしたときに電気を使いすぎたか。」
悟詩「このぐらいで俺の召喚を防げると思ったか?神成隊副隊長なめんなよ!!」
吹き飛ばされながらも福園はグラム能力を発動する。空中に段ボールが現れ、そこから別次元の福園が召喚される。
悟詩「ティラノサウルスの俺、来ーい!」
雷汰「させるか!!」
踵を返した五十嵐が段ボールの破壊を狙う。しかし福園は後を追おうとしない。
悟詩(俺ならカウンターを決める!そのまま返り討ちにしたれ!)
段ボールの蓋が開く。しかしそこから現れた福園は、こちらの福園の予想を大きく裏切るものだった。スーツ姿に黒い手持ちカバンを持ったその福園は、どう見てもサラリーマンだった。
悟詩「え」
営業福園「え……ここどこ……?」
雷汰「何だぁ……?随分弱そうなのが出てきたなぁ!!」
悟詩「わ゛ーーーー!!ちょっと待ったーーー!!!」
慢心していた福園が一気に駆け出し、サラリーマンの福園を自身の元へ引き寄せる。その一瞬の差で五十嵐の金棒が振り下ろされ、周囲を包む風と雷に巻き込まれる。
雷汰「なるほどな。テメェ自身では呼び出すヤツを指定できねぇのか。」
営業福園「あの……いったいどういう状況なのですか……!?」
悟詩「いいからお前は帰れ!!なッッ!!」
急いでサラリーマンの福園を段ボールに押し返し、なんとか帰還させる。しかしそんな状況でも五十嵐は待ってはくれない。
雷汰「さっきのヤツみたいに見捨てれば良かったのにな。」
悟詩「……あぁ?そんなことできるかよ!」
五十嵐の金棒が振り下ろされるよりも先、福園は金棒の根元、持ち手の部分を狙って斧を振るった。完全に受け止めることはできなかったものの、五十嵐の懐に入った。
悟詩「これでも正義の味方やってんだ。自分すら見捨ててどうするんだよ!?」
雷汰「……ムッ!」
再び五十嵐が金棒を持ち上げようとする。しかし、その上から力強く押さえつけられる。湊が渾身の力を込め、五十嵐の金棒を押さえつけたのだ。
雷汰「湊……!」
裕次郎「吾妻の元では連携を学んでなかったようだな。 こちらはいつだって連携が取れるようにしてある。」
悟詩「もらったぁ!!」
福園が目いっぱい斧を振り上げる。その一撃は五十嵐の胸を切り裂くも、内臓まで届かない。五十嵐の分厚い筋肉が致命を防いだのだ。しかしその時、湊が金棒の上を滑らせるようにスクラマサクスを五十嵐へ振るう。
雷汰「うぅ!?」
裕次郎「お前の豪腕は厄介だ。せめて握れななくなるよう、指くらい落とさせてもらうぞ。」
雷汰「俺の指を落とすだと……!?そんなこと、させるかぁ!!」
五十嵐が叫ぶと同時、風雷鎧武・骸の砕けた隙間から強風が溢れ出す。その風圧に耐えきれず、福園達が吹き飛ばされる。
裕次郎「く……!吾妻の亡霊が……!」
悟詩「いや、あの格好だと落ち武者だろ!」
雷汰「お前ら……!さっきからあの人の名前を、軽々と呼んでんじゃねぇ!!」
五十嵐の怒号も共に雷が落ちる。そこから地面に広がり、風雷鎧武・骸をより怪しく光らせる。
雷汰「お前らに軽々と呼ばれるほど……あの人は安くねぇんだよ!」