S8  98-6  止まぬ嵐 | レクイエムのブログ

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和砂「!」


自身の元へと吹き付ける強風に巽の前髪がなびく。風が吹いてきた方を見ると、五十嵐が風雷鎧武・骸を全身に纏っていた。


和砂「〔風雷鎧武・骸〕、相変わらず凄まじいパワーだ。 あまり大きく展開して、巻き込まれないようにしなければ。」


自身の髪をあまり広げないよう巽が戦闘スタイルを変える。巽の髪がまるで蜘蛛の足のように数本に纏まると、勢いよく瀬ノ内達へ迫る。


えれな「おっと!」


髪が勢いよく地面に突き刺さる。その威力は地面を穿つほどの威力だ。そんな髪の刺突が次々に振り下ろされる。


えれな「ちょっとちょっと!自分の髪は大切にしなさいよ!女の子の髪ってすぐ傷むんだから!」


和砂「お気遣いどうも。いつも行きつけの美容室で2万2000円かけてメンテナンスをしているので大丈夫ですよ。」


白銀「ウス。」(クソ高ぇな、クエはお前は。)


巽めがけ磐飛がノースポール・ミッションを投げつける。その投げつけた箇所に重なるように、銃弾を飛ばす。


白銀「ウス。」(まずは捕まってる小魚共の解放だ。)


和砂「おや、やはりそちらを狙ってきますか。」


ノースポール・ミッションとそれに続く銃弾が、飛鳥馬班を拘束する髪に向けられる。しかしその時、髪の束が動き、隙間を作り出すとちょうどその隙間を通り抜けてしまったのだ。


和砂「この髪が1つの物体であれば良かったのですが……残念です。 髪は言うなれば繊維の集合体、解除も集合も自由なのですよ。」


倫太郎「だが……!髪に注意がいったな!」


和砂「……フン。」


巽本体を狙った触手の突きが迫る。しかしそれに対しても、髪が突き刺さり、その勢いを殺す。更には触手に深く突き刺さると、内部で複雑に絡み合い、その動きを封じた。


倫太郎「抜けない……ッ!」


和砂「あなたも芸のない方だ。巨大な触手による突きと振り下ろし、それだけですか?」


倫太郎「何だと……!?」


和砂(とはいえ煽りすぎは危険ですね。彼はストレスや怒りをそのままグラムの力に反映させる。 その上限があるかは知りませんが……無闇に怒らせるのは得策ではない。)


多人数を相手取っても巽は冷静だった。その時、瀬ノ内が スレッジハンマーを構え、突撃を仕掛ける。


えれな「そろそろその子達、返してもらおうかしら?」


和砂「得物に相応しい突進ですね。寧ろそちらから来てくれた方がありがたい。」


突っ込む瀬ノ内へ髪が襲いかかる。頬を掠めながらも瀬ノ内の勢いは衰えない。髪に注意が向く瀬ノ内を見た巽が銃口を向ける。


和砂「髪に注意がいってると……こうなりますよ?」


引き金にかけられた巽の指に力が込められる、その瞬間だった。巽の肩に貫かれたような痛みが奔る。


和砂「……ッ!?」


えれな「あなたこそ、私に注意がいきすぎてたんじゃない?」


 痛みが奔ったのは背後からだ。肩に目をやると、自身の肩を紐で繋がれた、船を模った青い宝石が貫いていた。それは今捕まっている生駒のグラムだった。


戸華莉「〔シンドバッド……ジャーニー〕……!」


和砂「小バエ……!」


思わぬ攻撃に巽の額に血管が浮かび上がる。しかし巽に憤っている時間は与えられない。


えれな「はーい!こっちも注目!」


和砂「!?」


目を離した一瞬の隙に、瀬ノ内は既に巽を射程圏内に入れていた。そして放ったのは、スレッジハンマーのフルスイングだ。


えれな「ナマコに……なれーーっ!!」


和砂「ぐぅぅぅぅっ!!」


攻撃の隙間に自身の腕を硬質化した髪を滑り込ませるも、体を庇った腕から骨が砕ける音が聞こえる。それと同時だった。突如巽の体が引っ張られるように空中に浮かび上がる。


倫太郎「絡み付かれて動けないのなら……!」


和砂「なっ……!」


倫太郎「強引に!振り回す!!」


なんと髪が突き刺さり、絡み付いた触手を無理やり振り回し、巽の体を力強く叩きつけたのだ。地面に巽の体が叩きつけられると同時、髪の牢獄が解け、触手を絡み取っていた髪が抜ける。


白銀「ウス?」(捕まってたヤツら大丈夫なのか?)


倫太郎「問題……ありません!」


巽と共に地面に叩きつけられたと思われた飛鳥馬班だったが、そこにあったのは通常のものよりも何倍にも膨れ上がったエアバッグだった。星壱が車と合体していたことを飛鳥馬は見抜いていたのだ。


星壱「こんなこともあろうかと……!車と合体していたのだ!!ガハハハハハ!!」


北斗「流石兄者です!」


戸華莉「瑠香、大丈夫?」


瑠香「えぇ……私は大丈夫。」


和砂「……。」


叩きつけられてもなお、巽は立ち上がった。脱出した飛鳥馬班、そして千切れた自分の髪の一部を見た巽の額に、くっきりと青筋が浮かぶ。


和砂「……〔アサルトバーバー〕。」


巽が呟くと、髪の中から人型の異形が姿を現した。全身を漆黒に染めながらも、その腹から腰にかけて、3色のサインポールが螺旋を描いて回っていた。


アサルトバーバー『は、はいぃぃぃ……』


和砂「お前も仕事しろ。小バエになりたいの?」


アサルトバーバー『しっ、失敬しましたぁ!!』


倫太郎「アレがヤツのグラムの本体……?」


巽とは対照的に弱々しい様子を見せるアサルトバーバーが巽の髪に沈み込むと、髪がまるで生き物のようにうねりだし、爆発するかのように広がる。


和砂「もう五十嵐様に巻き込まれるなどというリスクは考えない……! 全力をもって、この小バエ共を駆除する!」


えれな「どうやらここからみたいね……!」