S8  91-7  緊急同盟 | レクイエムのブログ

レクイエムのブログ

ブログの説明を入力します。

『連続殺人鬼 未だ捕まらず』

連続殺人鬼の被害者がまた新たに発見された。被害者はこれまでと同じ娼婦が狙われ、腹を鋭利な刃物で切り裂かれていた。

警察はこの事件の犯人を、連日惨劇を繰り返している殺人鬼と断定し、捜査を続けているものの一向にその姿を見ることさえできず、犠牲者は増える一方だ。

平穏な夜は再び訪れるのか。警察は引き続き夜間の出歩きや夜間営業の自粛を呼びかけている。


──『エドモンドタイムズ』より抜粋



建物全体を包むように発生した霧の中を鬼嶋と早瀬は音を殺して物陰に潜む。彼らが逃げているのは剣崎からだけではない。そこにはいないはずの人影があった。人影の手には、銀色の光を放つナイフが握られ、まるで獲物を探すように建物内をうろついていた。


遙斗「どうなってる……!?何故アイツが早瀬の〔能力〕を……!」


千晶「そんなハズは……! 〔エドモンドタイムズ〕!」


早瀬は確かめるように自身のグラムの名を呼ぶ。しかし早瀬の手にはそのグラムは現れなかった。代わりに現れたのは異形のグラムだった。上半身はピエロのような出で立ちだが、その下半身はどこまでも伸びるムカデのようだった。何より手に持つ巨大な鎌に、鬼嶋は見覚えがあった。


遙斗「その鎌は……!」


『ヒャッヒャッヒャッヒャッ!!!』


「!」


グラムが上げた笑い声に人影が反応する。鬼嶋達の姿を見つけた途端、そのナイフを振りかざして襲いかかってくる。人影のナイフを鬼嶋はギリギリで防ぐ。


遙斗「クッ……!早瀬!この物語のシナリオ外の行動は何だ!?」


千晶「確かこの物語は…… !?」


背後から察知した殺気に早瀬は振り返り、グラムの鎌で自身の身を守る。すると鎌とレイピアがぶつかり合い、火花を散らす。


王夜「武器を持つ被害者が抵抗する、どうやらそれはシナリオ外の行動ではないようですね。」


千晶「どうやって私のグラムを……!早急に返してもらってもよろしいですか!?」


王夜「俺の〔チェイス・ザ・ジョーカー〕の扱いが上手ではありませんか。 そのまま差し上げてもよろしいですよ。」


千晶「お断り……です!」


剣崎を突き放すと、早瀬は2人から逃走する。それは鬼嶋も同じだ。鬼嶋の胸を見ると、ギリギリで外したものの、赤い線が奔っていた。


千晶「先輩……!その傷……!」


遙斗「問題はない。 だが……異様に強くなってるな。いや、こちらが弱くなってるだけか。」


千晶「殺人鬼のシナリオはそのままでは抵抗しようがしなかろうが被害者の死が確定してしまいます。 どうにかして、シナリオ外の行動をしなければ……!」


殺人鬼と剣崎から逃げる2人、その時鬼嶋は1つの考えが浮かぶ。一度建物の外へと逃走する作戦だ。鬼嶋と早瀬が逃げ込んだ先に窓が見える。


遙斗「早瀬!あそこから飛び出すぞ!」


千晶「正気ですか先輩!?確かにそうすれば殺人鬼から逃れられるかもしれませんが……!ここは4階ですよ!?」


遙斗「ここで定められた死をただ受け入れるなんてごめんだな。 それに……国家の安全を守る俺達公安が、こんな所で死ねるか!」


千晶「……分かりました!」


鬼嶋の叱責に看過され、鬼嶋と早瀬は窓へと駆け出す。2人の足音を察知した殺人鬼が背後から物凄い勢いで迫ってくる。殺人鬼に追いつかれないよう2人は全力で走る。窓まであと数歩と迫った、その時だった。


千晶「うぅっ!?」


遙斗「どうした早瀬!?」


突如早瀬がその場に倒れてしまった。足を滑らせたかと思ったが、よく見ると血が床に垂れていた。早瀬の足を見ると、有刺鉄線がそのトゲを早瀬の足に食い込ませながら絡まっていた。


千晶「すみません!すぐに……っ!」


遙斗「くっ!?」


殺人鬼は既に目の前まで迫ってきていた。振り上げられるナイフを受け止めようと鬼嶋は短剣を翳すも、向かっていた窓の方からは剣崎がレイピアを突きつけてくる。


王夜「殺人鬼が罠も張っていてくれていたとは、ただの快楽主義者じゃなくて助かりました。」


遙斗(まずい!同時に2人は防げない!)


両方向から迫る凶刃に為す術なく2人が裂かれるかと思われた、その時だった。鬼嶋に襲いかかってきた殺人鬼の体が突如、横一文字に両断された。


遙斗「!?」


王夜(殺人鬼が斬られた!?何かまずい!)


その状況に剣崎が危険を感じたその時、剣崎のレイピアに鋭い衝撃が奔り、思わずレイピアを手放してしまった。レイピアが音を立てて落ちると同時に、鬼嶋達の危機を救った人物達の顔が見える。


王夜「その隊服……SWORDですか。」


楪「こんな所でいったい、何をしてるのかしら?」


アンナ「これ以上は好きにさせません!」


そこに駆けつけたのは、パトロール中だった一条と上ノ原だった。