S8  88-6  復讐の武者 | レクイエムのブログ

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朝陽「ぐ……うぅ……ッ!」


立ち上がったはいいものの、雅楽代の潰れた片足から全身に広がる激痛のせいでまともに立てない。すぐに膝をつきそうになる。


雷汰「死に損ないが。片足が潰れた状態で俺に勝てると思ってるのか? あまりなめるなよガキ。」


朝陽「クソッ……!」


その時だった。雅楽代の潰れた片足に無数の泡が纏わり付いた。すると不思議と足の痛みが和らいだような気がした。


朝陽「あんまり痛くない……」


狛璃「私の能力は鎮痛作用もあるんです…… ですが……!傷が治ったワケではありませんよ……!」


泡は島永のグラム能力だった。島永は下唇を噛み、血を流しながら雅楽代を見ていた。医者として、片足が潰れた雅楽代を動かすなど本当はしたくなかった。しかしSWORDとして、家族を守ろうとする雅楽代を引き止めることもできなかった。


朝陽「……ありがとうございます。島永副隊長。」


礼を言うと同時、五十嵐が飛びかかってきた。 宵ごと潰さんとする勢いだ。


雷汰「今度は全身潰してやるよ。」


朝陽「……!」


金棒が振り下ろされる。しかしその時、雅楽代の体が高速で横に逸れた。五十嵐が目で追うと、二人三脚のような姿勢でタンズリベンジャーズに支えられていた。


朝陽「グラムに支えられるのはお前だけの特権じゃねぇよ。」


雷汰「その程度の使い方で……!いい気になってんじゃねぇ!!」


金棒を振り回しながら、それに伴う風を撒き散らしながら五十嵐が突進してくる。一撃が即死となり得る攻撃を雅楽代は回避していく。


朝陽(よし!宵から注意が逸れた!)


タンズリベンジャーズと連携して雅楽代が五十嵐から距離を空ける。その時、五十嵐の首に激痛が奔る。


雷汰「ぐうぅぅぅ!?」


懸命に目だけ動かすと、そこにはボストンテリアに変身した汐凪が噛みついていた。 


真鈴『さっきのリベンジよ!』


雷汰「この……!メス犬がぁぁ……!」


真鈴《てかコイツの首どうなってんのよ……!全然噛み切れないんだけど!?強化ゴムなの!?》


雷汰「離れろぉ!」


汐凪を無理やり引き剥がし、投げ捨てる。噛み切れはしなかったものの、噛まれた箇所からかなり出血している。


雷汰(クソがッ……!頸動脈まで届いてる可能性がある……!面倒くせぇことしやがって……!)


朝陽「余所見してんじゃねぇ!」


回避に徹底していた雅楽代が攻めに転じる。タンズリベンジャーズと共に剣を突き立て、五十嵐へ突きを放とうとする。


雷汰「させるかぁ!」


カウンターのため五十嵐が金棒を振ろうとする。しかしその時、膝に殴られたかのような激痛が奔り、姿勢が崩れる。なんと雅楽代よりも低い位置に花が入り込み、五十嵐の膝を殴りつけていたのだ。


椒「お供にならないのなら……実力行使なんだぞ!」


朝陽「うおぉぉぉぉ!!」


姿勢が崩れた五十嵐の鳩尾へ雅楽代とタンズリベンジャーズの突きが放たれる。風雷鎧武を貫けず、硬い音が響いたものの、胴に穴が空いた。


朝陽(やっぱり俺じゃパワーが足りねぇ!)


雷汰「鎧を砕くのがお前の精一杯だ。さぁ死ね!」


膝を殴られながらも五十嵐は体勢を立て直し、金棒を振ろうとする。しかしその時、五十嵐は自身に向けられた殺意に気づく。


朝陽「けど、穴を空けられただけで充分だ。」


雷汰(この殺気……!まさか! しまった!!)


殺気を感じて向けられた方を向く、それは先ほどもくらった策だった。その先にいたのは、雲雀だった。拳銃を向けているものの、真の狙いは目を合わせることだった。


麗桜那「以前のあなたなら、同じ手に2度もかかるなんてあり得ませんでしたね。 〔チックハート〕。」


雷汰「ぐうぅっ!!」


チックハートが発動し、風雷鎧武が拘束される。


麗桜那「チックハートが一瞬しか保たないのは分かりました。 だからこそ、その一瞬を利用させてもらいますよ。」


その時、風雷鎧武の胴に風が集中する。雅楽代が空けた穴だ。そこから風が勢いよく噴出される。それによって吹き飛ばされた五十嵐の体が力強く壁に叩きつけられる。


雷汰「があぁぁぁぁ!!!」


朝陽「よし……!決まった……!」


しかし五十嵐も猛者だ。すぐに立ち上がり、体勢を立て直そうとする。そんな五十嵐を警戒し、雅楽代も宵の前に庇うように立つ。


朝陽「宵は……やらせねぇ……!」


宵「……!」


雷汰「あ……!」


傷付きながらも宵を守るために前に立つ雅楽代を見た五十嵐は、まるで衝撃を受けたように目を丸くする。そしてその時、何故か五十嵐の全身から風雷鎧武が消える。


麗桜那「?」


朝陽「能力を……解除した?」


雷汰「く……うぅ……!」


まるで五十嵐は動揺するかのように汗を流す。そしてなんと五十嵐は、病院の入口へと駆け出したのだ。逃走を図ったのだ。

 

真鈴「は!?ちょっと待てって!」


椒「アイツ逃げる気だぞ!?」


朝陽「アイツ……なんで…… うっ!?」


雅楽代が痛みで倒れる。島永の泡による鎮痛作用が切れたのだ。


狛璃「怪我人の治療を優先します!あなた達、雅楽代さんを早く治療室へ!」


コーク&サイダー「「はっ、はい!」」


麗桜那「病院付近にいる隊員達へ通達。五十嵐が病院から逃走しました。付近の隊員達は捜索をお願いします。見つけた場合は必ず3人以上で対処してください。」


五十嵐は五十鈴病院へ向かってる隊員達に任せ、雲雀達は治療を優先した。抱えられる雅楽代の背中を、宵はただ黙って見つめていた。


宵「……。」