想い出の…③〜七里ガ浜のカフェ・再訪〜 | ツナイデルの「だって高1の息子が昼メシは弁当がいいって言うから」

ツナイデルの「だって高1の息子が昼メシは弁当がいいって言うから」

サッカーバカ1号&2号についての徒然日記。改め、元サッカーバカ1号&そこそこサッカーバカ2号を見守る父の徒然日記。
1号は大学生となりサッカーは観戦するスポーツに、2号は高校部活で細々とサッカー続けてます。

(前回からの続き)


「こちら、リコッタパンケーキになります。」


いよいよ、彼女のお待ちかねのパンケーキが運ばれてきた。

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「意外とシンプルだね。」


彼女は少し驚いていた。流行りのパンケーキのように、ホイップクリームやカラフルなソースが添えられているわけではなく、シンプルで、パンケーキの上にはハニーコームバターがのり、脇にバナナが添えてあるだけだ。


「うわーっ、すごい!」


パンケーキにナイフを入れた彼女が驚いて言った。


「見て、見て、ふわふわ。」


「ねぇ、ねぇ、切ってみて。」


促がされるまま、取り分けられたパンケーキにナイフを入れてみると、たしかに、チカラを入れることなく、パンケーキは切れた。


「美味しい!柔らかくてすぐに溶ける。甘さも控え目だし、わたし、この味好き!大好き!」


こんなに上機嫌な彼女を見るのは久しぶりだった。それはまるで、無理にテンションを上げるかのようにも見えた。


たしかに、パンケーキはふわふわで、歯で噛み切る必要はまるでなかった。ふわふわといっても、ドライな感じではなく、しっとりとしていて、口の中でほどける感じで、今まで味わったことがない食感だ。甘さは控えめなので、僕はシロップをまわしかけた。


今日、彼女との思い出ごと噛みしめたかった僕にとって、オムレツもパンケーキも少し柔らか過ぎたようだ。


「ヒロシ、こういうの好きだよね。」


返事に困った僕は、ただ黙って頷いた。


そこから、彼女はしばらく無言でパンケーキと格闘していた。僕はただ漫然とパンケーキを口に運んでいた。


あまりにも静かなので、ふと彼女に目をやると、驚いたことに、その目には涙があふれていた。


僕はうろたえた。そんな僕のココロを見透かすかのように、彼女は静かに言った。


「ヒロシ、わかってるよ。私達、もう会えないんだよね。」


胃のあたりがグーッと締め付けられた気がした。そう、僕は今日、彼女に別れを告げるためにここに来たのだ。


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プロローグっぽいけど、


これで終わり