第十話『秘密』
―奇妙な岩と雲海
ザルバ「鋼牙、いつまで待つつもりなんだ?」
鋼牙「決まっている・・・奴が現れるまでだ」
ザルバ「なるほど、まぁいい。まだ時間はたっぷりあるからな」
鋼牙「レオが作ったこいつが役に立ちそうだ」
―冴島邸
カオル「レオ君、魔戒騎士に転職するの?」
レオ「違いますよ。これは儀式用の剣です」
カオル「儀式用?」
ゴンザ「なんでも今日は霊獣が獣道を通る日だそうでして、その霊獣の姿を見るためにはこの剣が必要になってき・・」
レオ「ゴンザさん!」
ゴンザ「これは失礼致しました。あ、庭にあんなに落ち葉が落ちて・・掃除をしなければ・・・」

カオル「鋼牙はホラー狩りでレオ君は霊獣狩りか・・・」
レオ「違います。霊獣を勝手に狩る事は禁止されています」
カオル「え?じゃあ見るだけ?」
レオ「はい。霊獣は滅多に見ることが出来ない生き物なんです」
カオル「どんな姿をしてるの?」
レオ「それをこの目に焼き付けに行くんですよ。霊獣を見た者には幸福が訪れるという言い伝えもありますし、それと・・・」
カオル「それと?」
レオ「これ以上は秘密です。じゃ、行ってきます」
カオル「レオ君、お願いがあるんだけど・・・私も一緒に言っていい?」
レオ「駄目です!」
カオル「えぇ~・・」
レオ「と言っても、カオルさんの事だから、きっと着いてくるんでしょうね」
カオル「レオ君、お願い!」
―公園
レオ「では、これより霊獣が通る獣道へ向かいます」
カオル「歩いていくのね?」
レオ「そうです。目的地までは方位や気の流れに沿った道筋で進みます」
カオル「どういう事?」
レオ「あそこに街灯があります」
カオル「うん」
レオ「このまま真っ直ぐ行けば、あの街灯に辿り着きます」
カオル「当たり前じゃない」
レオ「でも気の流れに沿って歩く場合は、一旦あの橋を渡って木の下を潜ってから、あの街灯に辿り着かないと駄目なんです」
カオル「なんでそんな遠回りする必要があるの?」
レオ「霊獣の姿は街に流れている邪気を纏っていては見れないんです。その日の気の流れに一番合った道筋で獣道に辿り着かなければなりません」
レオ「まずはあそこの茂みまで向かいます。あ、その前にこれを・・・」
カオル「何?」
レオ「一日だけ五感が鋭くなる秘薬です。それを飲んでください」
一気に秘薬を飲み干すレオとカオル。
秘薬の効果で今まで見えなかったものが見えるようになる。
レオ「街と街、人と人の間を流れる小さな気の塊です」
レオ「まず最初の一歩は左足から踏み出します。いいですか?」
カオル「なんか緊張してきた」
レオ「せーの」
―高架下前
カオル「あ、どうしたの?」
レオ「あの高架下の奥に行きたいんですが・・」
カオル「あ!」
レオ「邪気の塊です。この道は使えませんね」
カオル「あ!あの人!」
レオ「大丈夫です。あの人には邪気は見えていません。つまり、存在しないと同じ事です」
カオル「でも・・私達には・・・」
レオ「邪気が見えている・・・だからこの道を使うのは危険です」
―階段
カオル「ねぇ、レオ君の目的って霊獣の姿を見るためだけなの?」
レオ「何故ですか?」
カオル「だって他に理由がありそうだったから」
レオ「これです。この筆を霊獣にかざすためです。そうすれば筆に不思議な力が宿ると言われています」
カオル「だってこの筆の毛も霊獣の毛なんでしょ?」
レオ「この筆にはもう効力が無いんです。だから、そんな言い伝えでも試してみようと思って・・」

カオル「じゃあ・・私の筆も霊獣にかざせば不思議な力が宿るかなぁ?」
レオ「それはありえません」
カオル「だよね・・・」
レオ「あ!でも、いい絵が描けるようになるかもしれません。それに、大切な人に霊獣の絵を贈る風習もあります」
カオル「本当?」
レオ「はい」
カオル「なんだか元気が沸いてきた!」
―坂道

色の付いた石をばら撒き、術をかけるレオ。
カオル「はぁ・・・!凄~い!やっぱり魔戒法師って凄いね!」
レオ「こっちの道で大丈夫です。行きましょう」
―奇妙な岩と雲海

魔導具の動きが止まる。
鋼牙「感づかれたか?」
ザルバ「いや、奴の動きが止まっただけだ。しかし、これほどの魔導具を作るとは、やはりレオは只者じゃないな」
―ビルの前
カオル「あ・・・」
レオ「かなり強い邪気の塊です。そっと・・そっと歩きましょう」
カオル「そっと・・・」
―廃屋の前の道
レオ「次の道が分かりました。こっちです。あ・・・」
カオル「どうしたの?」
レオ「カオルさん、誤解しないで下さいね」
カオル「何?」
レオ「こっちの道に行きたいんですが、気の流れの関係で通れる答えは一つだけなんです」
カオル「それで?」
レオ「気はそれぞれ人間と同じように感情があって、個体かどうかを認識させなければいけないんですが・・・」
カオル「え?何!?どうすればいいの?」
―川沿いの道
カオル「まったく!一言手を繋いで歩くって言ってくれればいいのに!」
レオ「すいません」
カオル「はぁ」
レオ「ここまでで大丈夫です。こっちです」
カオル「こっち・・・はぁ」
―奇妙な岩と雲海
回転する魔導具。
ザルバ「静かなもんだ・・・」
鋼牙「・・・・・」

ザルバ「おいおい、寝ちまったのか、鋼牙?」
鋼牙「黙ってろ」
―工場の芝生
一直線になるよう交代で前に出ながら歩く。
カオル「鋼牙が追ってるホラーってやっかいな奴なの?」
レオ「はい。とてもすばしっこい奴です」
カオル「1、2、3、4・・・でも鋼牙なら大丈夫だよね」
レオ「カオルさんは心配じゃないんですか?鋼牙さんの事」
カオル「心配だよ・・・でも、私が心配してもしょうがないし・・・それを鋼牙に言うつもりもないの」
レオ「鋼牙さんは素晴らしい人です」
カオル「素晴らし過ぎて・・可愛げが無いって思わない?」
レオ「魔戒騎士に可愛げは必要ありません」
カオル「真面目に答えないでよ・・・そうだよね・・『守りし者』だもんね」
カオル「昔ね、鋼牙が言ってたの。俺は人を守るのが使命だって。でね、その人の中に私も入ってるの?って聞いた事があるんだ」
レオ「黄金騎士にそんなこと聞くのカオルさんだけですよ」
カオル「そうだね・・・でも、そうだって言ってくれた・・・鋼牙は」
レオ「・・・・・」
―獣道
不思議な人達。
飛び石を渡るように。
狭い道。
花火をしながら。
風車を回しながら。
傘をさして歩く。
―階段
カオル「はぁ・・・・・休憩?」
レオ「違います。ほら、あれが通り過ぎないと先に進めません」

カオル「は!はぁ・・・何なの、あれ?」
レオ「僕にも分かりません。ただ、霊獣が通る日には必ず現れるです」
カオル「魔戒法師にも分かんない事があるんだね」
レオ「当たり前です。僕だってカオルさん達と同じ人間なんです」

カオル「その筆・・凄く綺麗な筆だね」
レオ「はい。だからなかなか捨てられなくて」

カオルでも、それだけじゃないでしょ?」
レオ「え?」
カオル「レオ君の使う筆って感じがしないもん。誰か大切な人が使ってた筆?」
レオ「カオルさん、まるで魔戒法師みたいですね。術で僕の心を読まないでください」
カオル「アッハハッ!そんなこと・・・私、波動とか出せませんから!フフッ」
レオ「行きましょう」
カオル「・・うん」
―ビルの屋上
カオル「獣道って・・・」
レオ「もしかして森の中とか想像していましたか?」
カオル「あ・・・」
霊獣を見るための用意をするレオ。
カオル「何をしているの?」
レオ「霊獣とは僕らと時間の流れが違うんです。だから僕らの時間を霊獣の時間に合わせないといけません」
儀式用の剣を振りかざす。
レオ「ハッ!」
準備が整い、空を見上げるレオとカオル。
霊獣が現れる。
レオ「ハッ!」
時間の流れを霊獣に合わせる。
霊獣がレオとカオルの前まで飛んでくる。
筆をかざす。

レオが筆をかざすと、ミオの姿が浮かぶ。

慌ててカオルも筆をかざすと、鋼牙の姿と行き詰まっていた絵本の映像が浮かぶ。
飛び去る霊獣。
カオル「・・・・・・凄かったね!」
レオ「えぇ・・・・・・僕もこんなに近くで見たのは初めてです」

―帰り道のビルの屋上
カオル「ねぇレオ君、あれ何?」
屋上設備機器の先端に丸い物体を見つけたカオル。
レオ「まいったな!」
カオル「どうしたの?」
レオ「オリグスと言って霊獣を守っている獣です。霊獣と違ってとても凶暴なんです、オリグスは・・」
カオル達を見つけ、襲いかかるオリグス。
カオル「キャァッ!」
法術でカオルを安全な場所に飛ばすレオ。
魔戒法師レオVSオリグス
レオ「ウワッ!ウッ!ハッ!」
レオの懐から小袋が落ちる。

オリグスを儀式用の剣で撃破。
が、その勢いでオリグスの牙がカオルがいる方に向かって飛ぶ。
レオ「ハッ!」
カオル「キャ!」
間一髪でオリグスの牙を剣で突き刺し、カオルを守る。
カオル「凄いレオ君!まるで魔戒騎士みたい!」
レオ「できれば闘いたくなかったんですが・・」
カオル「強いんだね、レオ君」

小袋を拾うレオ。
レオ「カオルさん・・・」
カオル「何?」
レオ「今の事は鋼牙さんに内緒にして下さい」
カオル「わ・・分かった。約束する」
カオル「ねぇ、レオ君!私ね、霊獣の翼を見てたら・・」
レオ「霊獣を間近で見ると、とても大切な人の姿や場所が浮かぶと言われています。でも、それは見た人だけの秘密。誰にも言ってはいけません」
カオル「・・・・レオ君にも見えたんだ」
レオ「・・はい」
―奇妙な岩と雲海
激しく反応する魔導具。

ザルバ「そろそろだぜ!」
鋼牙「あぁ・・」
ザルバ「来たぞ!」
迫りくるホラー・ズフォーマー。
剣を抜く鋼牙。
―冴島邸
ゴンザ「おかえりなさいませ鋼牙様」
鋼牙「あぁ」
―鋼牙の部屋
鋼牙「うっ・・ぁあ・・・・・うっ・・う・・」
胸の痛みに襲われるが、なんとか収まる。
魔導輪ザルバを台座に置く。
カオルの絵を見つける。
―次回予告
誰にでも大切な場所がある。
心が穏やかになる自分だけの聖域がな。
次回、『咆哮』
その叫びが静寂を破る!