高校生の加藤くんが体験した不思議な話。
加藤くんは高校でサッカー部に入っている。大体夕方四時くらいから練習が始まって、終わるのは六時半。それから片付けやミーティング、着替えなどをして、学校を出るのはもう七時を十分ほど回っている。
加藤くんは、学校から自転車で二十分ほどの場所に住んでいるので、自転車通学をしていた、他のサッカー部の部員はみんな電車通学、なので、加藤くんは学校から家までいつも一人で帰る。
時期は春の中頃、もう辺りは真っ暗。暗い夜道をしゃーっと車輪が回り、加藤くんが乗る自転車が帰路を走っていた。
途中に公園の横を通るのだが、そこは団地と公園の間の道で、車も通れないほどの狭い道だった。
自転車二台がすれ違うのに、スピードを落として注意しながらすれ違うほどの道を、加藤くんは軽快に走っていた。街灯も少ないので、前方に注意を向けながら走っていると、その道を抜けるところに女性が建っているのが見えた。
そこはT字路で、自分の左手前にあるカーブミラーの下に女性が立っている。
辺りは暗いと言っても時間は遅いわけではないし、見た感じ大人の女性のようだったので、気にはなったが、特に警戒などはしなかった。
近づいてわかったが、その女性は黒っぽい服、おそらくスーツを着て立っていた。加藤くんはそのT字路を左に
曲がるので、その女性の前を通り過ぎることになる。自転車がどんどん女性に近づいて行く。
そして、加藤君が女性の前を通り過ぎる瞬間、「ふふ」っと女性の声が聞こえた気がした。たまたま笑っただけかもしれないが、その声が不気味に感じて、ぞわっと悪寒がした。
怖くなったので、振り返らずにスピードを上げて家に帰った。
次の日、朝学校に自転車で向かう途中、昨日女性とすれ違った場所を通ったら、もちろんそこには女性はいなかったのだが、カーブミラーもなかった。
そこで気づいたのだが、普通ならばT字路にカーブミラーを付けるなら、左手前には設置しない。公園の道から人がくるか見るために、正面の壁のところに設置するはずなのだ。
昨日みた女性、そしてカーブミラーはなんだったのか、加藤くんはその日から通学路を変えて登校するようになった。