先日スーパームーンが顔をのぞかせた夜、奥戸サロンで、ワインエキスパートのNさんの肝煎りで、「寺島なすの餃子を楽しむ会ー世界のビール・純米酒・日本ワインとともに」という楽しい集まりがあった。
ナスの餃子は創作中華の巨匠・名人Wさんが10年越しに研究を重ねて満足のゆく味が出せず、あきらめていたところ、昨年の暮れに墨田区の関係者から寺島小ナスを使って餃子ができないかという話があって、試作を重ねた結果、寺島ナスを使うことによって、とうとう納得のゆくナス餃子を完成された。
寺島小なすというのは、関東大震災以降途絶えていた江戸の伝統野菜で、寺島村と呼ばれていた地域(玉ノ井界隈、今の東向島駅周辺)の特産で、数年前から復活栽培されるようになっていた。
http://www.yomiuri.co.jp/life/drink/dnews/20150707-OYT8T50138.html
寺島ナスを食材として、天ぷらはもちろん、なすジャムや肉味噌パンなど様々な調理品が開発販売されていることは、直前のアド街ック天国「向島百花園」の回で紹介されたばかりだった。
http://www.tv-tokyo.co.jp/adomachi/backnumber/20150926/118198.html
http://www.tv-tokyo.co.jp/adomachi/backnumber/20150926/118198.html
この日までに奥戸サロンの1階を使って、Nさんは日本酒、ビール、フランスワインの小人数の各講座を重ねてきており、その1週間前がフランスワインの講座だった。
その折りにゲストで参加されていたWさんが、寺島ナス餃子の披露会が墨田で予定されていることをもらされて、私も含めたその日の参加者がWさんにその餃子の試食を切望して、Nさんが急遽、墨田に先駆けてこの日の会を設定してくださったのだった。
Nさんは以前葛飾の地域SNSかちねっとのブログ(昨年6月)「起業とワインの講座」で紹介したこともあるが、元証券マンで中医学を修め、ワインエキスパートの資格をもつユニークな経歴の持ち主だ。去年デラウェアでワインを作る時も貴重なアドバイスをいただいたが、Nさんのお酒に関する講座はなるべく参加するようにしている。
http://hyocom.jp/blog/blog.php?key=248355
現在も各地のワイナリーや蔵元を訪ねて直に情報を集め、貴重な品々を仕込んでユニークな活動を続けている。
http://nomuras.blog.fc2.com/
この日は常連の図書館レディー4人と私が客で、Nさんの酒とWさんの煮込み(絶品)と手作りの寺島小なす餃子が主役だ。
お酒はビール4銘柄と、日本酒とワイン各1銘柄という豪華さ。
主役の餃子を引き立てながら、それぞれのお酒の香りや豊潤さや多彩な個性を楽しめるラインナップだ。
これで会費3000円は安すぎるが、Nさんは、自分の研修のためだからといい、家主のOさんの好意で会場費がかからないからだという。感謝。
以下この日の会のためにNさんが用意してくださったお酒の一覧によってざっと紹介しよう。
初めにワイングラスを6個ずつ各人のテーブルに並べ、Nさんの解説を聞いて、向かい合ったメンバー同士で順に、ラガービール2種(独レーベンブロイ、日オリオンドラフト)、エール(上面醗酵ビール)2種(英バスペールエール、白ヒューガルデンホワイト)を注ぎ合ってワインと同じ要領でテイスティングしてゆく。
様々な国の代表的なビールの多彩なテイストを味わったところで、Wさんが三日前から準備したというモツ煮込みの登場だ。全く臭みがなく、とろけるような味わいだ。格別な材料は使っていないが、繰り返しさらして臭みのもとになる血を徹底的に抜いてから時間をかけて煮込んであるという。
各国ビールのあとは百パーセント国産の純米酒と白ワイン。
生酛(きもと)系産廃純米酒の農口(のぐち)は能登杜氏四天王のひとり農口尚彦氏の無濾過生原酒で芳醇旨口の逸品、Nさんは冷凍庫で冷やして、薄氷が漂う状態で供された。
最後の白ワインは丸藤葡萄酒の甲州種、デラウェアの山梨産百パーセントを使ったルバイヤート甲州1993。長期熟成による繊細な香りと上品な甘さ。
そしていよいよ主役の寺島小なす餃子の出番だ。
狭いキッチンだが、何人か手伝わせてくれるというので、名人の業の一端に触れられる千載一遇のチャンスと見て、真っ先に志願した。
Wさんが事前に準備して会場のキッチンに用意してあった餃子の具と、皮の元になる小麦粉を練った固まりを丸テーブルの上に広げて作業にとりかかる。
具の緑色はニラでひき肉は豚とラム。香辛料にはインド原産のなすとの相性を考えてクミンを使っている。
寺島小ナスはすでに皮ごと縦に6等分されて他の具とともにまかれるのを待っている。
具の上にナスの皮を上にして置き、両側から餃子の皮を寄せて包むように巻くためだ。
そのためになすの厚さを調整して、余った部分はそぎ落としてひき肉とともに具のなかに練り込んであるという。
手際よく捏ね上げた大きな一塊から、直径3センチくらいの棒状の固まり3本くらいに分けて台の上を転がしながら形を整える。これを厚さ1,2ミリの円盤状に包丁で切り分けていく。
これを一枚ずつ麺棒で押し伸ばして直径10センチくらいの餃子の皮が完成する。
名人の伸ばした皮をお手本にして、麺棒を使って皮づくりに参戦させてもらった。
見ていると簡単そうに見えて、きれいな円形に延ばすのはなかなかむずかしい。
コツは中心よりに比べて縁を薄くするのだが、それは寄り合わせたときにその部分が厚くなってしまって熱が通りにくくなるからだ
皮づくりをメンバーに任せると、名人は具を入れてどんどん巻き始めた。
市販の冷凍の皮を使って巻くときは、合わせ目の縁を水で濡らしながらすることを思い出して、名人にたずねると、この手作りの皮は濡らさなくてもくっつくのでその必要はないとのことだった。
生ナスの軟らかさを生かす「加水量60パーセントの皮」が名人のたどりついた結論だということが、Wさんの下書きメモをNさんが整理して配布してくださった「“寺島小ナス餃子”が出来るまで」に記されているが、こんなところにも細部まで計算しつくされていることを実感した。
名人が焼きはじめたが、ここでハプニング。フライパンのふたがない!
家主のOさんが不在で、ここまでアウェーの窮屈さを感じさせなかった名人も一瞬焦ったが、勝手知ったNさんが隣りの納戸からガラス蓋を見つけ出して事無きを得た。
そして一皿目が焼き上がって、初試食の歓喜の時を迎えた。
何度試作してもナスのアイデンティティを十分表現した味にならず、一度はあきらめかけたナス餃子が寺島小ナスの出現によってようやく成功した。









