週末の皇居ランの帰りに、早稲田松竹に観に行きました。
ポン・ジュノ監督の2本立てです。
実をいうと、『母なる証明』は
昨年封切られたときに観ていたのですが、
忙しくて感想をブログにアップしないままでして・・・
今回、ついでということで再度観てきました。
『母なる証明』は殺人容疑をかけられた一人息子を救うため、
真実を求めて奔走する母親の話。
・・・というと、美談のように聞こえますが、
キム・ヘジャ演じるこの母親の執念が凄まじく、
どんどん怖くなっていきます。
ウォンビン演じるこの一人息子というのが、
可愛いけれどちょっと精神薄弱気味で、
己の潔白を証明できないという事情があるのですが、
それにしてもここまで暴走するか、というぐらい。
かと思うと、なぜか踊りだしたりと、
複雑な様相を呈してゆくストーリーも含め、
良くも悪くも翻弄されっぱなし。
過剰なまでの母の愛情を見せつけられ、
妙な疲労感が残るあたりも、前回と同じでした。
とはいえ、キム・ヘジャもウォンビンも演技が達者!
5年ぶりの復帰作でありながら、
難しい役柄に挑戦したウォンビンは相変わらずの透明感。
彼がいたいけな息子を演じたからこそ、
母親が捧げる盲目の愛が少し理解できたような気がする。
キム・ヘジャは韓国では国民的な女優らしいけれど、
その評価にも大いに納得。
溢れんばかりのその愛情表現に辟易しながらも、
目を離さずにはいられません。
そしてもう1本が、『殺人の追憶』。
これは韓国で実際に起こった
連続婦女暴行殺人事件の解明に挑む2人の刑事が主人公。
平和なはずの田舎で次々に起こる陰惨な事件。
事件そのものも十分恐ろしいんだけど、
事件に半ば取り憑かれたようになっていく、
刑事たちの感情の動きに、こちらもつい引き込まれていきます。
重苦しいテーマにも関わらず、
ちょっとした笑いまで織り込める余裕はすごいの一言。
被疑者のエピソードが多すぎて、少し中弛み感があるんだけど、
それを差し引いても、十分に面白い作品でした。
『息もできない』の素晴らしさに感銘を受け、
このところニガテだった韓国映画を観ることが増えてきました。
韓流ドラマが流行って久しいけれど、
私にとっての韓国映画は、一味違う印象。
韓流ドラマのような、わかりやすい古典的な展開ではなく、
社会の歪みやひずみをあぶり出し、
そこに生きる人々の感情を
余すことなく描く作品が多いような気がします。
空気を読むことが当たり前とされ、
人とのつながりが希薄になりつつある日本。
そんな日本とは対照的な、
強烈で濃密な人間関係を目の当たりにし、
心臓を素手でつかまれたような、そんな気持ちに陥ります。
もちろん、場合によっては胸やけもするんだけど、
観終わった後に、何かしら心にわだかまりが残るのは事実。
そのわだかまりの正体は定かではないけれど、
段々それが心地よくなりつつある、私なのでした。