あの日の帰り道から──  
私の中で、何かが変わり始めていた。
  



Oさんと話す時間が、ほんの少しだけ楽しみになっていた。  




現場に行くのが面倒なわけじゃない。  
ただ、ほんの1時間でも、彼と同じ空間にいられることが  
私の日常に、静かな“彩り”をくれていた。





それからも、何度か仕事の打ち合わせという形で会うことが続いた。  
現場での短い確認や、共有事項のやりとり。  
その合間に交わされる何気ない会話が、私は少しずつ、愛おしくなっていった。





でも──その時間にも、タイムリミットが迫っていた。





Oさんの担当は、もうすぐ終わる。  
私が彼と会えるのは、あとほんの数回しかないかもしれない。





「あと何回、会えるんだろう」  
「この人と、こうして話す時間が、終わってしまうのかな」




まだ、好きと自覚していたわけじゃない。  
でも、終わりが見えてくると、心がざわついた。  
セックスレスで苦しんでいた私にとって、  
女として扱われるわけでもないのに、  
なぜか満たされてしまう、この“何気ない時間”。





それが、静かに終わろうとしていた──