ベイジル・ラズボーン版ホームズ『シャーロック・ホームズ危機一髪』 | トンデモ・シネマの開祖

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シャーロック・ホームズ危機一髪
Sherlock Holmes Faces Death
1943年9月17日
ロイ・ウィリアム・ニール監督
原作引用:マスグレーヴ家の儀式

ベイジル・ラズボーン扮するシャーロック・ホームズとナイジェル・ブルーズ扮するおちゃめなワトソンのシリーズ六作目。
流石にナチスと戦いすぎたと反省したのかロイ・ウィリアム・ニール監督は突然、正典路線の推理サスペンスに話を引き戻す。

ゲスト女優はヒラリー・ブルック。
彼女は凸凹シリーズや『惑星アドベンチャー/スペース・モンスター襲来!』などの娯楽作では欠かせない女優だが、実は本国ではTV俳優という位置付けだった。
それだけに演技は手堅い。
本シリーズの「緑の女」で緑の女を演じたあの女優です!

また、本シリーズで五作に出演するレストレード警部役はデニス・ホーイである。
この人もTV俳優ではあるが、その強面の顔でコミカルな演技を見せてくれる。

今回は趣は原作の『マスグレーヴ家の儀式』に似ている。
しかし、内容全体は全く別物のパスティーシュになっている。

不気味な館マスグレーヴ家で主人が殺され、長男も殺される。
残ったサリーという美女にも危機が迫っている。

主治医として間借りしていたワトソン博士はこの奇妙な事件を友人シャーロック・ホームズに依頼して解決に向かう。
殺人事件の担当はロンドン警視庁のレストレード警部。

ホームズは当初、怪しげな召使いブラントンに目をつけるが、なかなか尻尾を出さない。
洋館には謎の迷路がいくつもあり、謎めいた言葉も時々出てくる。
何と言っても最大の原因は古びた貧困そうな洋館に何の理由があって、殺人が起きるのか?
理由がつかめないのだ。

そんな時、マスグレーヴ家に伝わる古の言葉を知り、ホームズはそれが暗号だと気づく。
そして今回の中盤の見せ場となる。
暗号の正体は【人間チェス】。
館の床をチェスの盤に、人間をチェスの駒に見立てて、謎の解明をするというもの。

その結果、謎は解かれるが、既に犯人が持ち去った後。
しかもそこにはブラントンの死体まで横たわっていた。
血文字があるなどと言ってホームズは現場保存を理由にハンカチを乗せて見せないよううにする。
しかし、これは犯人への罠だった。

罠にひっかかった犯人はワトソンを煙に巻き、屋敷に侵入。
待ち構えていたホームズと格闘。
逆に凶弾に倒れるシャーロック・ホームズ!
一体、何が起こったのだ!

今回も面白いオチがある!
それは最後の最後まで予想がつかない。
そのサリーの意外な行動とは?

流石に2本に一度という打率で傑作を生むラズボーン・ホームズ・シリーズもここで少し迷走し始めたが、やはり駄作というわけでない。
ホームランは打たずとも三塁打は必ず打つのがこのシリーズの素晴らしいところ。