先日けろたんさんから頂いたコメント
の中で、「経済成長率と
長期金利」の関係について記述されている箇所がありました。
その点について興味を持った私は、「経済成長率と長期金利」
の関係や、なぜそれが現在政府で議論の的になっているのか
を調べてみることにしました。以下はそれを整理した内容です。
■名目成長率と長期金利とは
名目成長率・・・物価上昇率も含んだ経済成長率
=実質成長率+物価上昇(インフレ)率
長期金利・・・10年物国債の利回り、と考えてよい
■名目成長率と長期金利を巡る議論
経済財政諮問会議(議長・小泉首相)で行われている
「歳出・歳入一体改革」の議論の中で、名目成長率と
長期(名目)金利の今後の見通しが、
2005/12/26のH17年第31回経済諮問会議
以来、争点
となっていた。財政健全化を考える上で、長期(名目)
金利が名目成長率を上回るという前提で進めてゆくべき
なのか(吉川)、はたまたそうとは限定せずに進めるべき
(竹中)なのかということが争われていたのである。
2006/3/16のH18年第6回経済諮問会議
では、この点に
つき現時点で結論は出さず、複数の前提を想定しておく
ということで決定した。
ケース1・・・名目成長率(3%)<長期金利(4%) [-1%] (吉川 )
ケース2・・・名目成長率(4%)=長期金利(4%) [±0%] (竹中 )
ケース3・・・名目成長率(2%)<長期金利(4%) [-2%]
ケース4・・・名目成長率(4%)>長期金利(3%) [+1%]
※ [ ]内は名目成長率-長期金利
これが争点となっていた理由は、上でも少し述べたが、今後
財政健全化をどのように図ってゆくかという方針を決める
際に、前提となる問題だからである。この見通し次第で、
今後の債務残高の対GDP比
見通しも変化する。(吉川議員資料
)
そしてそれが、6月に中期的な政策運営指針である「骨太
の方針」における消費税率を含めた税制改革に大きく
影響を及ぼすからだ。
ちなみに1990年から2004年までの統計では、
名目成長率=長期金利 +[-1.5%]
(名目成長率<長期金利)となっている。
しかし1980年までの日本、近年のアメリカでは、
名目成長率>長期金利となっており、必ずしも
名目成長率<長期金利となるわけではない。(三菱
総研
)
■財政健全化
財政健全化とは、平たく言えば、国の借金を減らしてゆこう
という意味である。周知の通り、国・地方の債務は非常に大き
な額となっている。
債務の残高は2005年12末時点では、813兆円(財務省
)にも
膨れ上がり、2005年の名目GDP503兆円(内閣府
)対して、
160%にも上っている。この値を他の先進諸国のそれと比較
した場合、異常な数値であることはすぐに分かる。(財務省
)
この公債残高対GDP比の値を持続的に低下させるべく現在
政府は取り組んでいるわけだが、そのためには歳入と歳出
のバランスを如何に設定すればよいかと議論しているのである。
これが「歳出・歳入一体改革
」とよばれる所以で、具体的目標
は2010年代初頭に、プライマリーバランス
(基礎的財政収支)を
黒字にすることとしている。プライマリーバランスを黒字にするとは、
借金返済を除く歳出は全て税収でまかない、かつ余った税収を
過去の借金返済に少しずつ当てていこうというものである。しかし
現在はプライマリーバランスが赤字となっており、税収で社会保
障費等の歳出をまかないきれず、さらに当年度の歳出を補うため
の国債を発行している。そのため、毎年借金が積み足されていっ
ているわけである。(ソフテックス
、財務省
)
■プライマリーバランス(PB)と名目成長率・長期金利
では、PBを考える上で、名目成長率と長期金利の見通しがなぜ
必要になるか?ということだが、これはどの程度、増税(消費税
UP)が必要になるかの判断に影響してくるからだ。
竹中大臣の資料P1
によると、公債残高GDP比が下がるには、
PB黒字対GDP比+(名目成長率-長期金利)×1.5>0
となる必要があると記されている。
(この点については、吉川議員も同様のことを述べている。)
つまり、吉川議員が想定する、名目成長率3%、長期金利4%
の場合、PB黒字は1.5%程度必要になる。
一方、竹中大臣が考慮に入れるべきだとしている、名目成長率
4%、長期金利4%の場合、PB黒字は0%つまり、PB均衡でも
いいということになる。
先に述べたがPB収入は税収から成る。PB黒字が1.5%必要
になるということは、歳出削減の努力、増税によって、GDPの
1.5%に当たる黒字を捻出しないといけない。GDPを500兆と
仮定した場合、7.5兆円の黒字が必要となるわけである。
2005年度のPB赤字が約15兆なので、同じ前提だとすれば
22.5兆歳入を増やさないといけない。
これをすべて消費税引き上げによってまかなうとすると、
現在消費税5%で約10兆(財務省
)なので、+11.25%消費税
が引き上げられる計算になる。(消費税率;16.25%)これでよう
やく公債残高GDP比が下がってゆくボーダーラインとなる。
一方、PB均衡でいいということになれば、約15兆歳入を増やせば、
(歳出を減らせば)公債残高GDP比が下がってゆくという見方になる。
ちなみに、上のケース4の場合(名目成長率4%、長期金利3%)
ならば、PB赤字1.5%(-7.5兆)でも公債残高GDP比が下がっ
てゆく、という極めて楽観的な見方になる。しかしそれでも7.5兆
歳入を増やさないといけない。(歳出を減らさないといけない)
このように、「経済成長率と長期金利」の見通しを巡る議論は、
最終的にどれぐらい増税をする必要があるか影響してくる大変
重要な議論なのである。ひとまず、現時点では結論はでなかっ
たわけだが今後、どのケースを最終的に想定して政策を立てら
れるかは私達の税金にも関係してくる話なので注目していく必
要がある。
【参考】
■GDP成長率と税収、GDP成長率と長期金利
GDPが成長するということは、企業・個人の所得や投資・消費
が上昇するということなので、自然に税収も増える。しかし、
GDPが成長するということは、長期金利の上昇も引き起こす。
そのため、国の歳出(国債利払費)も増えるわけである。
GDPの成長率と長期金利の関係には相関性があるとは言え、
歴史的に成長率>長期金利となったり、成長率<長期金利
となったりと、この関係が統計上安定的だとは言えない(三菱
総研
)ため、議論の的となっている。
■民間による名目成長率と長期金利の展望
名目成長率>長期金利が妥当 ( 大和総研
)
■名目成長率と長期金利の具体的データ
名目(0.5%)=実質(1.7%)+インフレ(-1.2%) 【2004年】
長期金利・・・1.320% 【2004年】 (日経
)
GDPの推移・・・wikipedia
※デフレとは、インフレ率がマイナスになること
(参考)長期金利の決まり方・・・日銀