原子炉の外の危機 2011年04月08日02:30
福島原発の異変が伝えられた翌日から、各国の気象機関やメディアが放射能汚染拡散シミュレーションを公開しています(下記1~6参照)。テレビニュースなどで、目にされた方もいらっしゃるでしょう。
これらのデータがなぜ気象庁や原子力安全委員会から発表されず、海外メディア等のクレジット入りの映像を日本の報道各社が拝借しているのか。その理由の一端が、7の記事にうかがえます。日本気象学会が会員の研究者らに、放射性物質の影響を予測する研究成果の公表を自粛するよう求める通知を出していた、という報道です。

周知のとおり東京電力は、低レベル放射性廃液の海への意図的排出すら、漁業関係者への事前通告なしに強行しました。一部にはその緊急性が疑問視されていた措置であるにもかかわらず、1万1500tという大量の汚染水を、何らの説明もなく海に放出したのです。
この暴挙に対して、全国漁業協同組合連合会が出した抗議文が8、福島県漁業協同組合連合会の抗議文が9です。海と暮らし、海と運命を共にしてきた人々の憤りと慟哭が、行間にまで漲っています。

10は、気象庁が国際原子力機関(IAEA)の求めに応じて作成した放射能汚染拡散シミュレーションを、日本国内では3週間以上非公開としていたことを報じたもの。逆輸入のような形でようやく公開された資料(11)は、すべて英文で書かれており、抄訳すらありません。そう、これらは、被災者や日本で暮らす人々のために作成されたものではないからです。原子力「平和利用」(つまり原発)の促進を目的に掲げた、IAEAのために作成された資料なのです。

そして一昨日、「東日本大震災に係るインターネット上の流言飛語への適切な対応に関する電気通信事業者関係団体に対する要請」と題する総務庁局長通達が発されました。
「地震や原子力発電所事故に関する不確かな情報等、国民の不安をいたずら にあおる流言飛語が、口伝えや電子メール、電子掲示板への書き込み等によ り流布されており…(中略)…サイト管理者等に対して、法令や公序良俗に反する情報の自主的な 削除を含め、適切な対応をとることを要請」するというものです。
最初にTwitterでこのニュースを知ったとき、これこそ「流言飛語」の類ではないかといぶかしんでいました。実在の通達であることを確認し、さすがに言葉を失いました。この日記も、いずれ削除対象となるのでしょうか? 彼らは、何を隠したがっているのでしょうか? そうまでして護りたいものとは、いったい何なのでしょうか? そして、その結果切り捨てられるものとは?

これまでも、被災地は無防備なまま汚染に曝され続けてきました。水素爆発の可能性が報じられることも、ベント時の事前通告も、一切ありませんでした。耳にタコができるほど「ただちに健康上の…」というアナウンスが繰り返された挙げ句、いまや30km圏外にも退避勧告が検討されています。大気、海、土壌… そして、命。そこでいま生きる人々の生活や命よりも大切なもの、優先すべきものとは、一体何なのでしょうか? 

すでに汚染の報告は、世界各地から寄せられています。一方日本では、何一つ事態が好転しないにもかかわらず「小康状態」が伝えられ、奇妙な沈黙と閉塞感がメディアを覆い尽くしています。今日もテレビは、「ただちに健康上の…」というアナウンスを繰り返すことでしょう。

いま、このささやかな「執行猶予」の時をいかに過ごすかが、今後の進み行きを大きく左右する気がします。
見つめ続けること。それが地獄に続く途なのか、かすかな希望に繋がる途なのか、見極めて歩むこと。
原子炉の中の危機には直接関与できない私たちですが、原子炉の外の私たちの生活圏を静かに浸食する危機に対して、できること、しなければならないことは多いと感じています。

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1.ドイツ『Spiegel』による放射能汚染拡散にシミュレーション(3月12~17日)
http://infosecurity.jp/archives/8012

2.アメリカ『ニューヨークタイムズ』による放射能汚染拡散にシミュレーション(3月12~18日)
http://www.nytimes.com/interactive/2011/03/16/science/plume-graphic.html?ref=science

3.フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)I「放射能汚染拡散シミュレーション(セシウム137)」(3月12~20日)
http://www.irsn.fr/FR/popup/Pages/animation_dispersion_rejets_17mars.aspx

4.ドイツ気象局「放射能汚染拡散シミュレーション(セシウム137、ヨウ素131)」(3月20日)
http://www.dwd.de/bvbw/generator/DWDWWW/Content/Oeffentlichkeit/KU/KUPK/Homepage/Aktuelles/Sonderbericht__Bild5,templateId=poster,property=poster.gif

5.イギリスWeatherOnlineの放射能汚染拡散シミュレーション(ヨウ素131、セシウム137、キセノン133)(4月6~10日)
http://www.weatheronline.co.uk/weather/news/fukushima?LANG=en&VAR=nilujapan131&HH=33

6.ノルウェー気象研究所(NILU)の放射能汚染拡散シミュレーション(上からヨウ素131、セシウム137、キセノン133)(4月6~11日)
http://transport.nilu.no/products/browser/fpv_fuku?fpp=conccol_I-131_;region=Japan
http://transport.nilu.no/browser/fpv_fuku?fpp=conccol_Cs-137_;region=Japan
http://transport.nilu.no/browser/fpv_fuku?fpp=conccol_Xe-133_;region=Japan

7.Asahi.com「放射性物質予測、公表自粛を 気象学会要請に戸惑う会員」(4月2日)
http://www.asahi.com/national/update/0402/TKY201104020166.html

8.全国漁業協同組合連合会「福島第一原発放射能汚染水放水に対する抗議」(4月5日)
http://www.zengyoren.or.jp/oshirase/pdf/toudenkougibun.pdf

9.ウォールストリートジャーナル日本版「福島漁連、低濃度汚染水放出で東京電力に抗議」(4月7日)
http://jp.wsj.com/japanrealtime/2011/04/07/福島漁連、低濃度汚染水放出で東京電力に抗議/

10. 産經ニュース「気象庁がIAEA報告の資料を公表」(4月6日)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110406/dst11040621070059-n1.htm

11.気象庁「IAEAからの要請と当庁が作成した資料一覧」(3月11日~4月6日)
http://www.jma.go.jp/jma/kokusai/eer_list.html

12. 総務省「東日本大震災に係るインターネット上の流言飛語への適切な対応に関する電気通信事業者関係団体に対する要請」(4月6日)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000110048.pdf
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YUkoTakahashiのmixi転載です。
理不尽な「最善のシナリオ」 2011年04月02日18:00
各国から日本へ、続々と救援・支援の手が差し伸べられています。福島原発事故に対しても、原子力大国アメリカ、フランスをはじめとする各国政府・企業・団体が、分野別にエキスパートを派遣し、さまざまな助言や実務を行っています。

福島第一原発は、報道によれば「一定の小康状態」を維持していると言われています。もちろん公表されている情報は不充分きわまりないものですし、不測の事態によって大きく暗転する可能性を常にはらみ続けていることは間違いないでしょう。しかし、少なくとも空中に放出されて続けている放射性物質の量は「一定」の水準に保たれ、トレンチの溜まり水も海にあふれる寸前でギリギリ食い止められているかに見えます。2号機のピットから海へ漏れ出した水も、遡って経路を特定することができれば、「朗報」といえなくもありません。
「最善のシナリオ」を想定すれば、――つまり、いまおぼろげながら把握されている以上の原子炉設備の破損や強い余震、電源回復に際しての不測事故、…等々が今後まったくなく、いま不穏な挙動を見せている福島第二原発にも問題がなく、手を打った対策がすべて期待以上の効果をあげれば――、現在のような大気への放出(人為的なものも含め)と土壌への降灰、地中への漏洩(地下水汚染も案じられますが)、海への垂れ流しが地味に続く、ということになるでしょう。

地上に降った放射性物質の飛散を水溶性合成樹脂の散布で抑制するという方法は、付け焼き刃的手法ながら、成功すれば一定の効果はあるのではないかと考えます。恒久的な対策ではないので、効果がどれだけ持続するのか、次の手を打てるか、原発周辺の作業環境が改善し採り得る選択肢が広がるのか、いずれも未知数の部分はありますが。

検討が伝えられる、布あるいは遮蔽物で原発を覆うという方法も、外部からのコントロールが困難になるため諸刃の刃ですが、拡散量を減らすという目的から考えれば一定の理解はできます。破壊された建屋の一時的な代用と考えれば、きわめて不充分ですが、やらないよりはるかにマシかもしれません。
あくまで私の推測ですが、単純に飛散量を減らす目的ならば目の細かいフィルター状の特殊布を用いることになるのでしょうか。あるいは、今後の推移を折り込んで、鉛のライナーを貼った不織布など放射線防護効果も期待できる素材を使うのかもしれません。
しかし、いずれにせよ、外部から覆われ狭い空間に閉じ込められた原発内では、作業環境はいっそう苛酷なものになるでしょう。

海の汚染を食い止める方策は、いまのところ決定打がないようです。まだ漏洩箇所が特定できていないため、注入した水を一部は垂れ流し、一部は玉突き移動する、という方策がとられているのは、周知の事実です。しかし、新たな予備タンクの設置が間に合えば、高濃度汚染水の流出が等比級数的に増大するという事態は当面回避でき、その間に別の方法を探る時間的な余裕が生まれます。これもあくまで個人的な推測ながら、別の場所で作った再循環ポンプを後付けすることで、流出する水のバイパスを作り、再び炉内に戻すといった裏技も飛び出すかもしれません。人の手で行おうとすれば殺人的行為ですが、原子炉の温度圧力が安定し作業の一部を無人で行える環境が仮に整えば、…と、希望もこめて想像します。
もちろんこれも、すでに多重防護の壁に穴がある原発がギリギリ持ちこたえ、さらに炉内温度圧力が安定していてくれれば、の話です。すべては、「最善のシナリオ」です。

それでも、知人を介して送られてきたNPO法人ピースデポ湯浅一郎氏(海洋物理学、沿岸海洋環境学)の以下の見解は、深刻な状況を予見しています。

(以下引用)-------------------------------------------------------------------------------------------------

大気経由の放射性物質の放出は、原発周辺を除けば、かなり減っています。関東まで放射能雲が及んだのは、15日、16日に2回、断続的に来ていますが、文科省の測定から分布を視ると、海沿いに南下した放射能雲が、関東平野の中へと入ってきた感じで、水戸や宇都宮は、かなり高かったようですが、埼玉、東京、千葉、神奈川では、痕跡が見える程度でした。山梨、長野、新潟、山形、宮城には、余り行っていません。その分、半分以上は、海に行っていると推測されます。
23日ころ、沖合30kmの海水からヨウ素が検出されていましたが、これは、大気経由だと思われます。
これからは、海への一次冷却水と思われる水の放出が、一番懸念されます。電気は通じても、二次冷却系(いわゆる温排水が動く経路)が動かず、かつ一次冷却系も、地震などで各所に損傷があるとみられます。一次冷却系を手動で冷却し続ける以外に手だてはない。手動で、水を注入し、手動で水をはき出す。これを継続するしか手がない。で、あれば、一次冷却水の漏れ、ないし意識的な放出は続きます。南に10kmにある福島第2原発の辺りでも、濃度が高くなり始めているので、今後、数ヶ月とかに渡り、継続すると、「世界三大漁場に集まるプランクトン、魚類の食物連鎖を通じた濃縮過程」が、懸念されます。今、黒潮は、銚子の沖で、東に向かう進路を取っており、福島沖には親潮の分枝が来ていて、南に流れているものと思われます。これが、銚子沖辺りに到達すると、黒潮と親潮がぶつかり合い、潮境を形成し、豊かな漁場となっています。
潮境には、収束域なので、色々な物質が集まってくるのですが、集まって欲しくない放射性物質が集まっていき、何か悪いことが起こりかねないと心配しています。

(引用ここまで)--------------------------------------------------------------------------------------------

…と、ここまできて、私にはいくつかの疑念が生まれます。その疑念は、トレンチの溜まり水報道に接した日からむくむくと生まれ、「最悪のシナリオ」とは違った不安を与えています。
すべてが本当にうまくいったとして、その汚染水タンクはどこでどのように保管されるのか?
冷温停止後しばらくしたら壊れかけた炉から取り出される可能性のある、一度溶けて固まった被覆管なしの核燃料は、どこでどのように保管されるのか?
仮に福島原発内で保管されるとしたら、いったいどのような方法で?

すぐにぴんとくる地名があります。青森県の六ヶ所村。低レベル放射性廃棄物埋設センター・高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター、核燃料再処理工場等を広大な敷地内に備えた核燃料サイクル基地。相次ぐトラブルとトラブル隠しが発覚し、昨年10月に予定していた稼働開始時期を2012年10月に2年延期(実に18回目の延期です)している日本原燃の原子力コンビナートです。

1960年代にまでさかのぼる青森県の「むつ小川原開発」は、鉄鋼、石油…とその時々に姿を変えて持ち込まれるコンビナート建設計画に翻弄され続けた歴史を持っています。疲弊しきった北の寒村に最後にやってきたのが、誰も欲しがらない原子力コンビナートでした。

首都圏の繁栄を下支えする福島、その後始末をする六ヶ所村。これまでの構図が、今回も不思議なくらい合致します。
いま福島原発でとられようとしている措置は、何より首都圏への汚染拡散を防ぐために、福島を見えない特殊布で覆うような計画に映ります。
そして、そこで持ちこたえられない汚染を、おそらくさらに北へ運ぶ計画でもあるのではないかと危惧します。

石原慎太郎東京都知事は、今回の震災・津波を「我欲を流す天罰」と呼び、「私は原発推進論者です、今でも」「東京は絶対安全だ」と豪語しました。イラストレーターのみうらじゅん氏は、ある誌面でこの天罰発言を引き、平素のウィットをかなぐり捨て「お前に落ちろ」と書きました。この感情を私も共有する者ですが、同時に「お前」は「私」であり、象徴的には「東京」であることを、痛みとともに認めざるを得ません。
にもかかわらず、拡散する放射性物質の食い止めがわずかでも可能なら、樹脂散布や特殊布を「必要」と考える、もう一人の私がいます。これは、大きな矛盾です。その矛盾の捌け口は、どこへ向かうのでしょうか。

「最善のシナリオ」のなかで、いま私が一番怖れているのは、人工降雨という手段です。ヨウ化銀などの砲弾を空中に打ち上げて人工的に雨雲を作り上げるこの措置は、チェルノブイリ原発事故の後、首都モスクワへの大量降灰を食い止めるためにとられ、放射能雨はベラルーシの人々の上に降り注ぎました(下記URLは英文記事)。

http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/1549366/How-we-made-the-Chernobyl-rain.html

すでに日本に上陸した各国アドヴァイザーたちは、梅雨の時期を見据えたオペレーションを検討していることが報じられています。アメリカもフランスも、「原子力ルネサンス」と称した脱原発潮流に対する逆行をいち早く打ち出した、原発推進国です。

福島をベラルーシにすることは、決してあってはなりません。六ヶ所を丸ごと高レベル汚染水タンクにすることは、断じて許されることではありません。

放射性物質拡散防止の観点から、原発敷地内および周辺でとられる措置の必要性を認めざるを得ない私ですが、それは、そこに暮らしていた人々の生きる場を、気の遠くなるほど長い間奪い続ける措置でもあることを、いま改めて自覚したいと思います。そして、その人々の痛みをいったいどうしたら分かち合えるのか、考え続けていきたいと思っています。

福島や北関東の農作物、食肉・酪農製品、海産物、等々は、全品検査の上、現行の暫定基準値を上回るものについては政府が買い取り、下回る食品については数値を明示して首都圏に出荷すべきです。そして、東京および首都圏の「大人たち」は、自覚的にそれらを摂取すべきだと思います。
いままで私は、たとえ自分が食べるという選択をしたとしても、他の方にあえてお勧めする意図はありませんでした。しかし今、想いを同じくする人々が増えていくことを、心の底から希っています。
日々、それらの食物を口にし、水を飲み、呼吸しながら、原発についてこれからも考え続けていきたい…それを「天罰」と呼ぶなら、私は甘んじて受けようと思います。

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yuko takahashi さんのmixi転載です。