安倍とブッシュは友達になれるだろうか | カフェメトロポリス

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イラク問題をめぐってホワイトハウスは窮地に立っている。イラクの国内の混乱は高まっており、議会の多数派である民主党のイラクからの米軍撤退要求、ブッシュ政権のネオコンの中心派のスキャンダルなど、ブッシュ政権がいわゆるlame duck (任期最終で政治的影響力を失った大統領) 化するなかで、安倍首相の最初の訪米をニューヨークタイムスが報じている。

同盟から友好へというタイトルのSheryl Gay Stolberg署名の記事。

http://www.nytimes.com/2007/04/27/washington/27abe.html?hp

昨年11月、ベトナムでミーティングしたときに、安倍首相はブッシュ大統領に対してちょっとした贈り物を持っていった。

ワシントン郊外のコースで、彼の祖父がアイゼンハワー大統領とゴルフをしている一枚の古い写真だ。

昼食後の庭園の散歩のときに、ブッシュは「私は首相に、すぐに米国においでくださいと言ったのです。」といった。

安倍氏は、外交的というよりは個人的な関係を育成するために二日間のワシントンへ滞在することを大統領に対して提案した。

ブッシュ氏と安倍氏には少なくとも一つの共通点がある。

一流政治家の家系の出身だということだ。

安倍氏の祖父は首相で、父親は外務大臣だった。

ブッシュ氏の祖父は上院議員で、父親は41代大統領である。

こういった共通点はあるものの、両者、安倍の前任の小泉・ブッシュほど密接ではない。

小泉の派手な個性と、エルビス・プレスリーのファンであることなどがブッシュの心をとらえた。

小泉と同じような扱いを安倍に対して期待する日本の大衆の眼に向かって、ホワイトハウスは、工夫をしている。戦略連携を友好関係へと変え、リーダーたちに実質的な議論をするために十分な時間を与えようとしている。

貿易、地球温暖化、北朝鮮の核軍縮などの話題もあるが、男同士の仲間意識づくり(to do a little male bonding)にも時間を使えるようにという配慮だ。

こういった考え方から、安倍首相夫妻には公式晩餐会は予定されていない。かわりに、木曜日の夜にホワイトハウスの大統領邸において、ブッシュ大統領、大統領夫人、日米の大使夫妻、プロゴルファーのベン・クレンショー夫妻などによる内輪の集まりだけが予定されている。(クレンショー夫妻は、ゴルフ好きのブッシュ大統領の仲の良い友達であり、安倍首相もゴルフ好きということもあって招かれている。)

金曜日には、二人はキャンプデービッドへ行き、会談を行い、メリーランドのCatoctin山にある大統領の山小屋というのんびりとした雰囲気の中で、通常のホワイトハウスにおけるよりは小規模のプレスミーティングを行う。ここは、ブッシュ大統領がマウンテンバイクに乗るために良く訪れる場所である。

安倍首相は、さほどバイクファンではないようだが、かなりの野球好きのようで、日本政府関係者は木曜日に、二人がキャッチボールをできればと考えていると語った。

小泉首相が、頻繁にキャンプデービッドを訪問していたということも踏まえて、シンボルとしても重要なのである。

国家安全保障会議( National Security Council)のアジア担当シニアディレクターのDennis Wilderは、インフォーマルなディナーになった理由に対する質問に答えて「公式の行事に縛られずに、個人的に良く知り合う時間を得ることを両者ともに心から望んでいる」と述べた。

ハノイで、ブッシュ夫妻は安倍夫妻と親交深めたといわれている。

普通の人間が親交を深めるには時間がかかるものだが、世界のリーダーたちにはそんな贅沢は許されない。数時間、長くて1日といったところだ。

国家安全保障会議のアジア担当のMichael J. Greenによると、ブッシュと小泉は本当に仲がよかったという。彼らの会談は政治的に実体のあるものだったが、実際、彼らは友達が語り合うような内容についても随分話し合っていた。彼らの結びつきは、グレースランドやメンフィスでプレスリーゆかりの場所へ、二人で旅行をしたときに頂点に達した。

前任者には国内における人気においても及ばない安倍氏がこういったことの真似をするのは難しい。

戦略・国際問題研究所(CSIS)のアジア担当のKurt Campbellは次のように言う。

Abe-san both has a great burden and a great benefit. The benefit is that U.S.-Japan relations have been taken to another level, given the closeness of the relationship that existed between Koizumi and the president. But the burden is that he is following in the footsteps of a relationship that would be difficult to replicate.

安倍さんは大きな重荷を背負っている。そして同時に大きな恩恵も受けることができる。恩恵の方から言えば、小泉首相とブッシュ大統領の間に既に存在する深い友好関係を前提に、既に日米関係はより深いレベルに移行しているという事実である。重荷の方は、なかなか真似のできない前任者の軌跡をたどらざるをえないということだ。

小泉・ブッシュ間にこれほどの親密さが生まれたのには、タイミングの良さという理由もある。知り合ったのが、ブッシュ大統領就任直後で、ホワイトハウスがイラク戦争で弱る前で、北朝鮮の核強化を巡って日米間に若干の政治的緊張が高まる前だったということである。

第二次世界大戦時の慰安婦問題についての首相のコメントも、両者の関係を深めるのにプラスに働く性質のものではない。

安倍首相はこの件について、ブッシュ大統領に電話で説明をしたという。木曜日の議会トップとの会談では、心から慰安婦の方々には同情するという発言をした。

ホワイトハウスには、小泉首相と安倍首相のこんな違いをハイライトする意図はまったくない。日本はいずれにせよイラク再建における重要な経済的貢献者であり、ブッシュ大統領の自由の観念ともうまく繋がる、民主日本に対する強固なビジョンを安倍氏も小泉首相から受け継いでいるからだ。

首相の歴史観もブッシュ大統領にはアピールするだろう。安倍氏の祖父である岸信介は、日米安保条約が、国民からきわめて不人気だった時期にそれを推進し、その結果退陣に追い込まれたのである。

先ほどのGreen氏は次のように言う。

I think Abe has a very strong s his sense of destiny to implement the vision of Japan that his grandfather had. I think that resonates with President Bush, who also has a very strong sense of his own roots.

安倍は、彼の祖父が持っていた日本に対するビジョンを実行することが自分の運命であるという強い信念を持っている。この点は、自らも自分の出自を強く意識するブッシュ大統領の心に強く響くだろう。

安倍氏が贈り物として、ブッシュ氏に渡した古い写真には、「ブッシュ大統領へ、過去から未来へとつながる、我々の家族ぐるみの友情を。安倍晋三」とサインされている。(以上)

ここしばらく、日米関係が、英語メディアにどのように報じられているかを、丁寧に追いかけてみようと思う。外交力というものが小国日本が生き残る道なのだから、国民の一人として、意識を高く持って、自分ができるところからはじめようと思う。それがぼくにとっては、丁寧に英語の新聞を読むということなのだ。