陽介の家の前で単車を止めた。


『びっくりしたぜ。お前、本当にSCREAMの5代目になるのかよ?』


『まぁな。願ってもないチャンスだ。』


『しかしよく4代目の泊も納得したなぁ。』


淳は明日の大会終了後からSCREAMの5代目として活動を開始すると告げた。


そして拳銃を陽介から受け取ると、小さな声で言った。


『明日、最後だな。』


淳はまだ何か言いたげだった。陽介は頷き、次の言葉を待った。


『俺は、あの日、野見山を切った・・・これが聞きたかっただろ?』


『マジなのか?』


『あぁ。俺はトオルを警察から守ることを優先してしまった。』


その後、野見山があそこまでブチ切れた行動を取るとは思っていなかったと釈明した。


淳が陽介に頭を下げる。


今日は野見山に早く務めを終えて出てきて貰えるように、あえて突放したとのことだった。


『もう合わせる顔がねぇよ。』


淳の目に涙が浮かんでいる。


陽介はてきとうに慰めることができいタイプだ。


ただ黙って頷くばかりだった。


しばらくして沈黙を破った。


『おい5代目。警察はお前をパクるのに力を惜しまないだろうよ。』


『俺は負けない。大丈夫だよ。以前のように自由に走れる時が来る。』




ついに大会最終日。

午前から個人競技の決勝レースが始まる。

フィナーレは中学対抗の男女のメドレーリレーの決勝である。


会場は満員だ。


アザのできた2人の顔を見たキャプテンの貴司は呆れて声も出ない様子だ。


陽介は淳の告白で心のつっかえが取れた分、陽気だった。


大丈夫、大丈夫と繰り返し、調子の良さをアピールした。


『お前、テンションだけだな。』


貴司がようやくまともに声をかけた。


『いやいや、今日で水泳とオサラバだと思うと嬉しくて嬉しくて。』


『ほぉ。最後ぐらいちっとはマシな泳ぎしろよ。』


一人だけ入念に長めのアップを行った陽介は、体を拭きながらレースに備えてスタンドへと戻った。




『おい、ご機嫌だな三浦。』


トオルに首根っこを掴まれ、野見山が何処に行ったかを尋ねられた。


『ノミの行方は正直わかりません。喧嘩別れっすね。』


トオルは珍しくそれ以上質問攻めをしてこない。


陽介は午前中からトオルが来ていることにびっくりしていた。


『野見山の事は悪く思わないで下さい。』


『そうか。』


トオルは直ぐに陽介を解放した。





淳は早めにアップを終え、コンディションを確認すると、一人でスタンドに戻って行った。



『おはようございます。今日もいらしてるんですね、監視、お疲れ様です。』


右手にタオルを巻き、水着姿の淳は言った。


『おはよう・・・。』


背後から光恵の腰に銃が突きつけられる。


光恵は振り返ることができない。


『この度、SCREAMの5代目に就任しました。』


『淳君でしょ・・・?どうしたの急に?』


『僕をパクりたくて仕方がないアナタにとって、お望み通りでしょうに。

この銃は野見山から預かりました。光恵さんへとの事です。』


『そ、そんな。困るわ。』


『受け取って貰わないと僕も困るんですよ。』


『で、でも。』


淳は強く銃口を腰に押し付けた。


『あんまウロチョロされてもねぇ。』


『・・・』


『あげるのは弾だけですよ。野見山は撃ち込んで来いやと言ってまして。

僕の事は捕えて貰っても結構です。そのかわり、アナタの命はありません。』


『やめて。銃をしまいなさい。』


『お前のせいで何人パクられたと思ってんだよ。』


『誤解よ。』


『誤解でも何でもいいんだよ、もう。ちょっと来いよ。』


淳は光恵を連れてスタンド席から消えた。