『せっかく会いにきたのによぉ、随分ご機嫌斜めだな、淳。光恵さんもお前も俺を煙たがってるわけだな?
よく分かったぜ。』
淳の顔を睨み付けて野見山はそう言った。
『その通り。まとめるとそういうことだ。』
『これで、俺とお前は何の繋がりも無くなる。覚悟はできているのかよ?』
『何の覚悟だ?』
『俺をハメといて無事に家まで帰れるとでも?』
『ははっ。警察はすぐ来るぜ。電話1本でよ。それでジエンドだ。』
淳は勝ち誇った態度でそう言った。野見山は眉間に皺を寄せた。
興奮し始めた野見山には淳の言っていることがよく分からなかったようだ。
3秒ほど、ただ前を向いて運転をした。
淳が再度口をひらこうとした瞬間、
しかめっ面の野見山は言った。
『随分ノンビリした発想だな。』
いきなり拳銃を取り出し、淳に向けて発砲した。弾は単車に命中し、淳は転げ落ちた。
ハンドルをきりながら急ブレーキをかけた野見山は、そのまま淳のところまで歩き、
朦朧としている淳に蹴りをブチ込んだ。
『そういや、3代目の襲撃をお前は見てなかったよな?』
淳は全く動けなくなっていた。
『あぁ。、見ちゃいないよ。何度も聞かされたけどな。』
『じゃあ見せてやるよ。』
『待てよ。これは言わせろ。
お前が余計な行動をとらないようにと、念の為に渡しといたよなぁ、お前にだけSCREAM襲撃計画書をよぉ。
その時、俺は何て言って渡したよ?』
『知らねぇな。』
『絶対捨てろって言ったはずだったが?』
『捨てた・・・かな?もう無いよ。』
『無いじゃねーよ。今、俺が持ってんだよボケ。お前、スポーツバッグのポケットに突っ込んで忘れただろうが!』
『かもな。でも、それがどうした?』
『それを書いたのが俺だと思われたらどうするよ?CANDYがSCREAMを襲撃したことはもうバレバレだから目を瞑るとしてだ、
お前だけに渡してんだぞ、こっちは!』
『テメェが俺をハメようとして嘘ばっか書きやがるのが悪い。』
『何一つ嘘は書いてねぇ。ただし襲撃前の集合場所や時刻、服装、注意点を詳しく書きすぎた。念には念を入れて丁寧に書いたんだよ。けどな、襲撃の詳細や襲撃後の行動については一切触れていない。お前には必要なかったからな。』
『それがどうした?』
『嘘は一つも書いていないが、明らかに不自然なメモだ。お前をハメた証拠となりかねない。』
『小心者が!それに、俺は大体そんなもの読めん。』
『仮にお前が読めなくても、他の奴が読んで疑問を抱かないとは言い切れないだろうが。』
『今更そんな話か!保身の事ばっか考えてやがれ!』
髪の毛を掴み上げ、パンチを何発も頬へ入れた。淳の顔は早くも腫れ始めている。
『好きなだけ殴れよ。今日は、殴れや野見山!』
『格好つけてんじゃねぇ。』
淳の体にはもはや力が残っていなかった。ぐったりとした表情で野見山の体にもたれたまま、
野見山の拳に耐え続けていた。
『随分弱えぇな5代目。水泳でお疲れかい?3代目はもう少しマシだったぜ。』
吐血と鼻血で真っ赤な顔をした淳は小さな声で野見山に言った。
『野見山、拳銃だけは・・・』
『これか?』
野見山は拳銃を取り出し、淳の心臓の上に銃口をあてた。
『拳銃を・・・』
意識が朦朧とし始めていて上手く喋れていない。
『これが怖いんだろ?これだけは勘弁して欲しいか? あ?』
淳の口の中に銃をブチ込んで、腹を蹴り上げた。淳の前歯がからバリっという音が聞こえ、
目じりからは涙が流れている。
野見山は汚れた顔の脇を流れる二本の涙を目で追い、さらに自分のテンションを上げた。
拳銃を口から抜き、淳をうつ伏せにすると特攻服の背中の刺繍の上に唾を吐き捨て、
その上を足で踏み潰した。
『何が水泳だ。何がCANDYだ、コラ。お前だけいい思いしやがってチクショウ!』
淳の後頭部目掛けて銃を向ける。
『銃は置いてって・・くれ。』
『何だぁ?』
『銃だけは置いてってくれ・・・頼む。 』
『都合がいいことばっか言うなや。』
『ノミ・・・頼み・・ます。』
『もう喋んじゃねぇ。』
銃を握りなおし、淳の涙が濡らすアスファルトと後頭部を目で行ったり来たりさせた。
野見山の背後には背の高い街灯が立ち並ぶ。
2人は照らされながら最期の時をむかえようとしていた。
『淳、死んで償え・・・。』
淳はノドをヒクヒクさせた。
野見山は続けて言った。
『俺もいずれ・・・死んでよぉ・・』
野見山はカカトを後ろ方向から蹴られた。背中からアスファルトにズデンと転がった。
淳が寝そべりながら最後の力を振り絞り、野見山に足を引っ掛けたのだ。
すぐさま銃を持ち直し、片膝をついて構えた野見山は一瞬淳から視線を外した。
目の前から突っ込んで来た下品な単車のライトが野見山の顔を真正面から至近距離で照らした。
ヤカマシイ単車はそのまま野見山に激突し、ドライバーは宙に浮き、遠くまで飛んで行った。
野見山は単車に押されて吹っ飛んだ。
単車を両手でグリップし、勢いに押されて引きずられながらも、単車をそのまま後ろへ投げやった。
上半身裸の野見山の肌が焦げた臭いがたちこめた。
さすがの野見山も悶えている。
両手両膝をつき、痛みを声にしていた。
『ノミ・・・銃はもうよせよ。置いていってな・・・。』
淳は力尽きた。
アスファルトの上で気を失っていた。
『陽介か?あ?陽介なのかい?』
野見山がわめいている。
陽介は走り回った。拳銃を見つけて拾い上げると、後ろのポケットへと隠した。
『おい、ごめんなノミ。大丈夫かよ?』
『触るな。触んじゃねぇ陽介。』