19:00手前にはCNADYのメンバー7人が特攻服姿で屋上前に集合していた。

野見山はビルの中で斉木に手渡された特攻服に着替え、今エントランスから出て来ようとしている。

単車は計6台。斉木の後ろに田口が乗り、旗を持つ。


野見山が姿を現した。


『今日は喧嘩はナシってことで。田口、旗しっかり持てや。』


『まかしとけ。』


『じゃ、もうじき出るぞ。』


ついに野見山の単車のエンジンがかかった。すると直ぐに残りのメンバーもエンジンをかけ始めた。

爆音が鳴り響く。

メンバーは単車に跨った。


『ルートは?』


後ろから声があがった。野見山はただ前を見ていた。代わりに淳が後ろを振り返えり、大きな声で言った。


『ルートは野見山に任せる。はぐれたら随時解散。』


淳が前を向くと野見山の横顔がニヤリと笑ったように見えた。


『よぉ、淳、ついて来れんのかよ?』


野見山が小さな声で囁いた。


『ふん、最後まで付き合ってやるよ。』


野見山は首をひねり、顔を後ろへ向けてメンバー全員に言った。


『恐らく、これが最初で最後のパレードだろう。色々あってすまなかった。今日は思う存分走れや!』


”お前もな”という突っ込みが後ろから返ってくる。


淳は黙ってスタートを待った。野見山は道の流れを見ている。道路は混んでいた。

その姿を見て淳は後ろを振り返りながらニッコリと笑った。


『野見山らしいな。19:00だし、仕方ねーよ。』


後ろは急かすことなく野見山の合図を待った。


『よっしゃ、行くぞ!』


野見山が国道に突っ込んで行った。メンバーは後ろに続いた。車の間を掻い潜って走って行く。

時間帯が早いだけに、特攻服姿や単車の騒音は大きな注目を浴びた。

陽介は調子に乗って車をかわし、先頭の野見山に並んだ。


『さすが野見山さん。大注目を浴びてますよ。よっCANDYのヘッド!』


『計算通りだバカヤロウ。』


『さっすが。』


『嘘だ。へへっ、買いかぶんじゃねぇよ。おう陽介、しっかりケツ走っててくれよ。とばすからな。』


『OK。』


斉木はアクセルを吹かしまくり、後部座席で田口が旗を靡かせていた。


野見山のスピードはどんどん増して行く。


交差点でも、後ろの単車が車を止めるのを待たずに、自らガンガン突っ込んで行った。


皆、くらいつくように追尾した。


TMCのパレードはもの凄いスピードで進行して行く。


道行く人々はあっけにとられていた。


グダグダと走るチームと比べれば、ある種、好感の眼差しで見られていたようにも思える。


そう言った意味で、今晩のTMCは野見山の存在そのものの様であった。


これだけ注目されるのも野見山の存在なしでは有り得ないということをメンバーは走りながら確信していた。


そのような星の元に生まれたのではないかとすら思った。


無計画な割には、運のいい奴。


皆がそう思った。


先頭を突っ走る彼の背中を見て、


どんなに緻密な計画を練ろうが、野見山のインパクトには勝てないかもしれないと久しぶりに思い出させられていた。


メンバーはある種の心地よさと懐かしさを噛み締めて走っていた。




19:30前、2ケツで乗っている斉木と田口の単車が遅れ始めた。

すると彼らは最後尾を走っていた陽介にケツ持ちを代わるという合図を出してきた。

陽介はそれに応じ、スピードを上げて前へ向かった。


野見山や淳の単車はずっと先を走っていると思われ、大分距離があいてしまっている。

2人の独走となってしまっていた。


陽介は淳の言った随時解散の意味を考えていた。


『確かに、集まってバイバイって言ったところでノミは帰る場所ないもんな・・・。


アイツ、このまま暗闇に消えて行くのかな。


可愛そうに。


って俺、哀れんでるだけなのかな?


分からないよ野見山!


すまん。』




陽介は頭を悩ませた。



『なぁ淳、お前は今晩とことん付き合うのか? 


なぁ?どこまで走るんだよ。


いつか別れなきゃいけないだろうよ。』




独り言を爆音で掻き消しながら走る。




『ちくしょう!俺もまだまだ付き合うよ。』


陽介は車をかわしながら、スピードをどんどん上げていった。