2人は眠った。野見山はすぐに爆睡した。

光恵は高鳴る鼓動を抑えられずにいた。彼の寝顔を眺めていると、安心感が芽生えた。

彼を心強く感じた。


野見山は2時間もしない内にドカっと起き上がり、時間を確認した。店内をウロウロ見渡した後、顔を洗い、蛇口に口を近づけて水をグビグビ飲んだ。


『シャー』


時折、小さな気合を入れた。昨晩の出来事を全てリセットしたかのような清々しい表情でタバコを吸った。

シャドーボクシングや切り落とした髪の毛をトイレでチェックしたりしたのち、彼女を起こした。


少し寝た野見山は光恵のことを何と呼んで良いものか、分からなくなっていた。


『お客さん、朝だよ。』


『あっ、うん。今起きます。』


『電気はとりあえずトイレのみってことにしてる。』


コップに水を入れると光恵に手渡した。


『着替えたら出よう。鏡とかはトイレにあったよ。』


『了解です。』


光恵がトイレに入ると、拳銃や荷物のチェックを行った。同時に拳銃をしまうポケットの内の整理をすると、オヤジのラストメッセージが書かれた封筒や、幾つかの紙切れが出てきた。

それらをスポーツバッグにしまうと、冷蔵庫へ向かい、食料をあさった。


『色々あるぜ。食べる?』


『うーん、私はまだいいや。朝弱くて、ごめんね。』


『腹が減っては戦はできんよ。』


『若いわね。』


『本当にいいのかよ?』


『うん、いいわ。』


『俺だけ、すまんな。そういやウナギ食べたばっかりと言えばばっかりだな。やけに腹が減りやがるぜ、ちくしょう。』


『電車で行く?』


『ああ。病院にトラックを乗り捨てたから始発は危険といえば危険だがな。この辺をウロウロして乗り物を物色したり、ヒッチハイクで足つくのもなんだしな。まぁ、これからが勝負だな。腹を決めてくれ。』


『うん。』


『俺が前を歩く。少し距離をおいて歩いてくれ。何かあったら構わず離れてくれ、頼む。』


『うん。』


『きっと大丈夫だ。行こう!』


『行こう!』


4時30分、裏口から外へ出ると、軽快に歩き出した。10分も歩くと駅前を感じさせる街並みとなった。

すれ違う車が気になって仕方がなかった。


駅へ向かう人は意外にもいた。


『こんな時間にも人は結構いるもんだな。何の仕事してることやら。』


駅手前で野見山はスピードを上げた。一度振り返り、光恵に距離をあけるようにジェスチャーで伝えた。


タバコに火をつけ、駅の手前まで入っていった。警官らしき姿はなかった。構内へ入り切符売り場で2人分の切符を買った。券売機に背を向け、辺りを警戒しながら光恵を待った。ねにげなく切符を手渡すと、改札をくぐり、ホームへと向かった。


『改札のところに駅員いただろ。見てたか?』


『多分、見てなかったよ。書類を見てた気がする。』


『だよな。よかったぜ。切符はてきとうに買ってしまった。函館まで小まめに乗り継いで行きたい。連れてってくださいな。』


『てきとうに買ったの、もう!新幹線はだめ?』


『そこは賭けだな。リスクはあるが一気に行くか、乗り継ぐか。』


『乗り継いで行くとしましょうか。飛行機も危なそうだものね。寝台で函館行きましょ、個室もあるし。でもちょっと時間が合わないかもね。夜にならないと・・・』


『とにかくどんどん東京を離れよう。タイミングを見計らって寝台に乗ろう。』


2人は電車に乗った。新聞が気になっていた。光恵を座らせ、窓際に立った野見山は、端に座っている中年の新聞を覗き込んだ。事件はデカデカと載っていた。向かいの男の新聞にも載っており、事件の大きさを実感させられた。

隣の車両の方までもに気を配りながら、電車に揺られた。2人は北へ北へと進んで行った。


『新聞見たぞ。』


『私も、ちょこっと見えた。』


『凄いな。光恵さん、アンタのことは触れられていない。今のところ安心だ。』


『そう。元気だして。お腹減ってない?大丈夫?』


『俺はへっちゃらさ。CANDYのトップだからな。』


『盛岡で乗り換えましょ。もうちょっとだね。』


『函館は雪降ってないかな?』


『さすがに11月じゃ、まだじゃないかな。』


『寝台乗ったらゆっくりしよう。』




盛岡駅には既に寝台列車が止まっていた。ホームへ降りる前に弁当を買い、エスカレータを降りた。


購入できたのはシングルの個室だった。背の低い部屋で圧迫感があった。2部屋分チケットは買ったが、野見山の部屋に光恵も入った。


『意外に狭いな。』


『野見山君、背が高いから大変でしょ。寝るときは戻るね。』


『いいよ、いろよ。寝るときは高さは関係ないし、大丈夫。』


『疲れたでしょ?』


『全然だよ。』


野見山は光恵の肩に手を置いた。


『ありがとな、色々。』


マッサージをしてあげた。


『俺、得意なんだ。大体わかるよ、ツボが』


『あー、気持ちいよぉ。』


『何、何?』


『超気持ちい。って変態!』


『足も、はい。』


足の指まで細かくマッサージした。


『とりあえず、ここまで。続きはまたね。弁当食べようぜ。って早いか?普通走りだしてから食べるんだっけ?俺一人ならもうとっくに食べ終わってるな。』


『座った瞬間にお箸の袋破いてそうだもんね。』


『何か飲みますか?』


『あれっ、忘れてたね。飲み物!』


『ごめん、俺基本飲まないから。』


『飲まないの?』


『せっかく口の中が美味しい味になってるのに、お茶の味に置き換わったらショックだよ。もう一回食べなおしたい気分になるときもあるぐらいさ。だから飲むなら食べてちょっとしてからかな。』


『へー、変わってるのね。』


『買ってくるよ。あっビールとか飲むの?飲もうよ、せっかくだし。俺、飲みたい。』


『あなたは未成年でしょうが。』


『いいから、いいから。あと暖かいコーヒーもいいな。やっぱお茶飲むタイミングって分からないな。』


『じゃ、ビールは一本でいいわ。一緒に飲みましょ。私はお茶がいいかな。』


『OK行ってくるね。』


『もう、ほとんど出発まで時間ないし、もしあれなら車内販売とか自販機探してもいいかも』


『おう、大丈夫、大丈夫。まかしておきなさい。最速たぁ俺のことよ。』


野見山は売店へ走った。

苦労をかける光恵にリラックスしてもらいたかったからだ。

23時15分前。ガラガラのホームを走った。15メートル程先にあった売店は閉まっていた。粘る野見山は他の売店を探した。ホームには無いと悟り、エレベータを駆け上がった。


半分ぐらい上ったところで、後ろから足音が幾つか聞こえてきた。

振り返るとスーツ姿の中年が数人エレベータを上がってているのが分かった。

野見山はペースを上げて走ると、足音は比例するかのごとく速まった。

上を見上げると、似たような中年が角から見え隠れしている。足が止まりそうになった。


『野見山純だな。』


後ろに追いつかれた。

野見山はにらみ返した。


『おい、野見山だろ?警察だ。』


振り払うかのように駆け上がると、上に中年が数人姿を見せた。

野見山は体を横ににし、拳銃を上と下に2丁向けた。


『もうよせ、バカ野郎!』


『おっさん、どけや。』


『またそうやって逃げる気か。』


『お前らも、また死にたいのか。』


『やめろ!』


刑事は一斉に銃を構え、下の一人の刑事が威嚇射撃をした。銃弾は天井にめり込んだ。野見山はジロリとその刑事を見て銃口をロックオンした。


『野見山、銃を下ろせ。』


野見山はトリガーを引いた。刑事の胸は撃ち抜かれ、エスカレータを転げ落ちた。

同時に上の刑事が野見山の左肩を撃ち、血が噴出した。


『そうこなくちゃな。』


野見山は下を警戒しながら、上に発砲を続けた。上の刑事は身を潜め、応援を呼ぼうとしていた。


『野見山を盛岡駅構内で発見。銃を再び乱射。1名負傷しました。至急応援をよろしく。』


奇しくも、ホームに出発の合図が鳴り始めていた。


『クソ、時間がねぇ。』


上へ向けた銃弾が残り1発となった。弾を詰め替える余裕が無かった。拳銃を持ち替えた瞬間、下から刑事が襲いかかってきた。


野見山は迷わず眉間を撃ち、もう一人にドロップキックした。上を振り返り1発発砲した後、少し助走をつけてエスカレータを一気に飛び降りた。


転がりながら立ち上がると、振り返らなかった。足を引きずりながら走った。


もう列車は出発する。出発の合図の他にアナウンスが入った。


『止まれ!野見山、動くな!』


『うるせぇ。じゃあな。』


列車のドアが閉まる音が銃声で掻き消された。

野見山の背中に何発もの銃弾が浴びせられ、前のめりに倒れた。


『捕まえろ!』


銃を握った刑事達が颯爽と駆け寄り、野見山の銃を蹴飛ばした。

ピクリとも動かない野見山は固まったように拳銃を離さなかった。


列車が走り去る音が響きわたった。


『俺が野見山だ!』


体をひっくり返し銃を持ち上げた。刑事が体の上に覆いかぶさるタイミングと同時であった。

刑事の口にめり込んだ銃をさらに押し込むように持ち上げ、刑事の体は反り返った。


『よく覚えておけ・・・』


野見山は喉を撃たれ、そのまま力尽きた。


手錠をかけられてから、病院へ運ばれた。駅構内を出るとヤジ馬でごった返していた。

東京の野見山が捕まったという噂で持ちきりとなった。

誰もtokyo midnight candyの名を知らぬまま初代ヘッドは捕まり、チームは事実上の終焉を迎えた。








Write down ! I'm panic 今晩君に送るmagic

見ろよ目立つ壁には必ずspread my logic


恋をした俺は、よく歩きました

眺めました真夜中のハイウェイ こんな時間に急いでさて何処へ


oh yeah ! 舞い上がらせては 虫をもてあそぶ街灯 

咲き出すのはmidnight ペコリと背を曲げた姿tight 綺麗に並んで背の高いtwilight


俺は知らない、何処の国から来たのかも

コンクリに埋まった奇抜な姿は以前の君に似ている


feeling 今日はhigh!この道を爆破した気分だ

もう誰も来れやしない ダーリン 俺は振り返らない


車内に今2人 俺の横に いつもより笑う君が座り

胸に描かれた壁画がチラリ 窓に映り、


俺は外を見るふり、感じるよ初めて横顔に君のhistory

手垢の付いた窓は色々物語り 軌跡を舐めるように


指でなぞるより 新しい俺らの未来を刻みたい

痛い時には手を繋ごう 見つめあいながら愛し合おう


リズムはその内合ってくぜ 不安定は今の内だけ待ってくれ

慣れない俺と揺れてくれ 気が付けば朝だぜもう着くね


月はその内満ちてくぜ 騒がしい街のことも忘れてくね

大人になって守ってくね この意味が今わかったぜ


窓の外は相変わらずの日常 危険などそうない一応

そこで気づきたかったね 恋人達が帰ってくね


歯を完璧に磨くことなんて 誤魔化してんだろ美しい君だって 

どこかで折り合い付けて 暮らして行くとするなら君とだなって


俺の口の中で CANDYがもう溶けそうで

甘い舌で囁くよ 心の底からありがとよ