『ガソリンでいくか。』


野見山はオヤジがドラッグストアで買った袋を持ち、トラックから降りた。


『陽介、もういいぞ。』


陽介がブルーな表情で荷台から降りた。野見山はガソリン注入口に棒きれを使って包帯を押し込むように入れた。20センチ余りがガソリンと未接触で注入口から顔を出していた。


野見山はガーゼの封を破り、剥き出しにした。

そして肌着と靴下、消毒液を取り出し、ガーゼとタオルを入れたビニール袋を陽介に手渡した。野見山は肌着や靴下の封入を開けて一枚、一枚ばらしていた。


『すまん陽介、包帯を引っ張って出して、このビニールに入れといてくれ。』


陽介はスルスルと包帯を引っ張り、手を汚さないように肌着や靴下を使い、ビニールに収納していった。


『オヤジ、警官の手当てでもしようとしてたのかな。』


『オヤジ?』


『オヤジっつーか、おっさん。トラックの持ち主だ。 何でもねぇ、気にすんな。』


『その消毒液、何系? 原液じゃないだろ。』


『エタノールの80%だな。』


『まあまあだな。80ありゃ、そこそこいけるな。』


陽介はビニールの中でガソリンまみれの包帯とガーゼなどを揉み、それぞれにガソリンを染み込ませた。


『ガーゼにはよく染み込ませてくれな。』


『OK。で、どうするよ?』


『とりあえず、そんなに部屋はデカくないだろ。10人はいねぇと思うが、中に何人いるかわからねぇ。泊以外をできるだけ外で始末しよう。』



陽介が泊に電話をかけた。


『もしもし、今つきました。』


『随分待ったよ。駅にいるんだね。大通りに前の出口で待っててよ。』


『はい。』


『じゃ、そういうことで。』




野見山は1階のエレベータ前で待機し、陽介は階段を見張っていた。


『三浦が着いたから迎えに行ってくれ。』


泊は赤星と田口にナイフを渡した。


『抵抗したら、軽く刺せ。軽くでいい。後が面倒くさい。』


『了解しました。』



赤星と田口はエレベータのボタンを押した。野見山はエレベータが8階に止まったのを見て、陽介を呼んだ。


『誰がくるかな?』


『泊だったりしてな。 それはねーか。』


野見山は拳銃の弾を確認した。


エレベータが1階に着き、SCERAMの2人は降りて歩き出した。


『おい!俺はここだぜ。』


陽介が後ろから声を掛けると、2人は振り返った。その瞬間、野見山は左右のフックで2人を仕留めた。


『どうも』


野見山は拳銃を取り出した。


『赤星、お前が来るとはSCREAMも人員不足なんじゃねーのか。』


陽介がすかさず蹴りを4、5発入れた。



『ちょっと来いや。』


野見山はそう言うと、拳銃を構えたまま2人を誘導し、トラックの荷台を開けた。


『こうなりたくなければ、2人同時に即答しろ。息を合わせろよ、いいな。今日、部屋には斉木以外に何人いた。』


赤星 『6人・・・です。』

田口 『5人です。』


『頑張ってんじゃねーぞ、コラ。』


野見山は拳銃を近づけた。


赤星 『5人です。』


『おせーよ、ボケ』

野見山はコンテナの扉で赤星の頭を挟んだ。


『赤星、携帯を出せ。泊に電話しろ。応援を呼べ。なんて言う?』


『三浦が暴れました。応援を呼んで下さい。』


『そうだ。 おいお前、一文字も間違えずに、今のを泊に言え。間違ったら撃つ。』


野見山に指名された田口が電話を掛けた。


『三浦が暴れました。応援を呼んで下さい。』


『暴れた? さっさと殺れや。殺っちまえ。 すぐ向かわす!』



『すぐ向かわすと言ってました。』


『よくできました。 2人とも携帯を出せ。』


携帯を預かると、2人に荷台に入るよう命じ、扉をロックした。


『あと3人か。 もう上に行こーぜ。』


野見山と陽介は先ほど仕込んだ荷物を持ち、エレベータに乗り7階を押した。


7階で停止し、しばらく待っているとエレベータは自動的に上に向かった。


陽介と野見山はしゃがみ込み、ドアに膝を付けていた。8階で止まることを期待した。


『8階なら、何も考えずに速攻だ。速攻で殺ろう。』


表示すら見ずに構えていた。エレベータが1つ上に上がると扉が開いた。男が3人いた。


陽介は正面の男に金的と頭突きを食らわし、隣を見ると、残りの2人は意識が朦朧としていた。もの凄いボディーブローが2発入った音だけが聞こえた。陽介は下を向いて悶える相手の頭を持ち、膝を3発入れていた。膝を入れ始めて相手がクスブリだと気づいた。



野見山が拳銃を3人それぞれに押し当てて言った。


『3人同時に即答しろ。必ず息を合わせろ、いいな。間違ったら撃つ。さっきの2人が何故戻ってこないかをよく考えろよ。 部屋の鍵は誰が持っている?』


『泊さんです。』


『泊まりは何をしている?』


『見張りです。』


『誰の?』


『斉木君のです』


『じゃあな』


3人はエレベータに押し込められ、1階に送られた。


805号室の前に着くと、ビニール袋の中身を出し、消毒液をビニールに流し込んだ。


消毒液に火が点くのを確認すると、ドアの中央部にある新聞入れを開けて、肌着や靴下、タオルを2枚づつ押し込んだ。それらが玄関に落ちたのを確認すると、包帯をコロコロと転がし、大部分を室内に入れた。そして包帯の末端を消毒液の炎の手前に置いた。


物音が聞こえた気がした陽介はすぐに包帯の末端に火を点けた。野見山が新聞入れの入り口を足で開けたままキープしており、火が流れるように通過するのを待った。火はすぐに室内に到達し、野見山はガソリンまみれのガーゼを室内に落とした。ガーゼは燃え上がり、肌着や靴下に飛び火した。ガソリンの付きが悪いガーゼも、野見山が着火し、駄目押しで放った。


泊は異臭に気づき、玄関に近づいた。外にいる2人に靴で火を叩いている音が聞こえてきた。すぐにドアが開き、煙がモクモクと出ると同時に狼狽した泊が姿を見せた。


陽介はすかさず、泊を引きずり出し、殴りつけた。その隙に野見山が部屋に入り、斉木を見つけた。斉木を抱えて外に出ると、泊を炎の上に蹴飛ばした。火は2人が思っていた程は点いてはいなかった。玄関の一部が激しく燃えていた程度であった。とにかく凄い煙の中、泊は言葉を失っていた。


『これでSCREAMは終わった。2度と舐めるなよ。』


陽介はエレベータへ走り、ボタンを押していた。


『トオルによろしく。』


エレベータが開くと、SCREAM3人衆はまだ中でぐったりしていた。


『おい、邪魔なんだよ。』


陽介はボタンを押しながら言った。


野見山と斉木がエレベータに着くと、エレベータに乗った。


一人づつ3人衆の背中に乗り、エレベータは下がって行った。