『アンタ一体、トオルのどこに惚れたんだ?』
『優しくて、マメでかつブランドがあるところでしょうか。』
『ブランドとは?』
『付き合う事がステータスになることだと思います。そして、私を綺麗にしてくれるんです。』
『アンタをそんなに綺麗にしたのはトオルの仕業だって言うのかい?』
『分かりませんが、私はそう思ってます。』
野見山は笑った。
『アンタら寒いね』
『・・・・』
『光恵は本名なのかい?』
『違います。お店でのみ使っている名前です。』
『名前、聞かせてくれよ。』
『それは、ちょっと。』
『そんなに俺が恐いかい?』
『いえ・・・。』
野見山は光恵にキスをした。右手のみで運転し、心も体も光恵の方を向いた。左手で肩を抱き寄せ、
長いキスが始まった。
始め、目を閉じた光恵だったが、しばらくすると目を開き、前を見ていた。
一方、野見山は目をつむり、光恵との繋がりを深く味わった。
光恵は体を野見山に向け、左手でハンドルを握り、運転の微調整を行った。
野見山は目を開けて、彼女の目を覗き込んだ。
『例えばこんな時、俺はお前をなんて呼んだらいい?』
『・・・・』
お互い見つめあったまま、トラックは走った。
『もう、別れたんだろ? 俺がもっと綺麗にしてやるよ。』
光恵は微笑んだ。
『俺にだって、アンタがドキドキしてることぐらい分かるんだぜ。聞こえるよ。』
『もっとキザに口説いて下さい。』
『鼓動を共鳴しあおう。』
『トオル君みたく普通に愛さないで下さいね。』
光恵はこう言うと、野見山の被っている警帽を取り、自分が被った。
野見山は言った。
『まかせておけ。』
野見山は姿勢を戻し、まともな運転を始めた。すっかり名前を聞くのを忘れていた。
トラックが勝どき橋にさしかかり、トラックはゆっくり走った。
全てが輝いて見えた。再び、お互いが見つめあうと、二人は笑った。
トラックは一気に加速し、駅へ向かった。
『陽介、着いたぞ。晴海通り沿いに来てくれ。俺はトラックに乗っていて、見つけ次第拾うから。』
『おう、待ったぜ。大通りだろ。OK!』
陽介の姿を確認し、トラックは停止した。野見山は運転席から下りると、陽介とハイタッチした。
『まじで色々あったぜ。』
『お前、なんだその格好は。最初ちょっと焦ったぞ。何で警官の制服着てんだよ。髪切ってるしよぉ。どおりで遅いわけだ。あとで説明しろよな。 まぁ、会えて良かったな。』
『おう、ほんとだな。』
お互いが無事に再開できて嬉しそうな表情を浮かべていた。
陽介は助手席に目をやった。
『おい、ノミ。なんだあのクレイジーな女は。』
警帽を被っている光恵を見て、陽介は尋ねた。
『俺、彼女ができた。色々あってよぉ。』
『あってよぉ、じゃねーよ。 お前はトラック運転してきたんだろ?』
『ああ、やれば出来るものだ。』
『そうじゃねーよ。お前ら二人が前で、俺はコンテナか、コラ!』
『あっ』
『あ、じゃねーよ。』
『その、あっじゃねーんだな、これが。』
野見山はコンテナを開けた。
『ノミ、色々ありすぎだろ』
『すまん。ちょっと我慢してくれ。』
『おい!コンテナの電気付けてくれよ。絶対、暗かったら乗らないぞ。』
『わかった、わかった。あとな、あの彼女だが、ワケありだ。トオルの元彼女だ。マンションまで直行するからな。』
陽介はしぶしぶコンテナに乗ることにした。
彼女の指示通りトラックを走らせると5分も経たずにトオル達の第二のアジトに着いた。
805号室のようだ。
『ヘタに手を出したら、斉木の身が危ないな。』
野見山は呟いた。