『今夜はすげぇ夜だな。生きてると色々あるぜ。』


野見山はエンジンをかけ運転し始めた。

ホテルを出ると、まもなく銀座の標識が目に入った。


『もしもし、陽ちゃん? 着いた?』


『おう、ノミ、今電話しようと思ってたところだ。着いたぜ。』


『俺も、もうすぐだ。ちと身を潜めて待っててくれ。泊にはまだ連絡しないでくれよ。』


『分かってる。予定どうり無事きてくれよ。 あれ? ノミ今なにしてんの?』


『トラック。』


『乗せてもらったのか! ノミらしいな。』


『ああ。また連絡するぜ。』


野見山はトラックを停めて、ナイフで髪の毛を切った。

運転席を降りて、コンテナを開けて、警官の制服に袖を通した。

一番血が付着していない佐々木の制服だった。警棒、靴、を身につけ、拳銃は腰のホルダーに入れた。


野見山はそれらしき年齢の者に手当たり次第SCREAMの第二のアジトの聞き込みを始めた。


『SCREAMを知ってるよな?』


知らない。知りません。知らねーよ。


野見山は知らねーよと答えた者を疑った。拳銃を突きつけ再度聞いた。

しかし、誰も知っていると答える者はいなかった。


野見山は質問を変えて再び聞き込みを開始した。


『蓮見トオルを知っているか?』


トオル君でしょ? という答えばかりだった。トオルの評判は良かった。凶暴SCREAMの名前は口にしないが、トオルの名はすらすらと喋る奴らが多かった。勝どき方面に潜伏していることは確からしいが

それ以上の情報が聞けないでいた。


野見山は思いたったかのごとく、本屋へ入った。

店員の元へ直行した。


『警察だ。蓮見トオルを探している。最近、本を買っていかなかったか?』


『蓮見様ですか?・・・えー、ちょっとお客様のお名前までは・・・。あっ、ご来店されることはほとんどありませんが、注文はよくお受けしますよ。女性の方が大体受け取りにこられますが。』


『住所は?』


『さぁ、電話番号なら・・・。』

店員は電話番号を野見山へ伝えた。


『どんな女だ?』


『20歳ぐらいのお若い方ですよ。多分、ホステスさんじゃないでしょうか。接客以外にお話ししたことは無いので分かりませんが。』




野見山はその場で電話をかけた。


『もしもし?』


『はい、もしもし』


『警察のものですが、接客中でしょうか。』

野見山は自然と敬語を使っていた。


『・・・いえ、今は。警察の方? 』


『お忙しいと思いますので本題から入ります。』

野見山は無理やり話した。声はまだ幼い部分もあったが、ダミ声が説得力を持たせた。


『あっ、その前にご本人確認としてお名前とお店の名前をお願いします。』


『光恵、 銀座クラブ蝶です。』

女は野見山のとっさの問い掛けに答えた。野見山はしてやったりの顔をしていた。


『蓮見トオルを知っていますね。』


『蓮見さん?』


『正直にお願いします。重大なことですから。知ってますよね?』


『はぁ、でも私はあまり蓮見さんとは関係ないのですが。』


『ほぉ、住所を聞きたいのですが。』


『さぁ?』


『では、あなたは蓮見の本を受け取って、どうされるのですか?家に持ってくのではないですか? あっ嘘は付かない方がアナタの為ですよ。』


『家までは知りません。手渡しです。』


『それは、おかしい。本当のところどうですか?』


『何もおかしくありません。すみません、接客入ります。』


光恵は電話を切った。


野見山は本屋を出て、クラブ蝶を人に聞きながら探した。


店に入ると、佐々木の警察手帳を取り出した。


『警察だ。光恵さんはご在籍されてますよね。用があります。』


受付にそう言うと、中へずかずか入っていった。

金を持ってそうなオヤジがうじゃうじゃいた。

血の付いた制服を着ている野見山を見て、店内はザワザワしだした。

入ってすぐの接客中の女性に問いかけた。


『警察です。光恵さんはどこですか?』


ホステスは震えていた。


『どこですか?』


野見山は再び問いかけた。


『ちょっと、恐がってるじゃないか! あんた何なんだ?』

ダブルのスーツを着た重役風の男がホステスをかばった。


野見山はジロリと視線を向けた。


『警察だ。文句あるか?』

ウイスキーのボトルで頭を引っ叩いた。男が床へうずくまる。


野見山は隣の席へ移り、同じく聞いていった。


『光恵さん、どこですか?』


テーブルを次々にひっくり返し、6番目のテーブルへ向かった。

スキンヘッドの男がどこかへ電話している。

野見山は構わず、ホステスに尋ねた。

その時、スキンヘッドの男が、立ち上がり、グラスを野見山の手の上で踏み潰し、ボトルで後頭部を殴った。

野見山は男に聞いた。


『どこですか?』


『なめんじゃねーぞ、コラ ガキが。』


野見山は佐々木の拳銃を男の口に突っ込み、のど仏を圧迫した。


『どこですか?』


『●&#!*△!!!』


右手で銃を口から抜き、野見山は振り返り、警帽を被りなおし、反対側に並ぶテーブルに目をやった。


右手首を返し、スキンヘッドの眉間を撃った後、左手で小型銃を10発連射し、あっという間にホステス以外を撃ち殺した。


『まだ、頑張るのか? 光恵さんよぉ』


血しぶきを浴びた野見山は笑いながら、男どもを蹴り落とし、テーブルの配置を変えた。


『接客しろや。』


野見山が血だらけのソファーにすわり、ホステスを全員つかせた。


『座れ。』


『野見山純です。はじめまして。こういう高級なとこ初めてで、緊張してます。』


『・・・・・』


『皆さん、キレイですね。』


『・・・・・』


『返事は?』

野見山は拳銃を取り出し、一発天井に撃った。


『はい!』 


野見山は笑った。


『一人一人自己紹介してくれませんか?』


野見山がランダムに拳銃を向け自己紹介させた。


最後が光恵の番だった。


『光恵です・・・』


『・・・・・』


野見山は言葉を失った。


今までこんなに綺麗な人を野見山は見たことがなかった。

拳銃をむけたまま光恵に近づくと、


『来て下さい』


そう言い、銃とは反対の手で光恵の手を握った。


そのままエレベータを下り、トラックの助手席へ誘導した。


野見山はほとんど話せなくなっていた。急にかいた汗を拭い、言った。


『シートベルト・・してくれ。』


『はい』


『あっ、うん。行きます。』


エンジンをかけた。野見山が視線を横にやると光恵は野見山を見ていた。


『こっち見んじゃねー。』


『はい。』


『勝どきだろ?』


『はい、そうです。』


トラックは走り出した。


野見山は銃をいじりながら聞いた。


『トオルとはどんな関係だ?』


『元恋人です。』