ラ・フランスを手に取り、ナイフで綺麗に剥いた。小さく切って皿に載せ、フォークを添えた。
『これも美味いよ。ほれ? あっ関係ないけど、お前靴汚いよ。』
『嘘だぁ、ほんとに?昨日雨降ったからかも。』
『まだ、ギリギリセーフだけど、臭ったらアウトな。嗅いでいい?』
『ダメ、絶対ダメ。やめてよ。たまに裸足で履くし。』
『必死だな』
『もー。何よ急に。』
『サイズいくつだっけ?デカイんだよね?26くらい?』
『うん、でかいでしょ。手足とも。完全に遺伝。』
『じゃあ俺の誕生日に、冬に履いてたお前のティンバーランドちょうだいよ。』
『いいよ。足が入れば。』
『お前あれ、すごい似合ってるよね。貰うのが悪いくらい。お前があれ脱いだら革命だな。』
『パンプスとか履いちゃったりしてね。』
『似合うと思うよ、多分。』
残り一個のラ・フランスをトオルがフォークに刺し、マリーンの口に運んだ。
マリーンは半分を前歯で切り、残りのフォークに刺さった欠けらをトオルが食べた。
『剥くの上手だよね。アタシ料理できないんだけど。』
『料理っていうか、包丁に慣れてないんだよ。慣れ、慣れ。』
『今度教えてね。ナイフとかも。』
『いいよ。じゃあ今日はマリーンさんに夕食をつくってもらおうかな。』
『目玉焼きは上手よ。お腹へったからやっていい?』
トオルが頷くと、二人はキッチンに向かった。慣れない手つきでコンロをひねり、油を垂らした。
『このぐらいでいい?』
大分多めに油が入ったが、トオルはGOサインを出した。一つ目の玉子を割り、フライパンに放る。
マリーンは油が跳ねるのが恐いようだ。普段男まさりにどっしりしている彼女がみせるレアなしぐさ
が滑稽に見えたのかトオルはニコニコ笑っていた。
お手本をみせようとトオルが2個目の玉子を割ろうとした。
『あっ、近くに置いてね。』
トオルは意味がよく分からなかった。
『は?』
『一個目の黄身の側に2個目のやつを置いて!』
そういうことかと、トオルは2つの目玉焼きがくっつくように玉子を入れた。
『きゃー、ラブラブだね。食べるのがもったいない!』
『お前の指示だぞゴラァ!』
まもなく目玉焼きは完成し、お皿にのせた。
『醤油取って』
『私、ケチャップがいい』
『なめんなよガキ。醤油に決まってんべ。』
『ケチャップなら字も書けるし、ラブラブな赤だしー。 お願いしますご主人様♪』
『じゃ、しゃーねーな』
『早っ!オッサンちょっとキモイんですけど。メイド好き&ロリコン。オエっ。』
そう言いながらもマリーンはケチャップで書き始めた。
『いっぱい書きたいのに、あんまスペースない』
”大好き”
『ありがと。おいしそうだよ、いただきます。』
『ちょっとわびしいけどね。ハートマークは最後に食べてね。』
『お前意外とそーいうの好きなんだな。』
『いーから、早く食べて。美味しかったら結婚して。』