always ⑪ 前編 | 嵐の勿忘草

嵐の勿忘草

忘れたくないけど忘れてしまうこと
忘れたいけど忘れられないことでも

「いってきます」

 

「ちゃんと電話持った?」

「持ったよ」

 

「杖は?」

「杖があったら荷物持てなくなるから」

 

「ホントに大丈夫かな?」

「困ったら、連絡するから」

 

 

 

 

あれから初めて僕が一人で買い物に行きたい、って言ったら。

ショウはまた過保護になった。

無理じゃない、とは言わなかったけど。

転んだらどうする?階段は?道路の段差は?傾斜は?

なんて。

心配が尽きないらしい。

 

いつもショウと一緒に買物に行ってるスーパー。

最近ではショウの手を借りることなく行き来できるようになってきた。

分かってるはずなのに。

いざ、自分の目も手もないところで・・ってなると。

心配が増すらしい。

 

明日から、一人で行く、っていうのには許可がでなくって。

数日ショウの見守りの元でテストをすることになった。

 

日常の買い物だから、毎日行ってるとそんなに買う量は多くない。

たくさん買うのは、特売のときくらい。

 

缶詰に鶏肉にワインも必要か。

バジルはまだあった。

でも乾燥のだから、たまには生のを入れてみようかな。

にんにくは・・あと二かけらくらいしかないから一応買おうか。

なんてカゴに入れてみたら、案外荷物が重くなって。

テストの一日目は帰る途中で休まなきゃいけなくなった。

 

ショウの心配はそれで強くなっちゃったみたいで。

失敗したな、って思った。

 

二日目は軽くすませられるように、メニューを考えた。

そのかいあって。

休むことなく一人で買い物できた。

横にいるショウがなんか物足りなさそうにしてたけど。

自分一人で買い物できたことに、僕は満足した。

 

三日目も四日目も。

同じ作戦で乗り切って。

一週間が過ぎた頃。

ようやくショウも納得したのか。

一人でスーパーに行くお許しが出た。

 

 

 

「いってきます」

 

そう言った僕の声はかなり嬉しそうだったと思う。