私はその昔、深夜労働もまともにせず、ヒモをしていた時期があった。
女は水商売をしており、私は次第に労働を怠るようになり、
気づけば生活費の大半を、女が得た金でまかなっていた。

夕刻、女はTVニュースを見ながら、念入りに化粧をしている。
その横で私は寝巻姿のままのその様子を眺めている。

女は夕方のニュースが終わる頃、アパートの部屋を出て行く。
机の上には、女が置いていった一万円。
着替えもろくにせず近所のコンビニに出向き、購めた缶ビールを飲みながら、女の帰りを待つ夜。
空き缶がいくつか転がり完全に酔いもまわったころ、
女から店が終わったと連絡が入る。
私は寝巻の上にカーディガンを羽織り、近所の焼肉屋に向かい
女の帰りを待っていた。


仕事帰りの女は、派手なドレスと髪の毛、それに濃い化粧で焼肉屋に現れた。
元々酒を好まない女は疲れたと云いながら肉をむさぼり喰い、
私は相槌を打ちながらビールを飲んでいる。
一日の栄養をつけようと、まずは塩ユッケで己がハートに火をつけて、
タン塩に刻みネギを巻き、カルビ、ロース、白飯とバリバリ平らげ、何杯もビールを飲み、
喰い散らかした皿の前で、女は茶封筒から金を取り出し、精算をする。
紫煙を揺らせながら、私はその様子をまどろんだ目で眺めている。

居室に戻ると、そんな一日を過ごしている己を悔恨しはじめ
着替えている女を見る。
この女は、水商売をしているとき、一体どんな様子で中年の男共と接しているのだろうか。
そんな店に行くような中年の男たちは、明らかに私よりも社会地位があり、
そして金も持っている。私が勝るモノは若さだけしかない。
そして私は吸っていた煙草をもみ消し、威勢良く腰を上げると、
劣情と欲情でぐちゃぐちゃになった自分を殺す勢いで女を犯しはじめる――。


私はその時期何を求め、女は何を思いながら暮らしていたのだろうか。
女と酒と肉を喰らい、悔恨を幾重にも塗り重ねるだけの生活。

女は着衣を乱したまま、泥のように眠りこけている。
私がベッドから這いずり出ると、カーテンの隙間から群青色の空が見えていた。
自分はこの屑男はこれから一体何処へ向かっていくのだろうか、
そして女はいつ私の元から去っていってしまうのだろうか、と思案しながら、
諦めと憤りと、まだ胸の奥の方でほのかにくすぶっている前向きな気持ちを
確認したりして、煙草に火を点け、飲みさしの気の抜けた缶ビールを流し込む。



そんな日々があったのだと、今は懐かしく思う。