重要なのは「正しい答えを短期間で出して、それを速やかに実行に移す」能力をどれだけ高めることができるか、にあります。それが「早い(速い)ものが遅いものに勝つ」という本質的な意味だと思っています。
社内のどんな職種でも「常に時間とのプレッシャーの中で答えを出すという状況に置かれ続けること」で、早さや速さがしっかり磨かれる場合があります。その早さ・速さの背景にはメンバーや組織の「仮説立案~検証力」の高さがあります。的確な仮説の構築とその検証能力です。
一般的に「日本人はあらかじめ問題がはっきりしているときにはそれを解くのは得意である一方、『自ら問題を作りだす能力、あるいは問題を発見する能力』はとても低い、これが日本のビジネスパーソンの弱み」であると言われています。だからこそ「どれだけ正しい答えを短期間で出して、それを速やかに実行に移せるか」という「早さと速さ」を磨くにはどうすればよいかが問題です。
そこには「先見性と決断力」というポイントがあります。天才棋士の羽生善治さんは「経験に裏打ちされた直感の7割は正しい」と言っています。そして大事なのはその「直感に支えられた決断力」そして「あとはなるようになれ」という気持ちで指すのだそうです。これが『決断力』です。
あらゆる可能性を考えるよりも「最初に焦点を絞って」仮説を立てることが重要です。一般的に言って、顧客調査や製品開発において、まずは数多くの分析や実験を試み、その結果をいろいろな方向から分析して答えを導き出すという網羅的アプローチを採るのが普通でしょうが、これでは「速さ」は磨かれません。「正しい答えをどれだけ短期間で出して、それを速やかに実行に移せるか」という命題に対して、あきらかに「仮説検証アプローチ」の方が「網羅的なアプローチ」よりも速いのです。
まず先に仮説を構築して強い問題意識を持ち、その解決に必要な分析を選択して、その情報だけを拾い上げていくのです。そして「良い仮説は経験に裏打ちされた直感から生まれる」と言われるように、自分の過去の経験をじっくりと見つめなおすことも大切です。少ない情報で正しい仮説を立てられるようになるには経験を積むしかありません。でも時間や回数より「仮説検証力」を磨くという目的意志をしっかりもってあらゆるケースを無駄にしないで繰り返し訓練することです。まさに「素振り千回」です!
また「なぜをくり返す」こともその訓練のひとつです。トヨタ生産方式を発案した大野耐一さんは、「なぜと5回問え、そうすれば原因ではなく真因が見えてくる」と言いながら現場をまわっていたそうです。自分がそれまでとは違う分野やレベルへ成長するために、それまでと違ったことに挑戦したり、さらに上のレベルを目指して努力したりするときには失敗がつきものだと、そして「勝ち星は逃しても、教訓は手に入れろ」とは元ロッテ監督バレンタイン氏の言葉です。負けたときほど学ぶことが多いのだからそれを逃してはならない、仮説が良くなかったときほど、なぜうまくいかなかったのかと考えるチャンスです。
「失敗は成功の母」というくらいですから「創造的な仮説を立てれば立てるほど失敗はつきもの」なのです。はじめは仮説が当たる確率は相当低いと思います。それでもくり返し仮説検証をしつづける決意と執念があれば必ず仮説立案力が上がり、成功確率が上がってきます。そして「分析は仮説を証明するためにするもの」くらいの割り切りが必要です。乱暴に聞こえるかもしれませんが「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」です。コツは「とにかく少ない情報で考えること」です。情報は多ければ多いほど良い意思決定ができる、と信じているうちは仮説検証力は磨かれません。一般的な網羅発想を繰り返しても作業が速くなるだけで、答えにたどり着くスピードが格段に速くなるわけではないのです!
網羅発想から抜けるためには「自分が欲しい答え、証明したいものは何なのか」を徹底的にはっきりさせることです。また、仮説検証のプロセスも、かなり時間がたってから誤りに気付くよりは、初期の段階で「皆で協力して仮説の検証を手伝う、議論する」ことも効率が高まり、また組織全体の能力も高まります。仕事を指示されてもすぐに始めるのではなく、目的の確認やその仕事を含む全体像をまずしっかり考えてみること、そうすれば仕事の手順も見直して、不必要な業務や資料も発見できることも少なくないはずです。
ひとりひとりが仮説検証力を徹底的に磨くことによって、すばやくやるべきことを整理して、目的や目標に向けて意識と行動と時間を集中させることができます。まさにそれが「共振の経営」を実践する型である「SAPS経営モデル」の要諦です!