今回は日本経済の潜在力を引き出すための「秘策」について考えてみたいと思います。一般的に日本経済と言えば、株式を上場した大企業の動きをもって語られることが多いと思いますが、実態としては上場もしていなくて、売上高や利益などの経営指標が公表されていない中小のファミリービジネス、いわゆる「同族会社」を無視することができません。日本の法人企業数約250万社のうち、実に97%は同族会社とされています。
中小企業基本法で定める中小企業の定義(製造業で従業員数300人以下または資本金3億円以下)でとらえ直すと、国内企業数の99.7%、従業員数の66%が中小企業。さらに製造業の出荷額では49%、小売業の商業販売額では71%を中小企業が占めています。
こうした数値から推測してみますと、国内総生産(GDP)のおよそ5割をファミリービジネスが握っていると考えられます。すなわち、ファミリービジネスが10%成長するだけでも、日本経済は格段の飛躍が可能になるわけです。とはいうものの、大企業より成長は限られています。これは世界が共通して抱えている問題のようです。米国ではハーバード大学やノースウエスタン大学のビジネススクールなどがファミリービジネス活性化のための専門プログラムを手掛けているほどです。
では、ファミリービジネスを成長させるにはどんな手立てが考えられるのか。そんなに難しく考える必要はないと思います。ひとつは、大企業がやり尽くした様々なビジネスの定石を実行することです。たとえばマーケティング。神奈川県藤沢市に「みやじ豚」という会社があります。社長の宮治勇輔さんは実家の養豚業を継ぎ、企業として発展させています。豚を育てるのは父親と弟に任せ、宮治社長が豚をブランド化することで付加価値を高め、単価を上げた形で販売するようになったのです。
ご本人は当初、家業を継ぐつもりはなかったようですが、次第に実家の豚のおいしさ、父親が築き上げてきた地盤・看板の魅力に気づいたようです。農業経営者の多くは、これまで生産だけを担当し、販売は農協任せでした。実家に素材があるわけですから、そこに付加価値をつけることでビジネスに変身するわけです。
実家が商売や農業をやっていても、継がせるほうも継ぐほうも「先がないから」と廃業に向かってしまうケースが多いようです。そして、跡継ぎはだいたい大企業志向になります。大企業の社会的役割は大きいことは確かですが、ある意味、その人がいなくても別の誰かが代わってくれます。人材の代替がいくらでも可能なわけです。これに対して、家業は跡継ぎであるその人にしかできないというケースが多々あります。
大企業のように経営資源が豊富なわけではありませんから、成長させる最大のリソースは本人。跡継ぎの力量次第で、家業をビジネスへと大きく飛躍させることもできるのです。大企業で働くよりも、家業を発展させたほうが、日本経済への貢献度も大きいのではないでしょうか。「家業を継ぐか否か」――。こう悩んでいる方はぜひ前向きに継承を考えてほしいと思います。目覚めよ、GDPの5割です。