「二人ともずいぶんお腹が大きくなってきたじゃないか」

 

ハビとミチのお腹を眺めながらライジンが言う。

 

「子どもが母親のお腹から出てくるなんて」

 

「何百年ぶり何ですかね」

 

「少なくてもここ二百年はないんじゃないか」

 

ライジンが少し興奮気味に話した。

 

「そんなことはありません」

 

「地球のある地域は、ずっと昔のままの生活をしています」

 

「私はそうして生まれた子供たちを見たことがあります」

 

ハビが自分のお腹をさすりながら冷静に言った。

 

「僕は自分に生殖の能力があるなんて思っていなかった」

 

僕はポツリとそう言った。

 

「それは事実だよ」

 

ライジンにも冷静さが戻っている。

 

「この実験の一番の問題はそこだったのかもしれない」

 

「だから、ミチにはたくさんの男を送り込んだ」

 

「博士も同じようなことを言っていました」

 

ハビはミチのほうを向いて、目を合わせる。

 

「そしてもちろん、女性にも同様の問題があります」

 

「ミチは選ばれた女性なのです」

 

ミチが不安そうな表情をする。

 

「そして、この宇宙空間がどのような影響を及ぼすのか」

 

「地球でも月の影響があるといわれていましたね」

 

「でも結局、科学的には解明されなかった」

 

ミトコン博士が忍び寄るように

 

僕たちのいる共用スペースに入ってきていた。

 

月の引力、地球の重力など様々なものが

 

人の体に影響を与える。

 

無重力の真っ暗な宇宙空間では

 

何がどのように影響を与えるのか、まるでわかっていない。

 

「これまでに、特に重大な問題は報告されていない」

 

ミトコン博士が言う。

 

「しかし、何故、月での自然出産はなくなってしまったのか」

 

「遠い昔の事なので、その証拠となるものは何も残っていない」

 

「自然出産にこだわり理由もなかったからね」

 

ライジンが納得した島に言う。

 

「それならどうして、地球では頑なに自然出産を守っている地域があるのか」

 

「それはもう、主義や宗教の問題だ。科学的根拠はない」

 

「それは出産に限ったことではないのでしょう」

 

ハビが言う。

 

「そのとおり。そして一番厄介な代物だ」

 

「どうやら、君たちを取り巻く状況も変わってくるようだ」

 

博士はハビとミチを見て、そう言った。

 

「この船は今、ある惑星の軌道を回っているらしい」