「今すぐ住めなくなるっていうわけではないのだよ」
ケイルの父親が僕に飲み物をすすめながらこう言った。
「それでも、私たちは幸運だった」
そう言ってケイルの父親は僕に笑顔を見せた。
「そもそも、ここだって最終目的地ではない」
「ここは太陽に近すぎる」
そのことは僕も了解していた。
「ただし、私たちにとってはここが最終地だろう」
ケイルの父親と母親が目を合わせた。
「でも、あなたやケイルはまだまだ先があります」
ケイルの母親の言葉は
僕には現実的ではないように思えた。
僕と彼女に残された年月にそんなに違いはないはずだ。
宇宙の壮大なサイクルにくらべれば
ほんの些細な事実に過ぎない。
それでも僕は、彼女の考え方に関心を持った。
多分、彼女の夫も息子も同じなのだろう。
「だいぶ古臭いことを言うとお思いですか」
ケイルの両親が連れてきたハビが僕の隣に来てそう言う。
「彼女は僕のパートナーになる女性だよ」
この部屋に入った時、
僕はケイルから彼女を紹介された。
「彼女は両親のお気に入りなのさ」
「君はどう思っているんだい」
僕は思わず、ケイルに聞き返す。
「僕も気に入っているよ」
ケイルの両親はどうしても彼女を連れてきたかったのだろう。
ハビは小柄できれいな目をした女性だった。
顔の彫は浅く、丸みを帯びていて
明らかに両親とは人種が違った。
というより、僕や有紗と近い人種のように見えた。
「有紗はどうしたんだい」
ケイルが僕にきいた。
「どうも、仕事が終わらないようで」
「有紗のことは知っています」
ハビが僕にそう言った。
「あまり話したことはありませんが」
「彼女も有紗さんと同じ管理棟で働いているのですよ」
ケイルが僕に言う。
「私は雑用係ですが、有紗さんは大変そうですね」
「最近仕事の話はあまりしてくれないので」
「そうなんですか」
「今は、希望しても必ず移住できるわけではないようです」
「というか、優先順位があるようなのです」
ケイルの父親が僕とハビの話を聞いてそう付け加えた。
