なんとなくまわりが慌ただしくなっていることに
僕は気づきはじめている。
有紗と過ごす時間が少なくなってきている。
僕は、いつも通りの朝食をとりながら
いつもより厳しい表情の有紗を眺めていた。
「昨日も遅かったようだね」
「ごめんなさいね」
僕はいつもと変わらない有紗の笑顔を見る。
そして、笑顔の有紗を見る時間が
少なくなっていることを実感した。
「今日も遅くなるの」
「多分ね。あなたはどうなの」
「僕は、いつもと変わらないよ」
「あの場所には必要以上に居られないからね」
「そのための人員も確保されている」
「そうだったわね」
有紗がため息をついた。
溜息の回数も増えている。
「移住者の数が増えているのかい」
僕は有紗にきいてみた。
「そうね」
有紗は、多くを語らない。
というか、語れないのだろう。
以前は仕事に事も詳しく僕に話してくれていたのに。
「どうも地球の状況があまり良くないようですよ」
交替の時に、ケイルが言っていたことを思い出す。
「詳しいことはわからないんです」
「父たちが地球にいる人から聞いたみたいなのですが」
「なかなか進まなかった移住事業が動きだしたのだとしたら
それはいいことじゃないか」
「そうなんですけどね」
「何事も過ぎることは良くないのさ」
僕とケイルの話を聞いていた管理事務官が言った。
管理事務官が仕事以外の話をすることはほとんどなかった。
「移住者が急増しているということですか」
「でも、まだキャパに余裕があるはずじゃないですか」
管理事務官は、僕の質問に答えずに部屋を出て行った。
「異常気象が起こっているようです」
ケイルが僕に耳打ちする。
詳しいことはわからないはずだったのに。
「人を選別するっていうのは、
あまり気分のいいことじゃありませんよね」
そう言い残してケイルも部屋を出ていく。
